第十五章 あっけない結末?その2

十五、あっけない結末? その2

 「小僧!! こうなれば、お前を殺す!! お前を殺し、紫蘭から魂残り半分も奪ってみせるわあ!!!」
「おお!! やれるもんなら、やってみろーーっ!!」
今や、ドームの天井いっぱいまで膨れ上がった暗黒龍王は、
 ズドオオオオオオオオオ!!!
ドームを揺るがす激しい振動と共に、呼び名そのまま、龍のごとく驀進した!
 大地に襲いかかる真っ暗な固まり!! 暗黒の死に神!!!
かたや大地は、
「いやあああーーーーーーーーーーー!!」
渾身の“気を”体の奥深くより発すると、
 ビカアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!
草薙の剣を激烈に光り輝かせた!
 まばゆいばかりの光、光、光っ!!!!
大地は、まるで、宇宙にあらん限りの宝石を巻き散らしたかのように乱舞する、光の粒を身にまとい、
「ーーーああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
気合いを爆発させ、再び宙へ舞い上がった!!

 再びの……対決!!!!

 ──それは“破滅破壊の魔王”と、宇宙の成長発展を願う“神の使徒”との戦い!
“絶対の闇”と“絶対の光”が、今ここに激突する!
それは、過去何度繰り返された戦いなのか? 
そして、過去何度人類が滅び、何度絶望を味わってきた戦いなのか?! それを知る者は、この宇宙自身以外、誰も知らない! この暗黒の王でさえも!!
 だが………、だが、だが、だが! これだけは言える!
人類は、その戦いのたびごとに、かろうじて勝利をおさめ、絶望の中からわずかな夢と希望を見いだしては、成長し、発展して来たのだ! 発展し続けて来たのだ!!!
 そして………………、果たして今度は………………果たして………………!!!!!──

 シャアアアアアア!!
剣から溢れ舞う光の粒は、襲いかかり来る暗黒体に接触するや、瞬時にそれを無力化し、次々と“無”へと昇華させていった!
 大地の剣は、まるで無限のパワーを放出するがごとく、龍王の吐き出す魔の超物質をことごとく、この宇宙と同じ“空間”へと変えてしまっているのだ!
 なんという剣の力、なんという大地の意志の力!
そう、彼はもう、初めてこの時代に来た時の大地と同じではなかった!!
 遙かなる時空の旅と戦いは、いつの間にか少年を、真の剣者へと変えていた! 今や彼こそは、永劫のいにしえより伝えられし、神の武器を自在に扱う正統の使徒なのだ!! 彼こそは、全宇宙のパワーに匹敵する力を与えられし、聖なる剣者その人なのだ!!!!
 シャアアアアアア!!
宙を舞う大地の剣は、暗黒体をことごとく消滅させ、その切っ先は暗黒龍王本体へと突き進む!!
 「ぬおおお!! こ、こやつの剣、この前の戦いの時より、あきらかにパワーが増しておる!? かつて余が、戦い破れし剣者どもにも匹敵する、この力は一体?? なぜだ! なぜにこうも短期間に、ここまで剣を使いこなせるのだああ!!」
暗黒龍王は、大地の剣のパワーに驚愕していた!
 そして大地を“真の剣者”と認めると同時に、真正面からこの危険な剣者と対決するという戦法を、素早く変えた!
 彼は、今まさに剣の先が自身の頭に触れようとした瞬間、
 グバア!
その身を横に翻したかと思うと、
 ブ、ブブブブブブブブーーーー!……
背中を覆う、CD程もある大きな暗黒の“鱗”(ウロコ)を次々と逆立たせ、
 ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドーーーーーーーーーーーーーッ!
それを、大地目がけて発射した!
 「うわああああ!」
それはまるで、マシンガン!
 恐るべき死の弾丸が、大地目がけ次々と浴びせられた!
「くっそおおおおーーーーっ!」
 大地は素早く、
 カンカンキン…!
と、剣でそれをはじき返した!
 しかし、
「ぐわああああっ、くそーーーーーっ?!」
受けきれず、鋭いカッターの刃で切り裂かれるがごとく、全身を無数に傷つけられていくのだった!!
 そこに!
「死ねえ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
龍は再び体をひねったかと思うと、まるで獲物を狙う蛇のごとく大地の背後から襲いかかった!!
 迫り来る真っ赤な口! 背丈ほどもある牙!!!!
 「だ、大地ーー!」
「いかん、あれでは喰い殺されてしまう!」
雷羅が、大全が叫んだ!
 そしてなすすべもなく、みんなが思わず目をつぶった時、
 ガチイ!
牙と牙の咬み合わさる凄まじい音とともに、
「ぎょえーーーー!!」
大地の、悲痛な悲鳴が響きわたった!!!
「きゃあああーーーーーー!」
未来が悲鳴を上げる!
 …………が!?
 間一髪、
「あ………っぶね〜〜〜!!」
大地は空中にありながらも、迫り来る下アゴの牙を右横蹴りで受け、ギリギリその身をかわしていた!
 しかし、龍王も素早い!
またもや半身を翻したかと思うと、今度はその右手を一閃!
 ビシュウ!
大地の背中へ、その鋭い爪の切っ先を突き立てた!!
「ぐあっーーーっ!?」

