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   7,海の底の底


 「はあ、はあ、はあ、このまま一気に階段を駆け上がろう」
転びそうになりながらも4人は、でこぼこした鍾乳石の上を走り、階段の所へとたどり着いた。
 ところが!
「ふ、ふさがれてるバイ」
確かに階段があったはずのそこには、大きな岩が置かれていた。
 4人は、それを動かそうと一生懸命押してみたが、びくともしない。
 「グオーーーーーーーー!」
そうしてる間にも、引き返してくる鬼が、また近づいてくる。
「やっべ、またこっちに来るぜ!」
「どうするんや、どうするんや、ウチら〜。あの外人兄弟やニワトリみたいに、ウチらも食べられてしまうんか〜?」
「バイ〜〜」
「待ってください。あの二人は、鬼に食べられてなんか、いませんよ!」
「なんやて?」
3人がデコを見ると、デコは階段をはさんで空洞の反対側にある壁を指さした。
 するとそこには、人がやっと通れるくらいの穴が一つ開いている。そして4人の足もとからは、そこに点々と血のあとが続いていた。
「ボクが推理しますに、おそらくあの2人は、あの穴に…って、まってください、ボクを置いていかないでえ〜〜」
デコの説明をのんきに聞くはずもなく、3人は穴へとダッシュした。それに続いてデコも走り出す。
「グオーーーーーーー!」
そのすぐ後ろに鬼が迫る。
鬼の右手がデコの背中に届こうとした、その瞬間!
 間一髪、4人は穴の中へと頭から飛び込んだ。

 「うわーーー!」
「ま、まるでウオータースライダーです〜!」
「どこまで落ちるんや〜」
「オエ、ボク、気持ち悪くなってきたバイ〜…」
4人は、小さな穴の中を右に左に揺さぶられながら、下へ下へと滑り落ちていた。
穴の壁からは地下水がしみ出し適度な流れとなって、摩擦から守るようにして底へ底へと4人を押し流して行く。
 そしてどれほど下ったのだろうか、
 ドボーーーン、バシャーーーーン!
突如4人は穴から放り出され、大きな水しぶきと共に水の中へと落下した。
「げぼげぼ、た、たすけて、ボク、泳げないんです、おぼれぶぶ、げぼがぼ」
デコが水の中でもがいている。
「いや、おぼれないと思うぜ」
タケシの声と共に、サーチライトがデコを照らした。
 すると、仰向けに水につかったデコのリュックのその下はもう、砂が広がる水底になっていたのだった。
「ていうか、おぼれるほうが、むつかしかバイ」
「いっつも勉強ばっかりしてウチらと一緒に泳がへんから、そないパニックになるんや」
3人はヒザまでもない水の中に立ち、上からデコを見おろしていた。
「ほらよ」
タケシは手を伸ばし、
「え、あ、あれ? あはは〜…?」
照れ笑いするデコの手をつかみ、引っ張り起こした。

 「どうやらあの二人組は、いないようだな…」
タケシは、ライトで回りを照らしだした。
そこは、さっきいた鍾乳洞と違い、奥行きがほんの数メートルしかないような、小さな空間だった。
「あっちに、また穴があるバイ」
落ちてきた穴の反対側は、だんだんと水が浅くなり、小さな砂浜のような陸地に続いていた。そしてその先にぽっかりと、ちょうど大人が立って歩けるくらいの穴が開いていた。
 4人がそこへ近づきライトで照らしてみると、穴の奥はそのまま先へと続いている。
「進むしか…ないよな」
4人は後ろを振り返ると、今落ちてきた穴を見上げた。
「やな。 もう上には登れないし、登ったところで、鬼がいるさかいな」
「ま、まさかあの穴から、追いかけて来ないバイ?」
「さあ、それはどうでしょうか。もし鬼からまた校長の姿に戻ったとしたら、あの穴を通ってくることは可能ですからね」

