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   12,ブラックホール!?


 何事もなく、トンネルは続いていた。
そしてしばらく4人横並びで歩いた時、左側のデコが思いついたように言った。
「でも…不思議ですね。なんであの二人組は、ここの通り方を知ってるんでしょうか?」
「なんでって…だってやつら、地図を持っていたじゃんか」
横でタケシが答えた。
「いえ、あの地図には、岬と島を結ぶ線しか描いてありませんでしたよ」
「でもあいつら言ってたやんか、家には地図と言い伝えが残っているって。通り方は、言い伝えで知ってたんちゃう?
さらにタケシの右側でウッチーが言った。
「フムム、かもしれませんね。でも、もう一つ謎があります。最初はラッキーって思ってた、あの“血のあと”も、今回はまるで目印のようについてましたし…フムム」
デコは歩きながら、例の推理ポーズをとった。
 するとこの時、一番右側を歩いているフトシが、別の疑問を口にした。
「そんなことより、ボクにも一つ分からないコトがあるバイ」
「な、なんですか、フトシくん?」
3人はフトシの顔を見た。
 フトシは後ろを振り返り、真っ暗な先を指さした。
「だってこのトンネルは、鬼がつくったトンネルなんバイ。なのに、今さっきみたいに鬼が通れない場所があったなんて、おかしいバイ」
3人は顔を見合わせた。
「最初にボクたちが、鍾乳洞から落ちた時の事を思い出したとバイ。あの時鬼は、別の道を通って現れたバイ。だったらここにも、通れない所をよける抜け道があるはずバイ?」
『!!!』
 その時、
 グルルル… ドスドス…
またあのうなり声、そして足音がどこからかひびいてきた。
 そう、フトシの言ったとおりだった。どこか別にまた、鬼の通り道があったのだ。

 「言ったそばからかよ! どこだ? 前か? 後ろか?」
4人は背中合わせになり、前と後ろを見回した。
 うなり声と足音は、どんどん大きくなってくる。
「う…、上だーーーー!」
タケシがライトを上に向け叫んだ。
 見上げると、4人の上には大きな穴が開いている。
「そう言えばやで、さっきの石の向こう側にも天井に大穴が…、ってこれが抜け道やんかーー!」
「そうバイ! あの鬼のデカさなら、まっすぐ立つだけで、あの穴に頭が入るバイー」
「フムフムなるほど。腕を伸ばせば、楽々上にあがれるってわけですね」
「だから毎度の事ながら、推理するまえに逃げろっつーの、デコー!」
4人は、またまた全力で走り出した。
 そして何十メートルか走った頃、
 ドズーーーーン!
鬼が穴から下りた音が、4人の背中にひびいた。
 グオーーーーーー! ドスドスドスドス!
 そしてすぐに走り始める音も。

 「ぜえぜえ、い、息が苦しいです〜、ぜえぜえ」
「ぼ、ボクも、もう限界バイ〜、ぜえぜえ」
子どもたちにはもう、体力がまったく残っていなかった。
鬼とのこの近さでは、多分あと1分もしないうちに、すぐに追いつかれてしまうだろう。
「が、がんばれみんなー! ぜえぜえ」
「そや、死んでも走るんやー。ぜえぜえ」
 それでも4人は、必死に右左と足を上げ続けた。ふらつきながらも!
「もうだめです。ボク、めまいが、めまいが…、ぜえぜえ」
「ボクも、ボクもバイ、回りがゆがんで…」
「ウチもや、もうアカン…」
「…って、あれ? なんか変だぞこれ? なんだこりゃ〜〜!? ぜえぜえぜえ」
4人は、立っていられないほどのふらつきに足を止めた。
 そしてあたりを見回した。
「なんやの、ウチだけじゃないよね、目が回ってるの。なんやコレ〜〜!?」
 なんと、自分たちは止まっているのに、トンネルの先が、後ろも、そして壁から床から天井までが、すべてがぐにゃりとゆがみはじめたではないか!?
まるで、コーヒーにミルクを垂らしてかき混ぜた時みたいに、回りのすべてが、グルグル・ぐにゃぐにゃと、回り始めたのだ。
 「か、体も回ってるバイ〜!?」
「いやや、ウチの手が…ウチの体をぐるっと一周してるやんかー!」
「おおお、オレは、体がよじれて、自分のケツが見えてるぜー??」
「や、やっぱりこのトンネルは、異空間なんですよ、僕たちの住む所とは、違う異次元の世界に入ってしまってたんですよ、ボクたちー。ああ、ウッチーの口の中に、ボクの頭が入って行く〜〜〜!!」
 回りの壁だけじゃない、4人の体もねじれ、曲がり、混ざり合い、とんでもないことになろうとしていた。
いや、なってしまっていた。