 「チイイ、まだまだ未熟!」
その危なっかしい戦いぶりに、大全は床目がけて杖から強烈な気を噴射し、
 ズドオオン!
戦いの中目がけて自らを発射した!
 そしてその後に、
「!!!!!」
鉄棒を持った紫蘭も続いた!!
 その上空では、爪を立てられバランスを失った大地目がけ、暗黒龍王が再びその口を開けて襲いかかっていた!
 大全と紫蘭は、その背中目がけ、
「キエエエエエイ!」
「!!!!!!!」
それぞれ、手にした杖と鉄棒を突き刺した!!
 ブシュウウ!!
まるで、血のように吹き出す暗黒体!
「グアーーーーー?!!!」
龍王は、この不意打ちに驚いた!
 そして、二人をはじき飛ばそうと、
 ブオオオ!
その尻尾をしならせた!!
 だがこの二人は、今は草薙の剣を使えないと言うだけで、天昇龍剣奥義を究めた者に違いはないのだ!
しかもその身のこなし、剣技、ともに大地を遙かに上回る能力の持ち主なのだ!
 二人は、ともに尻尾の反撃をヒラリとかわし、杖を、そして鉄棒を、次々と龍王本体目がけ突き立てた!!
「グワアアアア〜〜〜〜〜! おお、おのれえ! ちょこまかと、小うるさいハエどもめーーーーーっ!!」
決して致命傷になるわけではないが、次々と口を開けるその傷から、まるでどす黒い血が吹き出すかのように、ドバドバ暗黒体が吹き出してゆく!
  龍王は、たまらずその身をくねらせた!!
「今じゃ、大地!!」
「おおうーーーー!」
 この時、床に降り立ちその態勢を立て直した大地は、背中の傷口から大量に血を吹き出しつつも、再び龍の本体目がけ飛び上がった!!
「いやあああーーーーーーーーーー!」
 だが!!
「えーい、うっとおしいのだ、貴様らはーーーーーっ!」
 ズドドドドドドドドォ!!
またもや放出される、鱗のマシンガン弾!
 しかも今度はもっと激しく、三人は体ごと、ドームの隅にはじき飛ばされてしまった!
「くっそおおーーー!」
大地は壁を蹴り、体を一回転させて着地した!
 しかし、
「ぐはあ!!」
神剣に守られている訳ではない大全と紫蘭は、弾と壁にたたきつけられた衝撃でかなりのダメージを受け、
 ドス、ドサア!
と、床に崩れ落ちてしまった!
 それを見た舞羅たち姉妹、そして未来は、
 「大全おじいさま、王子、しっかりー!」
再び中に飛び込むと、二人を急いでトンネルへ引きずった。

 この時、暗黒龍王は、なおも大地にマシンガン弾を浴びせながら、
 「?!」
横目で見るこの小娘たちの中に生じている、あるわずかな変化に気付いたのだった!
それは、前回この一行と戦った時に知った、未来と紫蘭がお互いに抱く、“感情と行動”に反する光景だった。
「?????」
それは未来が、通路に運び出した紫蘭を“本当の婚約者である”雷羅にゆだねる姿だった。
 そして、
「大地、しっかりーーーーー!!」
と、自分の目の前にいる剣使いを応援する姿だった。
「ほ……ほう?」
 と、
暗黒龍王の目に、またもやかすかな笑みが浮かんだように感じたのは、気のせいだろうか?

