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二十一、別れ……それが答えだ!
大地たちは、天地核を再び箱の中に封印すると、舞羅の祈りの中、神殿跡の地面へと埋めたのだった。
そして、そのまま火星を後にし、無事地球への帰途についたのだった。この間大地は、愛羅の看護と船の医療システムで、肩の傷口をきれいに治してもらったのだった。
そして、一行が無事地球に帰還すると直ちに、言葉を取り戻した紫蘭王子直々に、今回の事件の真相が発表された。
“暗黒龍王の復活と戦い、そして封印”人々はこの真実に驚き、そして狂喜した。地球は天変地異により多数の被害が出ていたが、これから始まる復興と平和の予感に、国民は皆、明るい希望を抱いたのだ。
イグアノ族もまた被害者と言うことで、王子特赦によりその罪を問われず、これからは地球(チタマ)王国の一市民として、その体力を提供し復興に協力することとなった。
そして孔明もまた、両親と共に都へ転入し、両親は新しく設立された科学アカデミーに勤める事になり、孔明は他の友達と仲良く、都第三西小学校に通うことになった。
そしてもう一つ!
国民は、紫蘭の国王即位の祝賀ムードに沸いていた!
即位のこの日、紫蘭は金色に輝く王冠をかぶり、威厳のあるいでたちで王宮のバルコニーに立つと、国民に向かって平和と繁栄の誓いを述べた。それは全世界へと中継され、地上を祝福の声がおおった。
そしてその後に続く華やかな祝宴が、大地たちを最上席に陣取らせ、何度も何度も何昼夜も繰り返された。 さらにもう一つ、火星で死んだかと思われた大全は、実はただ気を失っていただけで、愛羅の看護で見事に復活し、ホログラフィー大地と一緒に、連日連夜このドンチャン騒ぎを楽しんでいた。 こうして、慌ただしい日々があっという間に過ぎていった。
そして……
「ほぼ完成したようですわね。」
舞羅は、油まみれの作業着にヘルメット姿で忙しく動き回っている雷羅に話しかけた。
祝宴と平行してここ王宮広場には、雷羅の設計で新たな“次元断層転移装置”が作られていた。
そしてそれは、彼女自身の指揮により、もうすぐ完成しつつあったのだ。
「ああ姉貴、あとは細かい調節さえすればOKだ。明日にも三人を、元の時代に送り帰してやれるぜ!」
雷羅は、イギリスにあるストーンヘンジのような、丸い形をした装置を見回した。その回りではたくさんの作業員たちが、やれ配線だやれねじ止めだのと、テキパキと仕事をこなしていた。
「………。いいんですの、それで?」
「いいんですのって……何が?」
雷羅は手にした作業ノートで、いろんな機器類をチェックしながらぶっきらぼうに言った。
「あなた……こっちに還ってからは、大地様とまだ、一言も話をしてないようですけど?………」
「!!!」
一瞬びくっとしあものの、またチェックを始める雷羅。
その様子に、
「雷羅!」
叱っするように、舞羅は声を上げた。
「……………………」
すると雷羅は動きを止め、ノートに目を落としたままゆっくりと顔を横に振ってみせた。
そして、
「……話すったって…、話すったって…………、何を話せば………いいのさ…。はは……………。」
肩を震わせ、寂しげに笑ってみせた。
「ですが……」
「姉貴……。アイツは………アイツはもう、過去に帰っちまうんだぜ………………。今さら……、何も話すことなんてないよ……。今さら……、何か話したって………、話したって、あたしは…………アイツと…話してしまったら、あたしは、あたしは……………」
「雷…羅……」
雷羅の手から、はらりとノートがはなれた。
「うっ、うっ、うっ……うう〜っ、うっ………」
肩の震えは大きくなり、やがて嗚咽へと変わっていく。
「雷羅………」
舞羅は、雷羅の頭をそっと抱きしめた。
舞羅は知った。この気の強い、しかし心やさしい妹は、一人、別れの苦しさを必死で耐えていたのだと。
それは大地、そして未来と紫蘭も同様だった。
彼らもまた、お互い言葉を交わすと崩れてしまうであろう心を、お互いを避ける事によって必死に持ちこたえていたのだった。
大地は、暇があると人を避け、雲の上に突き出た王宮の屋根に一人よじ登った。そして膝を抱えるようにして座ると、ただただ毎日じっと遠くを見つめていたのだった。
だが、不思議とその目は、別れの悲しさに沈む他の三人の目とは、少し違っているようにも思えた。その目の奥底には、何かを考え、そして決心したかのように、徐々に光が増しているようにも感じられた。
そしてもう一人、そんな大地の後ろ姿を、気付かれないようにそっと見守る人物がいた。
「………………………」
それは後の大地、ホログラフィー大地老人だった。
彼もまた、何かを思うかのように、無言でただじっと大地を見つめていた。
そしてついに……、
「お三人様方には、大変お世話になりもうした。紫蘭王ともども、何と感謝御礼申し上げてよいやら……」
王宮広場、雷羅の作った次元断層転移装置の中、別れの時はやって来た!