 そして4人は見た。そのゆがんだ空間の中に出現した、真っ黒い穴を。
みんなは知っているだろうか、宇宙には、星や光さえも飲み込んでしまうという恐ろしい天体“ブラックホール”があるってことを。
 今、目の前に現れた穴は、まさしくそのブラックホールだった!
回りのゆがんだ壁が、どんどんその中に吸い込まれていく。そして、今はぐにゃぐにゃに混ざり合った4人の体も、どんどんそこへと引っぱられていく。
『うわーーーーーー』
恐怖に見開かれた4人の目の前に、穴はどんどん近づいてくる。
 「!?」
この時、タケシは気づいた。
なぜ回りや自分たちがゆがんでいるのに、その穴はゆがんでいないのかと。
それに、からだはゆがんでいても、実際はそんな気がしないことにも。
「なんで、穴だけが…もしかして…」
タケシは試しに目をつぶってみた。
すると、たしかに自分の体自体は、曲がりくねった感じがしない。手を動かしてもちゃんと動いているし、足を動かしても、固い地面がちゃんとそこにある。
 タケシはそれを確認すると、また目を開けた。
そして、唯一見えるその真っ黒な穴や、その回りを必死で見回した。すると穴の上に、うっすらと赤いものが浮かび上がった。
「これは…、異空間なんかじゃねえ!」
タケシは、そこ目がけて右パンチをくり出した。
ぐにゃぐにゃ曲がった体を気にせず、あるはずの腕をまっすぐに!
すると、曲がりくねっている腕が、さらに曲がりながらも、その部分へと近づいていくではないか。
 そして、
 パチーン!
 パンチがヒットした。

 グゲーーーー!
変な悲鳴が、穴から聞こえた。
と思ったら、空間のゆがみが一気に元に戻りはじめた。体にまとわりついていた何かが、後ろに下がりだしたのだ。
 そして、4人の目の前に現れたもの、それは…
「な、なんやコレ…なんか空気の固まりみたいな…? こいつが今の、変なんの正体なんか?」
まるでゼリーのような、どろんとした直径1メートルくらいのガスのようなものが、空中に浮かんでいる。
その中央に真っ黒い穴があり、穴の上には…そう、タケシの見つけた赤い“血のシミ”がついていた。
 ガスは、不規則に触手のようなものをぶよぶよと伸び縮みさせていて、そこを通して先の岩壁がぐにゃぐにゃゆがんで見えるのだった。

 「てことだ。さしずめ、空気の化け物ってとこだな」
「し、信じられません。まさかこんな生き物が、この世にいるなんて…」
「でもここに来て、こんなんばっかりバイ。鬼に始まり、あの木の根みたいな植物の化け物、岩の化け物、空気の化け物…バイ」
「せやな。考えてみれば、鬼かて動物の化け物やもんな」
ウッチーは足もとの小石を拾うと、その穴に放り込んでみた。
 バキバリバリ!
瞬間、石は大きな音をたてて、かみ砕かれたようにバラバラになった。
「ひええ! あぶなかったバイ! 助かったバイ〜!」
「いや、まだ助かってねえけどな」
 グオーーーーーー! ドスドスドスドス!
そう、4人はここで足止めをくっただけなのだ。鬼との距離は一気に縮まっていた。
 4人は慎重にガスの横をすり抜け、先へ出た。
 しかし、
「な、なんだこりゃ…」
 その目の前には、またしても難関が待ち受けていた。


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