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メディア発健康情報 ―第37回―【ダイエット情報とテレビ演出】
寒天にダイエット効果はあるのか?
おない内科クリニック 小内 亨
「ここ数日やせるために毎日食事の前に寒天を食べています。」最近このような話を何人もの患者さんから聞くようになった。どうもあるテレビ番組が寒天のダイエット効果を取り上げたことがきっかけらしい。寒天には特別なダイエット効果があるのだろうか?
私は話題となったテレビ番組をみていなかったが、幸いにしてウェッブサイトでその概要を知ることができた。ウェッブサイトの冒頭には「イギリスの国際的な医学雑誌に、世界をあっと言わせる研究報告が掲載された」とある。この「世界をあっと言わせる」という表現がくせ者だ。「世界」とは誰か、本当に「あっと言った」のか、よくよく考えるとわからない。「話題沸騰」「注目の」「静かなブームを呼んでいる」等々の言葉と同様、主語が曖昧なため誰もその表現の真偽を検証することができない。これらの言葉は意味がないにもかかわらず、読者や聴衆に印象づけることのできる便利な修飾語なのである。それはそれとして、早速、その論文を取り寄せて読んでみた。
外来通院している肥満患者76人を2つのグループに分け、それぞれに食事制限、中等度の運動を30分週3回以上してもらった上で、片方のグループには夕食前に180gの寒天を食べてもらった。12週間続けてもらったところで、体重や血糖値、コレステロール値などを測定して両者を比較した。その結果、体重が対照群で1.4kg減少したのに対して、寒天群では3.3kg減った。つまり、12週間の寒天の体重減少効果はその差1.9kgということになる。
番組では、近所の人達を対象とした寒天ダイエット実験を絡めながら、専門家のコメントを紹介している。寒天には便秘解消効果のあること、カロリーがほとんどないことが紹介されている。ここまでなら分かる。しかし、番組で紹介された糖の吸収を遅らせる効果やコレステロール低下作用などは、ダイエット効果と直接関係ないものだ。さらには、まだ研究途上の寒天の脂肪燃焼効果や基礎代謝を上げる効果なども紹介している。実験に参加した人達の体重が減って喜んでいる表情とあいまって、いかにも寒天自体に特別なダイエット効果が備わっているかのようだ。番組内で行われた寒天ダイエットの実験では、対照を設けていないため、どの程度寒天に効果があったのか判定のしようがない。自分が番組に出演し実験台になったという意識は、知らぬうちに番組側の意向に添うように行動を変えてしまうものなのだ。
さて、研究論文ではそれぞれのグループの摂取カロリーが算出されている。対照群の夕食の摂取カロリーが664kcalであるのに対して、寒天群では324kcalに減っている。これだけで約3カ月間で約2kg体重が減ったことの説明が付く。いくら寒天の効能を列挙しようとも、体重が減った主な要因は寒天を食べたために夕食が減ったことに他ならない。
つまり、寒天は摂取カロリーを減らすための一つの小道具に過ぎなかったのだ。にもかかわらず、テレビ番組は寒天が特別なダイエット効果を持った食品であるかのように演出していたのである。

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