「皆様方には、もう少しお残りいただいて、ひと月後に控えし紫蘭と雷羅の婚礼にも、ぜひとも出席していただきたかったのじゃが……」
先々代王時津風は、新王紫蘭そして神司(かみつかさ)三姉妹より一歩前に出て、大全たち三人に感謝と別れの言葉を告げていた。
そして装置の外ではたくさんの王宮職員と並び、ホログラフィー大地老人と孔明親子、ンタラチュラの面々が、それぞれにその様子を見守っていた。
「いやいや。お二方の婚礼に出られぬのは、まっことに残念じゃが、これ以上お互いがお互いの歴史に関わるのは、危険というもの。事件が解決した以上、もはや長居は無用でござる。こちらこそ、皆様にはまっことお世話になり申した。」
そう言うと大全も、背筋を伸ばしたまま深々と頭を下げた。
「いやいやとんでもない。………………ほれ、どうした紫蘭王、舞羅たちも、この大恩人のお三方に別れの挨拶をせぬか!」
「は、はい。」
紫蘭そして三姉妹は、先々代王に促され一歩前へ出ると、
「このたびは、ほんとうにお世話になりました。」
と、大全に深々と頭を下げた。
「うむ、紫蘭王殿、過去の空より地球(チタマ)王国並びに宇宙王家の繁栄を、心よりお祈り申しておりますぞ!」
「はい、ありがとうございます!」
王らしく、紫蘭は堂々とお礼を述べた。
「舞羅、雷羅、愛羅の三姉妹にも、まっこと世話にあいなった。みな元気での!」
「はい、大全様も……、お元気で。」
涙ぐむ舞羅。
そして、
「………じ、じっちゃんもな。」
「え、え〜ん、さみしいでちゅう〜……」
雷羅もうつむきながら挨拶をし、愛羅は泣きじゃくりながら大全に抱きついた。
「よしよし……」
大全は、その頭を優しくなでた。
そして、その横で紫蘭は、今度は大地の前に立つと、右手をスッと差し出した。
「大地さん、なんとお礼を申し上げてよいやら……。そして、王国開祖宇宙鎮尊(おおぞらしずめのみこと)様におかれましては、帰られまして後、大変な戦いが待ち受けているとは存じますが、さらなるご武運をお祈り申し上げております!」
「うん……、紫蘭国王もお元気で!」
そう言うと、大地も両手を出して紫蘭の手を握り、ガッチリと握手を交わしたのだった。
そして次に、紫蘭は大地の横に立つ未来に向かい、
「神司姫(かみつかさひめ)様におかれましても、御身を大切に……。」
と言って手を前に合わせ、拝むように深々と頭を下げるのだった。
「!!!!…………」
この動作そして言葉に、未来は心の中で衝撃を受けた!
紫蘭は、最後にもう自分の名前を呼ばなかった! そう、未来は別れのこの時、最後の最後のこの時、お互いがもう、お互いの名前をを呼べない立場になったのを、あらためて知ったのだ!
