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   17,アトランティスの宝


 タケシとフトシが漕ぐボートは、校長や兄弟の説明を聞くに十分な距離を、ゆっくりと進んだ。
それを、鬼はなすすべもなく、断崖の穴からただじっと見ていた。
そしてボートはやがて、静かに対岸へと行き着いた。
 そこはドームの壁にさえぎられた、三日月型の小さな浜辺だった。テニスコート程の広さのその砂浜には、ごろごろと石が転がり、先は岩壁が立ちはだかっていた。
「降リロ!」
兄弟は、校長と子どもたちと岸へ降り立つと、銃をつきつけたまま、キョロキョロとあたりを見回した。
 そして、
「兄者、アレデゴザルゾ!」
何かを見つけ、弟のゴザールが叫んだ。
「ウム、間違イナイ!」
二人が見つめるその先には、一つの大きな岩があった。
その岩は、まわりにいくつか転がっている黒っぽい岩とは違い、唯一、真っ白な色をしていた。
 そして近づくと、岩の正面には赤く大きな「×」印があった!
「違う、それは…!」
思わず叫ぶ、校長。
 直後!
「ウルサイ!」
 ガツーン!
にぶい音が響いた。
ザックが、手にした銃で校長の頭を殴ったのだ。
 「こ、校長せんせーい!」
浜辺に倒れた校長に、子どもたちが駆け寄る。
「モウ、オ前ニ用ハ無イデース!」
「死ヌデゴザル!」
その校長目がけ、兄弟は銃を向けた。
 その時!
「ウガアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
それまでただじっと座って様子を眺めていた鬼が、突然立ち上がり大きく吼えた。
 そしてもの凄い勢いで、海面へと大ジャンプした。

 ドッボーーーーーーーーン!!
ドームの天井に届くような巨大な水しぶきが上がり、津波のような大波が四方へと広がり対岸へと打ち寄せた。
 その中に、
 ザバザバザバザバ〜〜!
まるで巨大なシャチが迫り来るがごとく、鬼が、すさまじい勢いで水しぶきを跳ね上げ、こちらへと泳いで来る!
「ウワーーー!」
「来ルナ、デゴザルーー!」
 パンパンパンパンパンパン!
悲鳴にも似た叫びと共に、兄弟は鬼目がけて銃を乱射した。
 「グアーッ!」
突如、鬼が大声を上げ体を後ろへのけぞらせた!
そう、弾の一発が、体のどこかに命中したのだ。
 鬼は動きを止めると、右手を上へかかげた姿勢のまま、子どもたちが目を見開く数十メートル先で、海の底へと沈んでいった。
「お、鬼が…死んじゃった…」
校長の頭をヒザに乗せたウッチーが、その光景を目の当たりにして震えるように言った。
 そして、タケシもフトシもデコも、鬼が消えていった波間をただ呆然と見つめていた。

 「オ前タチニモ、アトランティスノ財宝ヲ、拝マセテヤルデゴザル。ソノ後デ、トンネルニ転ガル死人タチノ、仲間入リサセテヤルデ、ゴザルヨ。コレゾ、武士ノ情ケネ! ハッハッハ!」
ザックとゴザールの兄弟は、気を失ったままの校長と子どもたちの上半身を、ロープで縛り上げた。そして校長を寝かせたまま、子どもたちをその後ろに座らせた。自分たちに向かせて。
 そして、リュックの中かなら組み立て式のシャベルを2本取り出すと、赤い×印のある白い岩の下を掘り出した。
 ザックザック…
下は砂地で、ひと堀りごとに簡単に穴は深くなっていく。
 そして、
 ガツッ!
30センチも掘ったところで、シャベルが何か固いものにぶつかった。
「アッタゾ!」
二人は歓喜の顔でシャベルを横に放り出し、今度は素手で砂をかき分け始めた。
 そして、砂の下から出てきたもの…、
「コレデゴザル! コレコソ、アトランティスノ宝ガ入ッタ、箱デゴザルヨ〜〜♪」
それは、いかにも宝物が入っていそうな縦横高さ7〜80センチ程の、黒い金属で角を補強された木の箱だった!
 「すげえ…本当にあったんだ!!」
目の前に引き上げられた箱を見て、ぼう然とつぶやくタケシ。
「いや〜、“お約束か!”って言うくらいの宝箱やん〜。中身は、中身はどうなんや〜…」
ウッチーが、身を乗り出しゴクッと生ツバをのんだ。
「な、なに目を輝かせてるんですか、ウッチー! あの箱の中を見せられたあと、ボクたち殺されるんですよ〜!」
「そうバイ〜〜! うえ〜〜〜〜ん…」
デコとフトシが泣きながら、イヤイヤするように身をよじらせた。
 その時、
「キミたち…」
子どもたちの目の前に倒れている校長が、小声で呼びかけた。
「校長先生、気いつきはったんか?」
「だいじょうぶかよ、先生」
子どもたちは前かがみになり、背中越しに校長の顔をのぞきこんだ。
「しっ、静かに。ワシは大丈夫じゃ。…それよりキミたち、やつらがあの箱を開けたら、そのスキに、後ろへ走って海の中へ飛び込むのじゃ」
校長は、子どもたちにだけ聞こえるように小声で言った。
「ど、どうしてですか、校長先生?」
「なんで、海に飛び込まなきゃ、いけないんバイ?」
子どもたちは、不思議そうに顔を見合わせた。
 「どうしてもじゃ」

 校長と子どもたちの目の前で、宝箱を開く作業が始まっていた。
兄のザックが箱を押さえ、弟のゴザールが本体とフタのすき間にシャベルを突っ込み、まるで固く口を閉ざした貝殻を無理やり開くように、上下にこじりながら動かした。
 ゴキゴキ、ゴギ! ギギギ…
にぶい音が続いた後、やがてさびた金属がこすり合う音がして、箱のフタはゆっくりと動き始めた。
「ヨシ!」
そこへザックが上から両手を突っ込み、下の箱の口をゴザールが押さえ、二人一気に力を入れた。
 と、次の瞬間、
 ビカーーーーーーーーーッ!
フタが開くと同時に、色とりどりのまばゆい光が、箱の中から溢れ出した!
キラキラきらめく光りの粒。なんという明るさ、そして美しさ。
「オオーー!」
「スゴイデゴザル!」
光に照らされて、二人の、不気味ささえ感じさせる喜びの顔が、明るく輝く。
 「なになに〜!?」
ウッチーが身を乗り出した。
 その時、
「今じゃ! 走れーーー!」
校長は起きあがると、子どもたちにおおいかぶさるようにして叫んだ。
その胸に、ウッチーの顔がドン、とあたる。
 他の3人も立ち上がると、校長の体に押されるように海へと走った。そして校長と子どもたちは、上半身をロープで縛られたままの状態で、海へと飛び込んだ。
「兄者、アイツラ、逃ゲタデゴザル!」
「ホットケ、海ニ飛ビ込ンダトコロデ、溺レテ死ヌダケデース!」
 兄弟は箱の中で輝く、色とりどりの宝石に手を伸ばした。
 が!?
「!? ホワッ? ナ、ナンデスカ〜!??」
その手を逆に“何か”がつかんだ!
「アアア、兄者、コココ、コノ宝石、生キテルデゴザルヨ〜〜〜!?!?」
兄弟は、思わず手を引っ込めた。
 だが、その手には、まばゆく光る“何か”が巻き付いていた。
 ビカーーーーーーーーーーーーーー!!
 次の瞬間、それはまるで地下からミサイルが発射される時のように、箱の中から上へと一気に吹きだした。


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