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  8,鬼の追跡と謎のミイラ


 「ど、どっち行きゃ、いいんだ?」
4人の目の前に、今度は3つの穴が出現した。
この広い空間の先には、これまで通ってきたのと同じくらいの大きさの穴が、正面、右、左と3つ、ぽっかりと口を開けている。
4人は、空間の真ん中で立ち止まると、それぞれの穴を慎重に見比べた。が、どれも似たような穴にしか見えない。
「ここでまた、休けいバイ」
「ばかたれ!」
タケシは、即座に却下した。
「そうだ、ボクの双眼鏡には、方位磁針(ほういじしん)がついているんでした!」
デコは、胸にぶら下げた双眼鏡を差し出した。
「そういやお前、まだそれ下げてたのな…」
そういうタケシも、まだエアガンを肩からさげているのだが。
双眼鏡の左右の接眼レンズの中間に、小さな方位磁針がついていた。が、ライトで照らし出しされたその針は、双眼鏡を少し動かすだけでグルグルと動き回った。
「針が、おどってるバイ」
「ダメやんか?」
「だ、だめですね。多分このトンネルの岩自体が、強い磁力を帯びているのでしょう」
「仕方ねえな」
 タケシは、左の穴から順番にちょっとずつ入ってみては、奥を照らしてみた。
しかし、光が弱いので、どの先も真っ暗にしか見えない。
 そして最後に右側の穴の奥を照らした時、
「あ、なんか赤いのが二つ、光ってるバイ」
「ほんまや! なんやろあれ?」
奥の方に、かすかに光る赤いものが二つあった。
「なんだろう…、ん? なんか、ゆらゆらと、だんだんこっちに近づいてくるような…」
「そうですね、音もなんか聞こえてくるような…。なんでしょぅ、グルルル…とか」
光が近づくにつれ、
 グルル…グルルル…
だんだん音が大きくなってくる。そして同時に、
 ズン…ズン…ズン、ズン、ズン!
と、地ひびきも近づいてきた。赤い光はなおも大きくなり、ついに淡いライトの中に、その正体が浮かび上がった!
『鬼ーーーーー!』
「グルル、グオーーーーーーー!!」
4人が叫んだのと、鬼が咆吼を上げたのは同時だった。
 そう、4人の目の前に、またしても鬼が現れた。赤い光は、鬼の目の光だったのだ! 確かに鬼は、子どもたちが下ってきた“ウオータースライダー”は通れなかった。が、あの鍾乳洞と下のトンネルをつなぐ道が、ちゃんと別にあったのだった!!
「そそそ、そりゃそうですよね。よく考えたら、鬼が作ったトンネルなんだから、ちゃんと鬼が通れるようになってて、当然ですよね…はは、ははは…」
「だから、推理する前に、逃げるんだよデコー!」
4人はきびすを返すと、一目散にもとの広い空間に飛び出した。
「でも、逃げるったって、どこにや?」
「そうバイ、さっきここまで来た道は、結局行き止まりバイ、だとすると、あの真ん中と左の穴、どっちへ行けばいいんバイ、探検隊隊長〜!」
「そうです、こんな時こそ隊長、決めてください〜」
「そ、そんなこと言っても、よ、ようし、真ん中だ。真ん中の穴へ…」
「待ちいや!」
真ん中の穴へ走ろうとするタケシを、ウッチーが引き止めた。そして、
「あそこ見てみ!」
左側の穴の横を指さした。
 するとそこには、かすかに血が付いていた。
「あの二人組は、あっちに進んだってことや!」
4人は、左の穴へと走った。
そしてそこへ飛び込んだ時、鬼が右のトンネルから姿を現した。
 「グオーーーーーー!」