未来は目を伏せ、
「は、はい、国王様も、雷羅さんと末永くお幸せに……。わたくし、心から祈って……」
と、涙をこらえ、必死に言葉を振り絞ったが、最後は詰まって声にならなかった。
これに、頭を下げたままの紫蘭は、
「はい………、では、お元気で!」
と言って顔を上げると、目を合わせないようにして後ろを向き、装置の外へと向かった。
その後ろ姿に、
「紫……」
未来は、思わず一歩を踏み出した!
「………!!」
紫蘭の足も一瞬止まる!
が………
二人ともそのまま、必死にそれ以上の行動を取るのをやめた!
踏みとどまる未来の足は震え、今にもその場に崩れ落ちそうなのは、誰の目にも明らかだった。そして紫蘭もまた、未来に向けた背中が小刻みに震えていた。彼もまた、別離の苦しさに心が張り裂けそうだったのだ……!!
しかし、紫蘭はそのまま歩を進めた。
今や彼はこの国の国王なのだ! 過去と未来の人間の、しかも個人的な感情が、国を導く王に許されるはずもないのだ!!
「未来………」
大地は、未来の腕に手を回し、今にも崩れそうなその体を支えてやった。
そして、そんな二人の姿に、雷羅もまたうつむき目を伏せるのだった。
その二人の前に、舞羅が歩み寄る。
「大地様……、いいえ、宇宙鎮尊(おおぞらしずめのみこと)様、この度はわたくしたちの無理なお願いをお聞きいただき、本当にありがとうございました。そして、神司姫(かみつかさひめ)様であらせられる未来さんも、とんでもないことに巻き込んでしまって、真に申し訳ございませんでした……。わたくしたち姉妹も、お二人のお幸せを、心から…、心からお祈りいたしますわ。」
舞羅はそう言うと、また深々と頭を下げた。
そして、
「大地お兄ちゃま、未来お姉ちゃま、あ、う、あ、うわあ〜〜〜〜〜〜〜〜。」
もう泣きじゃくり、言葉にならない愛羅だった。
大地は、
「愛羅ちゃん、いつも治療してくれてありがとう。このことは、一生忘れないよ。」
と、その頭を優しくなでてやるのだった。
こうして、姉妹二人は挨拶を済ませ、舞羅は愛羅を包み込むようにして装置の外へと向かった。
だが、雷羅だけはまだ動かなかった。動かずに顔を上げ、大地の目を見つめた。
「雷羅……」
大地も、雷羅の目を見つめた。実は、二人が目を合わせるのは、地球に帰って以来これが初めてだったのだ。
しかし、それも数秒の事だった。
雷羅はすぐに、うつむくようにしてに横を向くと、またしばらく黙った後、………言った。
「大地、あのさ………あたし、……あの……………あたしのことは、忘れていいぜ!!」
「!」
「あたしも……、あたしのばあちゃんの占いどおり、紫蘭と幸せな家庭を築くからよ! お前も…、あたしたちのことなんかさっさと忘れて、元の世界で未来と幸せにな。はは、ははは………!」
雷羅はそう言うと、
「雷羅…。」
と、なおも名を呼ぶ大地を振り払うようにして後ろを向き、紫蘭たちの待つ装置の外へと向かった。
彼女もまた、これから紫蘭と結婚し王妃となり、天変地異により荒れ果てたこの王国の復興と繁栄を、紫蘭と二人で見守らなければならない立場なのだ!
が、
「雷羅!!」
三度目の、今度は大きな呼び声が、雷羅を呼び止めた!
しかし、雷羅は決して振り返らない。雷羅もまた、必死に衝動を抑えていたのだ!
そんな彼女を、
「雷羅!!!」
大地は、今度は後ろから抱き止めた!
「!!!!!」
雷羅の心を、衝撃が走る!!
「な、何すんだよ大地! 大地、アンタは、あたしは……あの……あ…………………」
「雷羅………………」
大地は、さらにギュッと抱きしめた。
強く、強く! そして………優しく!!
「あ、ああ……………あああ〜〜……………………」
この時、雷羅の頭の中から全ての義務が、いっさいの束縛が、
……消え去った!!
