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   11,行き止まり?


 「はあはあ、はあ、ウチら、もうどれくらい来たんやろ? あとどれくらいで、鬼城島に着くんやろ? はあはあ」
「はあはあ、どうだろうな〜、トンネルの中だから、オレにもさっぱり分かんねえよ。でも、もう半分は過ぎたんじゃないか。ハアハア」
「な、なんだかんだ言ってボクたち、けっこう走ってますから、ボクも半分以上は来てると思いますよ。ぼ、ボクの推理…というか、この疲れ具合では。はあひい」
「ハヒハヒ、ボクも、おなかのすき具合から、だいぶ走ってると思うバ〜イ。ハアハヒ」
 4人は、走りながら話した。
トンネルはまた4人が並んで走れるほど広く、天井の所々に上に向かって大穴が開いてはいるが、まっすぐに前へと続いていた。
「ってことは、あと1キロも走らないうちに、島にたどりつくはずやな。はあはあ、200メートルの校庭5周分や。そんなん1時間もかからへんで。はあはあ」
「いや、無理っぽいぞ。あれを見ろ! はあはあ」
 4人は、入口から数分走ったところで、また足を止めた。

 「い、行き止まりやて?」
4人の行く手を今度は、大きな岩がはばんでいた。トンネル全体をふさいで!
「やっと助かったと思ったのに…こ、今度こそ絶体絶命バイ…」
フトシがその場にへたり込んだ。
 と、その前に、何か光るものが。
「なんバイこれ?」
フトシは、それを拾い上げた。
「それ、鬼の宝やーー! 貸してみーーー!」
ウッチーが目を輝かせてそれを取り上げた。恐るべし、ウッチーの性格。
タケシたちはその回りに集まり、ライトで“それ”を照らした。
「フムム、これは…、銀貨ですね」
「ぎ、銀貨やてーー♪」
「外国の…、この肖像は、たしかジョージ2世だったかな、イギリスの古い銀貨ですよ」
「な…イギリスの? なんや、鬼の財宝と違うんかあ…しょーもな。じゃあ多分、あのイギリス人二人組が落としたものかも、しれへんな」
ウッチーは、興味ないといった感じでそれをフトシに返した。
「いや、違うぜ多分。その汚れた感じからすると、その銀貨はだいぶ昔からここに落ちていたんじゃないのか?」
「ええ、ボクもそう思います。それは汚れではなく、おそらく何かの結晶がくっついたものでしょう。多分、トンネルからしみ出たものが、固まってるのかと。
 その証拠に、地面についていたと思われる片面だけですからね、汚れてるのは。フムム、これが流通したのは、確か18世紀中頃…。多分年代的に、あのミイラたちが持っていたものかもしれませんね。フム」
タケシの推測に、デコも同意した。
「そんなもん、どうでもいいんや。それよりウチら、これからどうしたらいいんや?」
 「死ぬとバイ。今度こそボクたち死ぬとバイ。うえ〜〜ん」

 肩を落とすウッチーと泣き叫ぶフトシの横で、タケシとデコの二人は、目の前をふさぐ岩を見回した。
すると、岩の表面はほぼ平べったくて、そこには何やら模様が彫られていた。
「なんだこの模様は。見たことあるか? デコ」
「いえ。これは模様じゃなくて、何かの文字かも…。でも、文字にしても、こんな文字見たことありませんね…。なんか、ギリシャとかエジプトとか、そのもっと前の文字のような…」
「ようするに、鬼の文字ってことだ!」
 その時、
「ふっふっふっふ…」
誰かが笑った。
「な、なんバイウッチー、何を笑いよるんバイ? うえ〜ん…」
「なんやて、ウチが笑うわけないやろ、こんな時に。笑ったのはフトシやんか。フトシこそ、泣きながら笑うんやないで!」
「な、泣きながら笑うなんて、ボクできんばい、うえ〜ん」
「じゃあ、だれや! 笑ってるのは!」
 ウッチーは、タケシとデコを見た。
ところがその二人は、ウッチーやフトシのほうを見ている。いや、正確に言えば、その先を見ている。
「フッフッフッフ〜〜〜…」
 真っ暗なトンネルの先に、その笑い声の正体があった。真っ赤に光る、二つの目玉と一緒に。