 「はあはあ、見ろ、どうやらこのトンネルは、鬼が通れるギリギリのサイズみたいだぜ」
走りながら4人が後ろを振り返ると、鬼の姿はだんだんと小さくなっていく。
タケシの言うとおり、鬼の身長はトンネルの天井より高く、その体の幅もトンネルの幅ギリギリだった。
鬼は前かがみになり、ゴリラのような姿勢でゆっくりと前へと進むしかなかった。
「ようし、このまま一気に財宝…やなかった、鬼城島まで走るでえ、ウチは! って、きゃっ!?」
なぜか先頭を走っていたウッチーが、突然何かにつまずいて、ドテッとこけた。
「だいじょうぶかウッチー、ライト持ってるオレより先に走るから…、うわっ!?」
「ひえええバイ!」
「あわわわわわ…」
ライトに照らされたウッチーを見て、男子3人の顔がこわばった。
「あいたたたたた、なんやの、どうしたんやみんな?…ん?」
ウッチーはそう言いつつ上半身を起こし、あたりを見回した。
「きゃーーー! ななな、なんやこれ!」
バネのように跳ね起きるウッチー。
 ウッチーがつまずいたもの、それは…

 「人間やんかー!」
ウッチーは、あわてて男の子3人の後ろに隠れた。
ウッチーは、右側の壁を背にして座っている人の足に、つまずいたのだった!
「こ、これは…」
タケシがライトでその人間とその先を一通りグルッと照らすと、そこにはウッチーがつまずいた人間だけではなく、何人もの人間が壁を背にして地面に座っていた。
 「フムム…どうやらこれは、人は人でも…全部、死体のようですね。フム」
「し、死体やて? いややーー!」
「ボクも、いやバイ〜!」
 それでも4人は、タケシを先頭に、ガタガタとふるえながらその中を進み始めた。
なぜなら、後ろには鬼が迫っている。鳴き声と足音が、確実に近づいてくる。
どんなに怖くても、前に向かって進むしかないのだ!
「ウソや、ワケ分からへん。なんでこんな所に、こんなに死体があるんや〜?」
ウッチーは一番後ろで目をつぶっている。
 しかし、数メートル過ぎたところで、デコがあることに気づいた。
「おや?…フムフム…。これらは死体は死体でも、どうやら全部ミイラのようですよ、フム…」
「み、ミイラやて?」
「なるほど…そうバイ。なんか古い感じバイ!」
「だな」

 そう、通り過ぎながら横の死体を見ると、どれもひからびた上に服がボロボロで、さらにその上から体の中から、ミミズのように節のある、木の根かツタのようなものが全身にからまっていた。
「てことは、みんな昔の人ってことやな。ああ、ちょっと安心したわ…」
「フムム、でも」
「な、やんやデコ、なんや今度は?」
びくつくウッチー。
「こうして一つ一つ見ていくと、顔立ちや服装から、みんなバラバラですよね。フムム、不思議だ…」
「そういやそうだな。明らかに外国人らしい顔立ちの金髪もあれば、オレたちと同じ黒い髪のちょんまげもあるよな」
「そうバイ。それに着ている服も、外国の軍人さんみたいなのもあれば、時代劇に出てくるような日本の着物もあるバイ?」
彼らが言うように、壁を背にして右側に並ぶミイラたちは、なぜか人種も服もバラバラのようだった。
 「が、外国人と言えばやで、あのイギリス人兄弟だって、よう考えたら変やんか。ここにあるのは、鬼の宝物なんやで。なのにあの二人は、古い地図と言い伝えが自分ちに伝わってるとか言ってたやんか。一体どういうことなんや?」
 「フムム、どうやらなにか、もっと深い謎がありそうですね。フムフム…」

