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   14,○→×


 「で、これからどっちに行けば、いいんだ?」
「こっちバイ」
「いえ、ボクの予想では、こっちだと思います」
「いや〜…。ウチのカンでは、どっちもアブナイ思うで」
ウッチーのカンが一番の正解だった。
そりゃそうだ、地下の穴の中をどっちに行こうとも、危険があるのだけは間違いないのだ。
 4人は狭い岩の隙間を通り抜け、これまでとは違う白い岩肌の空間へと出ていた。
そしてそこには、左右に穴が開き、またトンネルが続いているのだった。
「普通に考えて、このどっちかが、さっきの湖につながっていて、どっちかが鬼城島へつながっているんだろうけどな」
タケシはフトシからライトを受け取り、回りを照らしてみた。
「“鬼”か“財宝”ってワケやな…」
ウッチーがつぶやく。
 「あ、見ろよ、下を!」
タケシが、ライトで照らした足もとに何かを発見した。
見るとそこには、点々と血が落ちている。そしてそれは、子どもたちを導くように右側の穴へとつながっていた。
「そうか、今度は回りが白っぽいから、下に落ちている血が見えるんや!」
そう、今までのトンネルの岩肌はずっと黒く、下に続く血のあとが見えなかったのだ。点々と続く血のあとから見ると、二人のうちどちらかは、かなりのケガをしているに違いない。
「ふむむ、今までの血のあとは、目印なんかじゃなかったんですね」
「だな。こりゃ、そうとう出血してるぜ」
 4人は当然、そのあとをたどった。
そしてしばらくすると、
 グアアアアアーーーー! ドスドスドスドス!
 左の穴から全身ずぶぬれの鬼が現れ、そのまま子どもたちの入った右の穴へと突進していった。

 4人は用心しながらも、走った。
「植物、岩、空気、水と来て、次は何の化け物が出るんや?」
「さあ、あと出てないのは何でしょう、…火とか?」
「火い? そうか、あるかもなー」
「こんな地の底で、いくらなんでもそれは無いバイ。だいいち、そんな言ったとおりのものが出るなんて、思えないバイ〜」
もう4人は、行く先に化け物が待ち受けるのが、当たり前のようになっていた。
 そして、
「あちちちーーー!」
 またしてもそれは突然やってきた。

 タケシを先頭に先へ進んでいると、なぜかだんだんと暑くなってきた。
試しに壁を触ってみると、やけどするように熱かった。そして気づいた。手に持つライトの明るさよりも、壁が明るく光り出したのを。
「な、なんだこの明るさは!? 暑さは??」
「言ったとおり、火ですよ〜〜〜!」
 そう、デコの言うとおり、壁が光り出したのは壁の熱のせいだった。
壁のあちこちで、岩が白熱電球のフィラメントのように熱を持ち、光を発していた。
 そして、
ごおおおおーーー!!
そこからついに、炎が吹きだし始めたではないか!
 「あちー! ホントに火が、噴き出しやがったぜ!」
タケシの目の前を、炎がかすめた。
そして、まるで火炎放射器のような炎が、壁や天井から、4人目がけて襲ってきた!
「うわーーー、これじゃまるでウチら、石焼きピザみたいやんか〜〜!」
「ピザ焼く時は、こんな炎出ないバイ〜」
「そうですよ、どちらかというとこれじゃ、バーベキューか火葬場の中ですよー」
「そんな“たとえ話”はどうでもいいんだよ! このままじゃオレたちホントに火葬されちまうぞー、あちちちー!」
 前後左右から襲ってくる炎に、4人は逃げまどった。
しかし、どこに逃げようとも、その反対側から炎が吹きだしてくる。
 そしてついに、4人は四方を炎に囲まれ、一歩も動けなくなってしまった。

 「熱い熱い熱い、熱いバイ〜〜!」
「うわちち、ヤバイやん、今度こそどこにも逃げ場が無いやんかー!」
「うわ、炎がだんだん迫ってきますよー!あちちちち!、うわ、髪の毛がチリチリいってます〜〜」
「あぶない、とりあえずしゃがもう」
タケシは、3人の頭を押さえて身をかがめた。
 そこへ、
 ブオオオオ!
炎が襲った!
 一瞬しゃがむのが遅かったら、4人は火に包まれていただろう。4人の頭上は炎が渦巻き、もう立つことも出来ない。
「だめだ、どこにもすき間がない。ウッチーの言うとおり、今度こそオレたちだめかも!」
4人はさらに頭を低くして炎の下をのぞこうとしたのだが、地面と炎のすき間はなく、炎のドームに囲まれている状態になっていた。
 しかし、
「あ、こ、これを見てください!」
 デコが足もとに何かを発見した。

 4人が下を見るとそこには、
「マル、矢印、バツ?」
そう、“○→×”という謎の記号というのか文字というのか、そんなものが描かれていた。
 4人の足もとは、これまでのむき出しの岩とは違い、白い砂でおおわれていた。
その白い砂に描かれた“○→×”は、血に濡れた指でなぞったように、またしても血がにじんでいた。
「な、なんやこれ、なんのことや?」
「なんかの、暗号ばい?」
「暗号だって?」
「ふむ、暗号ですか、○→×…まる・矢印・バツ、まる・が・バツ…マル・を・かける…
まてよ、下は砂ですよね…砂・を…、分かったあ!」
 デコはそう叫ぶと、下の砂をすくって炎にかけだした。
「なんだ、なんだよ?」
「砂ですよ、砂をかけるんですよ、この炎に! ○→×、つまりマルはこの砂そのものを表し、それを×、つまりかけるってコトですよー!」
 デコは、必死に下の砂をすくっては炎にかけるを繰り返しながら、説明した。
「なるほど!」
「そういうこと!」
「分かったバイ!」
 バババババ、バッババッバ!
タケシたちも砂を両手ですくっては、回りの炎にかけだした。
すると、それまで4人をおおっていた炎が、少しずつ後ろへさがりだした。
砂をかけられた炎はみるみる勢いが弱くなった。火炎放射器からガスバーナー、アルコールランプ、ロウソクの炎…と小さくなり、そしてついにはある一カ所を残して完全に消えてしまった。
 「あいつが炎の正体か!」
壁に一つ残る小さな炎。それはまるで“ひとだま”のように、青白くゆらゆら揺れていた。
 そしてその中に、子どもたちを見ている目が一つ。
「よくもウチらを、石焼きピザにしようとしたなー」
ウッチーがその最後の炎めがけて砂を投げつけた。
 すると炎はあわてたように左右に揺れたかと思うと、次の瞬間、ビュビュン!と、そこいらを飛び回り、ピューッ!と、どこかへ飛んで逃げていってしまった。
「だからあ、今の場合、ピザじゃなくてバーベキューですよ」
 飛んでいくあとを見ながら肩で息をするウッチーに、デコが言った。
「…、だから、どっちでもいいじゃねえか…」
 「バイ」


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