 『来たーーーー!』
それは笑い声ではなく、静かに忍び寄る鬼の息づかいだった!
 鬼は“悪いもの”を食べてしまったせいで、まだ気持ちが悪かった。たて穴からトンネルにはい上がると、これまでとは違って、ゆっくりと4人に近づいていたのだ。
 ウッチーとフトシは飛び上がるように立ち上がると、行き止まりの岩にへばりついた。
「そうや、血や、血のあとや! 今度もどこかに、血のあとがついてへんのか!」
「そ、そうばい、さがすバイ〜!」
岩の回りや壁を確かめる、ウッチーとフトシ。
「ばかやろう、目印じゃあるまいし。そうそう血のあとなんて、何度もあるはずが…、くっそー」
言いながら、タケシもあたりをライトで照らしてみた。
「も、もう無理ですよ。こんなにトンネルいっぱいを、岩でふさがれていては。ボクたち走ってきたから気づかなかったけど、多分、途中に抜け道か何かあったんですよ。そう言えば天井に大穴がいくつか開いてたし…、多分あれが…。ああ〜、もうダメですボクたち!」
デコは、ゆらゆらと近づいてくる赤い光を見ながら、全身を襲う恐怖に固まった。
 そしてついに!
 フッフッフッフ〜〜〜…
 4人の前に、鬼が姿をあらわした!

 鬼は、ゴリラのように前かがみで近づいてくる。
それでもその巨体は、穴いっぱいをふさいでいた。生臭い臭いがトンネルに充満する。
『うわあああ、あ…』
もうどこにも逃げ場がない。4人は岩を背にして震え上がった。
「もうダメや…」
4人は横目で、お互いを見やった。
 その時、
『あ、あった!?』
4人は、頭の後ろに刻まれた謎の模様に、血が付いているのを発見した!
『これだーー』
4人は振り返ると、血のあとのつく模様を確かめた。すると点々と、いくつかの模様の中に、塗り込められるように血が付いているではないか。
「これとこれと、あ、そこにもあるやん!」
「ここにもあるバイ!」
「で、でも、こんな指がやっと入るような線の中の、何をどうすれば!?」
 フッフッフッフ〜〜〜…
そうしてる間にも、鬼は近づいてくる。
 生臭くなま暖かい息が、背中にあたる。鬼は、手を伸ばせば子どもたちに届く距離に近づいていた!

 「血の上に、なにかこすったようなあとがあるぞ。とにかく指をつっこめ、つっつけ、こすれ〜!」
 ツンツン、スリスリ!
4人は一斉にその部分を人差し指でつっつき、こすり始めた。しかし何の変化も起きない!
 グフフフ、グア〜〜〜〜!
鬼は丸太のような両手を天井いっぱい振り上げると、4人目がけてその鋭い爪を振り下ろした!
 『うわあああ〜〜』
その巨大な爪が、4人の体に達しようとした、その瞬間、
 バコチョン!
 変な音がして、目の前の岩が自分たちの方へ傾いた!

 バーーーーーン!
その傾いた岩に、鬼の手がぶち当たる!
「きゃああ!」
間一髪、子どもたちはその岩の下へしゃがんでいた。
 実は、穴をふさいでいた岩は、岩と言うより板だった。その板の上が手前に、下が向こうに、つまり左右を軸にして上下くるりと回転したのだった。
「向こうが見えた!」
そして板は斜め45度あたりで止まり、ちょうど鬼の手を止めていた!
その板の下のすき間から、トンネルの向こうが見えている。
 「急げーーー!」
4人はそこを、トカゲのダッシュのようにくぐり抜けた。
 ガアアーーーーー!
鬼は板の上のすき間から、右腕を伸ばし振り回した。
 しかし4人はもう、何メートルもその先へと逃れていた。
「ど、どうやらあそこからこっちには、来れないようですね」
「そうだな。ジタバタしてるけど、あのでかい体で通り抜けるのは、無理みたいだな」
 バコチョーン! バコバコバコ…
4人の目の前で、板はまたまた奇妙な音を立てると、ゆっくりと回転をはじめた。
そして一回転したところで停止すると、再び穴をふさいだのだった。
 そして同時に、
 グオーーー…
手を引っ込めてこちらを見ていた鬼の顔が見えなくなり、穴がふさがると同時に、そのうなり声も聞こえなくなっていった。
「た、助かったバイ〜…」
「ほんまや。ウチもう、絶対アカン思うたで」
4人は、しばらくその場にへたり込んだ。
 そして落ち着くと、新たな道の先をライトで照らしてみた。しかしそこは、これまでと同じくトンネルが続いているだけだった。
4人は立ち上がると、だまったままでまた歩き始めた。
 先へ進むしかない! しかしもう、しゃべる気力さえも残っていないのだった。


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