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  9,異次元世界? 波打つ岩の…


 「今の生き物は、いったいなんだったんや? 鬼の世界の生き物なんか? 信じられへん。なんやウチら、まるでゲームの異次元世界かなんかに、いるみたいやんか〜」
4人の一番後ろを走りながら、ウッチーが叫んだ。今の生き物も追いかけてくる鬼も怖いし、前には鬼の財宝があるかもしれないけど、かといってまた先頭を走る勇気は、さすがの彼女にも、もうなかった。
「ほんとです。ボクも今だに信じられませんよー」
「でも、現実なんバイー」
「だよなー!」
 4人の目の前には、真っ黒い岩のトンネルが延々と続く。
しかしよく見ると、足もとや壁はこれまでと違い、ごつごつと不規則に波打ちだしていた。
 「ついでに、もう一つオレ、気づいたんだけどさー!」
先頭を走りながら、タケシが言った。
「な、なんですか、またですか。今度は何に気づいたんですか、タケシくんー?」
「いやバイ、また怖いのは〜」
「せやで、もう怖いのはいやや!…でも、なんに気づいたんや今度は〜」
イヤでも怖くても、聞かないわけにはいかない。
「今さっきのミイラのちょっと前からさ、この洞くつって、広くなってるんだよなー」
 そう、言われてみれば、確かにそれまでより天井も壁も高く広くなっていた。通ろうと思えば、この4人がじゅうぶん横一列で通れるくらいに。
「そ、それがどうかしたんですか?」
「つまりさ、後ろの鬼が、通りやすくなってると、思うんだよなー!」
「そ、そう言われれば、そやな…」
ウッチーは、恐る恐る振り返った。
 グオオーーー…ドス、ドス、ドス!
明らかに吼える声が大きくなっている。そして足音も早く大きくなっている。
 鬼は明らかに近づいていた。
 「当たり前やけど、さっきの根っこの化け物も、鬼には何もせえへんのやろな。ずるいわ〜…」
ずるくはない。当然のことだった。
 鬼は何事もなくミイラの前を通り抜けると、どんどん4人へ迫っていた。

 ところが、逃げる4人には、新たな異変が迫っていた。
トンネルの床や壁のゴツゴツがだんだんと大きくなり、まるで、岩で出来た大きな波の上を進むような状態になっていたのだ。
しかも、表面がぬるぬると濡れている。
 「足もと気をつけろ、ほらフトシ、ウッチーも…あぶない!」
もう走ることは出来ない。
4人は手をつなぎ、お互いが足を滑らせても助け合えるようにして、岩の波を進んでいた。
そして10メートルほども進んだ時、先頭を行くタケシが、次の岩波のてっぺんに右足を乗せた。その時、
 ぐにや!
岩の波頭(なみがしら)が、まるで風船を踏んだかのように下に沈んだ。
「うわっ!?」
タケシは声をあげバランスをくずした。
 次の瞬間、
「きゃあ!? な、なんやのこれっ!??」
「です?」
「バイ〜〜?」
全員の足もとが、波打つよぅにぐにゃぐにゃと動きだした。そのまま倒れ込む4人!
 子どもたちは、訳が分からないまま尻餅(しりもち)をついた。そしてお尻の下の岩に手をあて体を支えた。
と、その手に触れるその岩は確かに岩なのに、それが、ぐにゃぐにゃと生き物のように動めいていた。
 「ひえええ、今度は岩の化け物バイ〜!?」

 しかもそれは、ただ動いているだけではなかった。
波は手前から先へとと規則正しく動き、まるでベルトコンベヤーに乗った岩のように、4人を奥へ奥へと運んでいくのだった。
「これってまるで、テレビでやってる『ナントカの医学』とかで見たことのある“腸”の動きに、そっくりバイ〜」
「それは、“ぜん動運動”っていうんですよ、フトシくん〜」
「んな説明、どうでもいいよ! それよりオレたち、どこに運ばれてるんだ〜? ここが腸なら、その先は肛門かあ〜?」
タケシは、とにかく進むその先をライトで照らした。
 すると、4人がどんどん運ばれていくその先には、いちだんとドでかい岩の波があった。そしてその波の真ん中には、両手を広げたほどもある、大きな“穴”が開いていた。
「ほんまに…、肛門?」
 どんどん近づくその穴は、しかし、ただの穴ではなかった。
内側には、まるでサメの歯のようにとがった石が円を描いて並び、それが中心へと閉じては内側へ、また閉じては内側へと動いていた。
4人を乗せた岩の波は、その中心へ中心へと動いているのだ。
 「く、口だーー!」
4人はそこから逃れようと、必死にじたばたと手足を動かした。
しかし、波の動きから逃れることは出来ない。4人の目の前に、どんどんその口が迫る。しかも4人の目には、その口のある大波の、さらに後ろの地面に散らばっているものが見えた。
 それは…

 「人間の骨バイーーー!」
そう、そこに散らばっているのは、この化け物に食われて骨だけになってしまった、何人分かの骨だった。
「ちくしょう、これでも食らえーー」
 パスパスパスパス!
ここでタケシのエアガンの、再びの出番だ!…しかしまったくきかない。やっぱり!?
 タケシはそのエアガンを、今度は口めがけて投げつけた。
 バリバキバリ!
瞬間的にかみ砕かれた。
「だったら、これはどうだー!」
「や、やめてください、あーー!」
次にタケシは、デコのリュックを背中から引っぺがし、投げつけた。
 バリボリバキボリバキバリ!
総額何10万円分の、景気のいい破壊音がひびいた。
が、ともに何の効果もなく、4人の目の前に口が迫る。
 その時、
「あそこや!」
一人、回りをきょろきょろしていたウッチーが、横の壁を指さし叫んだ。
指さすその先には、壁のくぼみ。そして血のあと!
4人は、間一髪、そのくぼみに飛びついた。
 くぼみにぶら下がると、足下には足場となるような小さな出っ張りがあった。
そしてそのくぼみとでっぱりで1セットのようにして、点々とトンネルの奥へと続いていた。
その間隔は子どもには少し大きすぎたが、手足を思いっきり伸ばせば、なんとか渡ることができる。そして何より、波の化け物の上をよけて進むことができるのだった。
 タケシは、ライトを口にくわえて先を照らしながら、猿のようにそれをたどった。そしてそのあとに、ウッチー、デコ、フトシと続いた。


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