「だい……ち……、大地……大地〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ………………………!」
「な、何じゃあ〜〜〜〜???!!」
先々代王は驚き、目を見開き口をあんぐりさせていた。
なぜなら、目の前で、大地に抱き寄せられた雷羅が、その身と心を震わせながら振り向いて、大粒の涙を流しつつ大地と唇を重ねたのだ。
それも強く! 強く!!!
「○○◯◎♀♂▽☆◆??〜〜、 ど、どうなっとるのじゃあ〜〜〜〜〜?????」
はらひれほろと頭を抱える、先々代王。
そしてその驚きは、中を見守っていた大勢の王宮職員もまた一緒だった。彼らは目の前で起こっている出来事の意味が理解できず、ざわめきながら顔を見合わせた。
しかし、大地と旅を共にした者は、同じ驚きでも少し意味が違っていた。大全も、舞羅も、愛羅も、そして孔明親子も、ただ無言で涙を浮かべ二人を見つめていたのだった。
そして紫蘭と未来もまた、二人の抱き合う姿越しに、お互いの目を見つめていた。
こうして長い長いキスが終わると、大地は左手で雷羅を胸に抱き寄せたまま、右手で未来を引き寄せ、
ドン!
と、その背中を後ろから押し出した!?
「だ、大地何を……?」
前へよろける未来。
そしてその先には、紫蘭が!
「!!!」
紫蘭は驚き、思わず未来を受け止めた!
「大地さん、こ、これは?!」
そして大全もまた、
「大地お主……」
その“行動の意味すること”に驚いた。
それは、雷羅と未来はもちろん、舞羅、愛羅たちもまた同じだった。
大地は、雷羅をしっかりと抱き寄せたまま、外からこっちを見ているホログラフィー大地の方を向いた。
「オレは帰ってから……、ずっと…ずっとずっと考えた! …………そして、やっと分かったんだ!! あんたの嫁さん、つまり未来ばあさんからの“パラレルワールドは存在する”という伝言の、“本当の答え”は、これだ!!」
「!!!!」
大地老人は、驚きの表情を見せた。
が、しばしの沈黙の後、その頬には一筋の涙が!?
「若き大地よ……、よくぞ見つけた………。お前自身がそう決心したのなら……、そう………、それが“答え”だ! ワシの嫁未来が、若きワシに伝えたかった“真実”のな! …これをもって行くがよい!」
老人は、今度はニヤリと笑うと、小さな携帯端末に似たものを懐から取りだし大地に投げてよこした。
「それでしばらくは、こちらと情報のやりとりが出来じゃろうて。」
「へーえ、用意がいいんだな。」
「くっくっく……。実はそれも、ばあさんからお前への贈り物じゃあ。では、元気でな♪」
老人はウインクすると、手にした杖の先を少し上げた。
大地も、
「ああ!」
と、手を挙げ返事を返すと、今度は雷羅の目を見つめた。
「雷羅、ここからでも装置の操作は、出来るんだろう?」
「え? う、うん。このブレスレットで…………」
雷羅は、左手から一つのブレスレットを引き抜いた。
「じゃあ、オレと一緒に行く決心がついたら、お前が、自分で装置のスイッチを入れてくれ。」
「で、でも大地………」
「やっぱり、オレと離れる方が………、いいのか?」
「う……、ううん、いやだ! いやだよ大地、絶対…………」
雷羅は静かに呼吸を整えると、みんなの見守る中、ブレスレットに手をかけた。
そして、その上に、大地もまた手を乗せた。
「だ、大地???……」
未来は、大地の行動に驚きつつも、紫蘭に抱かれた腕の中から動こうとはしなかった。
そう、彼女はもう、絶対動きたくなかったし、紫蘭もまたそんな未来を二度と話すまいと、強く強く抱きしめていたのだ。
「よいのか、二人とも?」
大全は、大地と雷羅を見つめた。
コクリ!
二人は深くうなずいた。
そして紫蘭と未来に目をやると、二人もまた深くうなずくのだった。
「ふーーっ、やれやれ……。ま、占いでは二人の“魂”が結ばれる運命じゃというから、ここで片方の生まれ変わりの前後が入れ替わっても、それはそれで、また然りかのう! かっかっか!!」 |
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