 こうして、10数体はあろうかというミイラの横を通り過ぎた時、
「そうだ!」
先頭のタケシが何かを思いついた。
「な、なんですか、タケシくん?」
「なんバイ?」
「なんや、なんか思い出したんか、タケシ?」
後ろの3人が口々にたずねる。
「あのな…」
『ごくり!』
「やっぱ探検隊やめて、探偵団にもどそうかオレたち。なんかすっげー謎だらけだし」
『だ〜〜!』
ずっこける3人。
「そ、そんなこと、どっちでもいいですよ!」
「せやせや!」
「バイ!」
くだらない提案に、怒る3人。
 が、さらにタケシは続けた。
「でもさ…、もう一つ大きな謎があるんだぜ」
「な、謎? 謎って、な、なんやそれ?」
「うん、それはな…」
タケシは後ろを振り返り、あらためてミイラたちをライトで照らした。
「あれって、人種もだけど、どう見ても時代がバラバラだよな。一体一体、ボロボロになりかたが違うし」
「ええ、確かにそうですね、フム。で、それがなにか?」
タケシの横でデコが聞いた。
「てことはだぜ、みんなバラバラに、ここに来てるってことだろ?」
「!? せ、せやな…」
「そうバイ、みんな違う時に来てるとバイ」
ウッチーとフトシがうなずいた。
「じゃあさ、それがなんで、みんな同じ場所でミイラになって、一列に並んで座ってるんだ?」
『!!!』
3人は一瞬にして凍り付いた。
 そうなのだ、タケシの言うとおり、確かにそれは大きな謎なのだ。そして、あのミイラたちがミイラになるはめになった時と同様に、“今の時代の自分たち”にとっても、“今”が“超危険な状況かもしれない”ということに気づいたのだ!
 その時…
 ミシ…
かすかに、何かがきしんだような音がした。
 そして、
 ミシミシ…、ベキバキバキ!
「う、動いてるバイ!? ミイラが動きだしたバイーー!?」
そう、フトシの言うとおり、壁に一列に並んだミイラが、いっせいに音を立てて動きだしたのだ。
それも自分たちに向かって!!
『ギャーーー!」
4人は悲鳴をあげ背を向けた。
 が、タケシはその一瞬、ライトに照らされた“何か”を足もとに見た。
そして走り出そうとする3人に飛びつき、叫んだ。
「伏せろーー!」
タケシは手を広げ、おおいかぶさるようにして3人を後ろから押し倒した。
 その瞬間!
 ブオオオオー!
タケシの背中の上を、風を切ってもの凄いスピードで“何か”が通り過ぎた!
「な、なんやのん、何がどうなったん??」
「これだ、あのミイラたちが死んだ原因は、これだったんだ!」
タケシは、自分の下でもがく3人に、ライトで斜め上を照らして見せた。
するとそこには、鉛筆ほどの太さの棒が何十本となく、自分たちの背中の上を通り過ぎて先の方へと伸びていた。
 4人は、倒れたままで後ろを振り向いた。
すると、その棒はミイラから、いや、ミイラを突き通してその奥から、まっすぐこちらへと伸びて来ているのが分かった。
 シュルル…
そして今度はその棒が、もと来た空間をまた戻り始めた。ミイラの後ろへと、まるでミミズが縮むようにゆっくりと。
 「そ…、そうか、あのミイラにからみついていたのは、木の根っことかじゃなく、何かの生き物だったのですね。おそらく、侵入者からこのトンネルや財宝を守るための…!」

 ミミズが縮むとともに、4人の目の前でミイラもまた後ろへと下がりだし、やがてもとの一列状態へと戻っていった。
「あ、あぶなかったバイ。ボクたちも、あのミイラさんたちの仲間入りするところだったバイ」
「ほんまや、でもよく分かったな、タケシ」
「今度もコレだよ」
タケシは、今度はトンネルの下を照らして見せた。
するとそこには、真新しい血の手形があった。そしてそれは、先の方へと続いていた。
「そうか、それでボクたち、またまた助かったってワケですね」
「ああ、多分あの兄弟のどっちかが、鬼に襲われた時ケガしてんだ。そしてこの手形は、ここを伏せて進んだって証拠さ。さあ、このままここを抜けようぜ」
4人は地面に身を伏せたまま、血の手形が消えるまで用心深く進んだ。
 そして後ろを確認しながらそっと立ち上がると、一気に先へダッシュした。


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