 こうして4人は、タケシを先頭にして奥の穴へと進んだ。
穴はさらに斜め下へと下っていたが、しばらくすると水平に変わっていた。
サーチライトで照らし出されたゴツゴツした岩肌は、ずっと奥まで続いている。
「はあはあ…、ねえタケシくん、ちょ、ちょっと休けいしようバイ、はあはあ…」
「なんだよフトシ、もうバテたのかよ」
「タケシ、ウチも疲れたわ〜。少し休もうや」
「そうですね、鬼が追ってくる気配はないし。この先がどこまで続くのか、わからないですし…」
 タケシの後ろの3人が、その場にへたり込んだ。
「なんだよお前ら、だらしねえなあ。こんな穴ん中で、のんびりなんか出来るかよ!」
「お、鬼城島探偵団の団長はボクなんバイ、これは団長命令バイ。はあはあ」
「こ、このお〜……。分かったよ、ちょっとだけだぜ。くそっ」
タケシもその場に腰を下ろした。4人は壁を背もたれにして、仲良く並んで休けいした。
 「はいどうぞ、バイ」
フトシは背中のリュックをおろすと、中からおにぎりをとりだして3人に配った。
「うは、うまい! ぬれてるけど、うめえや!」
「やな!」
「ね、休けいして良かったバイ♪」
うまそうに食べる3人の横で、
「あ〜あ〜…」
デコがため息をついた。
 デコもリュックをおろして中を開けたのだが、自慢のハイテク機器の数々が、水につかって全滅していたのだった。
「デコ、気にすんなって。どのみちこんな地下で、そんなもん全然何の役にも立ちゃしないんだからさ」
「そ、それって、なぐさめになってませんよ、タケシくん〜…」
力無くニガ笑いするデコ。
「せやで。そんなん、もう重いだけやし、捨ててったらええやん?」
「いいい、いやです!」
デコはあわててリュックのふたを閉めると、おにぎりを食べ始めた。−悲しそうな顔で。
 そして全員が食べ終わると、
「ごっそさん、じゃあ行こうか!」
タケシがすぐに立ち上がった。
「えーっ、もうすこし休もうバイ、タケシくん。これは団長命令バイ」
「ウチも団長に賛成ー。食後の休けいしようや」
「ボクも賛成です」
ウッチーとデコが、右手をちょこんと上げた。
 「…フトシ、奥を見ろよ」
タケシが、トンネルの奥を照らした。
「オレたちってさあ、どっちかってえと探偵団と言うより“探検隊”だと思わねえか?」
「う、うん、たしかにバイ」
「だろー? だからオレたちは今から探偵団やめて、“鬼城島探検隊”ってことにしよーぜ。そして隊長は、その名付け親のオレな!」
『え〜〜〜っ!?』
「えーじゃねえ、隊長命令だ。3人とも立て立て! ホレホレ!」
この強引さに3人は、反論する気も失せてしぶしぶと立ち上がった。
「ようし、鬼城島探検隊、しゅっぱーつ!」
 ところがその時、
「あららら?」
タケシの強力サーチライトが、サーッと急速に暗くなった。そして、あっというまに消えてしまった。
「で、電池切れだ…。やべー、交換用の電池なんか、持ってきてねえよ、オレ〜!」
「えーーっ!?」
「なんやてー?」
あたふたするタケシ、デコ、ウッチー!
が、その横で、
 ジイ〜〜〜…
と言う音がし始めた。そして音に少し遅れて、ぼわーっとほのかな光が灯った。
それはフトシがリュックに入れていた、手回し充電式の非常用ライトだった。
「はい、隊長バイ」
「お…、おう」
フトシは、タケシにライトを手渡した。
おにぎりといいこのライトといい、避難訓練とバカにしていたフトシの荷物が、ここに来て一番役に立っていた。
 このライトは、ハンドルを何分か回すと充電され、しばらくの間点灯するという便利ものだったが、これまでと違ってその光はぼんやりと弱かった。
が、しかし、先へ進むには十分な明るさだ。
 「このトンネルが鬼城島まで続いてるとして、ここはもう海の下なんやろか?」
「どうでしょう…。たとえそうだとしても、ボクたちがまっすぐ岬の下に落ちたと仮定したら、まだ海の下を歩き始めたばかりでしょうけど…」
「そうだな。たしか鬼城島までは、岬から2キロちょっとあるから…」
「まだ先は長いバイ」
4人は、その見えない先に海の底があるかもしれない天井を見上げた。
 そして数十メートルも歩いただろうか、4人はまた、少し広くなった空間へと出た。


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