 一方、この時、
「?????」
大地もまた、龍王の微妙な変化を見逃さなかった。
「……薄れ……た?………………??」
そう、暗黒龍王がマシンガン弾のように鱗を射出するにつれ、わずかにではあるが、その本体の“暗黒さ”が薄れてきていてたのだ! しかも、その薄さがだんだんとハッキリするに従い、大地の受ける鱗の衝撃も、また弱くなっていくのだった!
 大地は落ち着いて、はじき落とした鱗を見渡した。するとその鱗は、床に落ちると瞬時に暗黒体を蒸発させ、肉片のような組織へと変化していくのだった。
「こ、これは………………」
大地は、その姿を薄くした暗黒龍王を見上げた!
 「そうか…………………………分かったぞ! しょせん、その体は借り物!! いやああーーーーーーっ!」
 床を蹴る大地!
「お前は、人間の体を使って実体化しているだけで、その本当の正体は、実体のない“まぼろし”みたいなヤツって事だあ!!」
激しい気合いと共に、大地は龍の頭めがけて剣を振り下ろした!
 瞬間!
 ギイイイイイイイイ〜〜〜〜〜〜〜〜!!
悲鳴とも………、衝撃ともつかぬ音が響いた!
 まばゆく光り輝く剣が、巨大な龍の頭に深々とくい込んだかと思うと、
 グバアアアッ!
その頭は砂粒のようにバラバラに砕け、体もまた、暗黒体を吹き出しつつ消滅していった!
 そして、ドーム全体を覆う暗黒体もまた、剣のきらめく光にキラキラと置き換わりながら、ゆっくりと消滅していくのだった!

 あっけなく……
あまりにもあっけな……、その戦いは終わった!!

 「や、やったぜ、大地ーーーーーーっ!!」
「お見事ですわ、大地様ーーーーーーっ!」
「すごいでちゅ、大地お兄ちゃまーーっ♪」
「やったやんか、大地にいちゃん♪ オレ、信じとったでえ〜〜〜♪♪」
「すごいよ、大地ーー!!」
この大勝利に、三姉妹、孔明、そして未来が駆け寄った!
 大地は、剣をまだ構えたまま、
「………や、やった………?」
あっけない結末に、しばし呆然と立ちつくしていた。
 そして………
「やった………、やったぞーーーーーー!! ついにオレは、暗黒龍王を倒したんだあ!! うっわーーーーーーーーーー♪♪♪♪♪♪♪」
ついに自分が暗黒龍王を倒したことに気づくと、みんなと手を取り合い、飛び跳ねて喜んだ!
 そう、ついに、ついに大地は今ここに、この、宇宙の敵と呼ばれし悪魔を倒したのだ!!!!

 「ば、バカな、いくら神剣の継承者相手とはいえ、かつて、世界を滅ぼしたほどの力をお持ちの暗黒龍王様が、こうも簡単にやられるとは………! そんな…、そんな…、そんな〜〜〜〜、ひ、ひい〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」
イグアノ族族長ンタラチュラとその部下は、自分たちの崇拝する“神”が破れたのを目のあたりにして、すっかり恐怖におののき逃げ出した!
 が、
「待ちな!」
雷羅が、その族長の首根っこを捕まえた!
「ひえー、ご、ごめんなさい〜〜〜〜〜〜!」
すぐに観念する、族長。
 実は彼は、その体といつもの偉そうな言葉に似合わず、一人になると、ただの気の弱い老人に過ぎなかったのだ。
 一方二人の部下は、そのまま外に走り出ると、港で警戒していた十名ほどの部下に暗黒龍王の敗れたことを告げるやいなや、ともども、潜水艦に飛び乗ってとっとと島からトンズラしていくのだった。

 しかし、どういう事だろう?
イグアノ族族長ンタラチュラの言うとおり、確かにこれでは、あまりにもあっけなさすぎるではないか?
「腑に落ちぬの…」
「ええ。」
大全そして舞羅もまた、そんな疑念が頭をよぎり、今は暗黒龍王の消滅したドーム内を見まわした。
床には、暗黒体を蒸発させながら元に還っていく総司令官の体の“残り”が落ちている。二人は、それぞれ目を閉じると、しばらくヤツの気配を追ってみるのだった。
 が、二人には何も感じられなかった。
この世の空間をよどませる、あの強烈な邪気というものが、少なくともこの時点では、この地上から完全に消え去っている事は、何の疑いの余地も無かった。二人は目を開けお互い目を合わせると、うなずきながらその意味するものを理解した。


