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13,湖
「なんで海の下に…湖バイ?」
そこは、体育館ほどもある広い空間だった。
その一面に水面が広がり、まるで鳴門海峡の渦のような大渦巻きが、
ゴゴゴゴゴオオオーーー
いくつも音を立てていた。
そしてその渦の間には、点々と岩がつきだし、その先をたどると反対側に、また次のトンネルが口を開けていた。
水の中を覗き込んでみると、底が見えないくらい深い。
「こ、今度は、飛び石でここを渡るんかあ?」
「む、無理ですよ。幅が広すぎます。子どもには無理ですよお! それに、落ちたら渦に飲み込まれて、一巻の終わりですよ〜!」
「無理でも行くしかねえんだ! 飛ぶのがダメなら、あの岩づたいに泳ぐしかねえ! あの鬼は、こんな湖くらいジャンプ一発のはずだからな!」
タケシとウッチー、フトシが水面目がけて走り出した。
「でもボク、泳げませーーん!」
デコの、この一言で3人の足が止まった。そう、デコは泳げないのだ。
「う、う、う、うわーーーーん」
デコが泣き出した。
3人は、その場にへたり込んだデコのもとに引き返した。
しかしその先には、うっすらと鬼が、どんどん近づいてくる鬼の姿が見える。
4人は再び湖を見た。
「一緒に行こう、オレが支えてやるよ」」
「せやで、デコは泳がんでもええよ、ウチらで引っぱるさかい」
タケシとウッチーはその手を引っぱった。しかしその腰は地面から離れない。
「ボクを、ボクを置いていってください。みんなだけでも、先へ逃げて、助かってくださぁい〜〜。うえええん…」
泣きながら、デコが手をふりほどいた。
「ばかやろう、オレたちは仲間だぜ! お前だけを置いていけるかよ」
「そうやで、デコだけ見殺しになんか、でけへんわ!」
タケシとウッチーは覚悟を決め、やってくる鬼の方を向いて立ち上がった。
しかし、フトシだけは湖の方を見たままだった。
そして立ち上がると、湖に近づいていった。
「フトシ、てめえ、お前だけ逃げようってのかよ!」
「せやで、それに今から泳いでも、もう遅いで!」
気づいたタケシとウッチーが叫んだ。
しかし、フトシは湖のフチまで行くと、最初の言葉をまたつぶやいた。
「なんで海の下に…湖バイ?」
そして足もとに落ちている小石を、ちょっと先へ投げてみた。すると!
ドドド、ザバアアアアーーー!
突如あちこちの渦が盛り上がった。
そして、まるで竜巻のように水の柱となったかと思うと、空中の小石目がけて襲いかかった!
ドバ・バシャーーーン!
水の柱は空中で合体し大きな音を立てると、そのまま下へ落下した。
そして、
バシャバシャシャ、ゴゴゴゴゴゴオーーー
また元の大渦へと戻っていった。
「み…水の化け物…、今度は水の化け物だったのかよ!?」
「あのまま飛び込んでいたら、ウチらあの渦に襲われてたんや…」
がくぜんとするタケシたち。
「ボク、思ったんバイ。ここは海の下のトンネルなのに、こんな湖があるなんておかしいって。ボクたちが助かったのは、デコくんが泳げなかったおかげバイ、デコくん」
「あは、はは、は…」
フトシの言葉に、泣きながら笑顔を見せるデコ。
「そ、そうだな。何秒かは、寿命が伸びたかもな〜…」
グアーーーーーー!
目の前の危険を逃れても、鬼が真後ろに迫る。
子どもたちを目前に鬼は、喜んでいるかのような咆吼と表情を見せた。そして、その歩幅を伸ばし、まるで幅跳びの助走のようにスピードを上げた。
そして、
バーーーーン!
獲物─子どもたち─目がけて、ヒョウのようにジャンプした。
「うわーーーーっ!」
その時、
「こっちバイ!」
フトシが叫んだ。
水辺にいたはずのフトシは、いつのまにかトンネルから出た先の、右裏側の壁の中にいた。
そこには、彼らがいるトンネル側からは見えないが、壁に、人が通れるくらいの小さな割れ目があったのだ。
フトシはそこに入ると、上半身だけを斜めに戻し3人を手招きした。
ブワアアアア
空気を押しのけ切り裂く音と共に、鬼の体が中を舞う。
そして子どもたちに達しようかという、その時、
バシャーーーーーーン!
目の前から子どもたちの姿は消え、鬼は水中へと落下した。
間一髪、子どもたちはフトシが見つけた壁の割れ目に飛び込んでいた。
「よくこんな所、気づいたな。フトシ」
人一人やっと通れるようなすき間を進みながら、タケシが言った。
「あの場所で横を見たら、壁にまた血がついていたとバイ。それでその裏をのぞいたら、このすき間があったとバイ!」
「またしてもウチら、血のあとに助けられたってワケやな。こうなると、まるで助けるための目印みたいやな、ホンマ。ま、何にしても、よく気づいたで。フトシ偉い!」
ガーーーーーー!
後ろの方では、すき間をのぞき込み鬼が吼えている。
「さすがの鬼も、このすき間には入って来れませんね。はは」
デコも泣きやみ、笑いがこぼれた。
ライトを手渡されたフトシを先頭に、4人は何10メートルか、このすき間をたどった。
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