 「χλΩζστηπ………」
 みんなが見守る中、舞羅は呪文を唱えながら手に持ったカプセルを開け、床に横たわる紫蘭王子に中身を降り注いだ。すると、すぐに液体は気化し、キラキラと輝いて体を包み込みながら、静かに紫蘭の中へと吸収されていくのだった。
 そして次に愛羅が、薬箱から聴診器を取り出して、紫蘭の体を診察しはじめた。
 「ふーっ、大丈夫、どこも異常は無いでちゅよ。」
愛羅は、安堵のため息をついて、王子の無事をみんなに告げた。
 「どうだぁ紫蘭、魂が元に戻った気分は?」
雷羅が、しゃがみ込み顔をのぞき込んだ。
 紫蘭は、ゆっくりと目を開け体を起こそうとしたが、
「…………◇▽☆??!」
めまいを覚え、頭を押さえてしまった。
「お、おい! どうした紫蘭?」
雷羅は、思わずその肩を支えた。
 「雷羅……、王子は、しばらくの間魂が二つに分かれ、それぞれが独立した存在だったのです。それがまた融合し、一つの球体を形作るのですから、完全に元に戻るには数日かかるのですよ、おそらく。」
後ろから、舞羅が説明した。
「なんだ、そういうコトかあ。ま、なんにしても、元に戻るんなら良かったじゃねえか、な、紫蘭!」
そう言うと、雷羅はバン、バンと紫蘭の肩を叩いてやった。
 こうして、
「良かったな、紫蘭。」
「うむ、めでたいのう。」
「おめでとさんや♪」
と、大地たちも、口々に祝福の喜びを表した。
 そして未来も、
「よ、良かったですね。」
と、少し離れた所から控えめに声をかけた。
 「さてと、暗黒龍王を倒し、紫蘭どのの魂も無事に取り戻したと言うことで……、いよいよ、岩戸を開けてみようかの!」


 紫蘭は、孔明の両親の作った装置に接続されていた王冠をかぶると、もともとそれが収められていた天の岩戸の左横にある、公衆電話ほどのボックスに入った。
そして、目の前の赤いスイッチを押して、
「……………!!!!」
と、体内より気を発した!
 その横で大地たち一行は、岩戸の前に立ち開門の時を待つのだった。
この時雷羅は、族長ンタラチュラの首根っこを捕まえたまま、そして、一時はひん死の状態かと思われた孔明の両親も、しかしさすがイグアノ族、包帯グルグル巻き状態ながらも大地や未来にその体を支えられながら、しっかり立っていた。
 「オレ…、岩戸って言うから昔の神話みたいに、扉は岩で出来てるのかと思ってたぜ…。しっかし、宇宙鎮尊(おおぞらしずめのみこと)って人、ホントは、ずいぶん軽薄な人間だったんじゃないのかあ〜?
 見ろよ、上のあの看板! 何が“おいでませ”だよ、観光地の温泉じゃないっつーの!」
大地は半分呆れたように、白銀に輝く扉を見上げた。
「たしかにねー……。でも、この向こうにある“ほろびの大地”って、いったいどんなとこかしら。」
そして未来は、少しワクアクしていた。
「さあなあ、なんせ、ここを作った宇宙鎮尊以来、今まで誰も中に入ったことねえんだからな。」
「ここを通らなきゃ行けない場所でちゅから、古代の地底都市とか、海底都市じゃないでちゅか、きっと?」
「ええ………、かもしれませんね。なんにせよ、すぐに分かりますわ……」
姉妹も荘厳な気持ちで扉を見上げ、その時を待った。
 彼女たち、そして紫蘭、いや、それは彼らだけではなく、この時代の全ての人々にとって、そこは、遙かなる神話の世界に通じる、荘厳かつ神聖な場所なのだ!
 紫蘭のかぶる王冠は、彼の“気”により次第に白銀に発光し、不思議な明滅を繰り返していた。
 そして!
 チーン!
電子レンジの“出来上がり”のような安っぽい音とともに、紫蘭の魂が岩戸により確認された!
 直後、
 ゴ、ゴゴゴ、ゴ………
岩戸は、レンジ音とは対照的に厳かな響きを立て、左右にゆっくりと、ゆっ……くりと開き始めた。

 こうして大地たちは、今、ついに………、今ついに“核心”へと、一歩その足を踏み入れた!!!