第十五章 あっけない結末?その1
十五、あっけない結末 その1

 「ここが、飛鳥……」
大地は目の前にそびえる、ごつごつした黒い断崖を見上げた。
 一行はその下の、幅二十メートルほどの小さな砂浜にボートをつけ、ついに島へ上陸したのだった。
「実は、この崖の向こうに、天の岩戸へ通じる小さな港があるのです。でもそこはおそらく、潜水艦に乗ってきたイグアノ兵が警戒しているはずです。小さな潜水艦ですから、多くてもせいぜい十数人ほどだとは思うのですが、ここで敵にバレテてしまっては、元も子もありませんからね。」
「詳しいんですね? ここに来た事あるんですか、舞羅さん?」
大地の左側に下り立った未来は、あたりを見回しながら聞いた。
 するとすぐに雷羅が、それに対抗するかのように大地の右側に降り立ち、
「大地ぃ、あたしら姉妹はさあ〜、小さい時から先代様につれられて、何度かこの島に遊びに来てるんだよ〜。」
と言いながら、その右腕に両手を絡めた。
「むっ、何やってるのよ雷羅さん!」
 未来は、慌てて雷羅の手を押しやった。
「な、なんだあ、ほんとムカつく女だな! やる気かてめえ!」
「なによ!」
 目の前でまたまた火花を散らす二人に、
「お、おいおい、なにやってんだよ、ここに来てまたケンカかよ、も〜〜。」
大地はあきれながらも、その間に割って入り引き離した。
 するとそこへ、紫蘭がサッと近づき、雷羅の手を取ると砂浜の右端へ引っ張っていった。
「な、なんだよ、紫蘭、まだあいつと決着を………」
「……………………!」
紫蘭はその抗議を無視すると、無言のまま崖の横を指さした。
 見るとそこには、幅五十センチ程の小さな段差があり、その段差はそのまま斜め上へと道のように続いていた。
「ああ、そうか! そうそう紫蘭、あたしら昔、ここから港へ行き来して遊んだんだよな!」
雷羅は、がけの上を見上げた。
 すると、その後ろからチョコチョコと歩いてきた愛羅が、
「ようし、さっそくここから登るでちゅう〜♪!!」
と、さっさとその崖を登りだした。
「ま、まてよ、愛羅! コラ、一人で勝手に……」
身軽に上まで登っていく妹に、雷羅も紫蘭とともに仕方なく後を追った。
 そして大地と未来、舞羅も、その後に続き、自然が形作ったこの不安定な急峻を登り始めたのだった。

 一方ボートの所では、
 「あ、あのー………、オラたち、やっぱ、もう財宝はいいですズラ………。一応、契約はここまでズラから、も、申し訳ないけど、オラたちこれで引き返させてもらいますズラ。は、ははは……」
と、海賊船船長が、伝説の島に怯えながら大全にぺこぺこと頭を下げていた。
 彼らは、この島に財宝があると思い込み、喜んで大地たち一行を連れてきたものの、船を失うというあまりのすごい経験に加え、今またこの島に、あの史上最強と言われるイグアノ兵が十数人もいると聞いて、もうすっかりビビッてしまっていたのだ。
「なんのなんの、すっかりお世話かけ申したな。瀬戸内水軍どの、船員のみなさん! では、くれぐれもお気をつけて帰られよ。」
大全は、船長そして船員に丁寧に礼を言い別れを告げると、大地たちの登る坂道へと向かった。
 「みなさん、“死ぬまでお元気で”ズラ〜……」
と手を振る海賊たち。
大地たちも、
「お世話になりました〜!」
と、波間に離れゆくボートに手を振った。


 一行は、崖の上へたどり着くと、身を伏せながら向こう側を見下ろした。
すると、この崖の向こう側にも海が広がっていて、島本体は右手奥に広がっていた。つまり、この崖は島の岬部分を形作っていたのだ。
 そして、この崖の真下には大きな広場があり、さらに内陸に向けても、いくつもの大きな広場と朽ち果てた建物群が点在していた。さらにこの崖の真下の広場の先には、コの字型の小さな港があって、そこは沖合に、陸と平行に設置された防波堤で守られているのだった。
「舞羅さんの、言ったとおりでしたね。」
その港の一角には潜水艦が停泊し、岸壁では、十数名のイグアノ兵が沖合を双眼鏡で見ながら、警戒していた。
 「ほら、三つ目の広場から、海沿いに真っ直ぐ向こうへ延びる道があるでちょ、大地お兄ちゃま?」
「うん? ああ、まるで滑走路のように広くて長い道だけど、その先は……ああっ、向こうに大きな建物が!! も、もしかして、あそこかい? 愛羅ちゃん、オレたちの目指す“天の岩戸”は?」
大地は、興奮してその建物を見つめた!
 「いいえ。あそこは、王家と我が神司家の共同別荘ですわ、大地さま。」
「い?」
「ああ、思い出すでちゅ、あの別荘で過ごした懐かしい日々……」
愛羅の頭に、王家の人々や家族みんなで遊んだ、あの夏の日々がよみがえる。
 「コラコラ愛羅、紛らわしいこと言ってんじゃねーよ。大地、あたしたちの目指す“天の岩戸”は、ほら、あっちだぜ!」
雷羅が指さした方、そこは三つ目の広場からさらに内陸に進んだ所で、そこもまた朽ち果てた建物群や何かの残骸らしきものが散らばる、無人の広場だった。

 「行こうぜ!」
 大地たちは雷羅を先頭に、警備兵にばれないように身を伏せながら、崖の上の木立の中を向こう側へと回り込んで、先の広場へと下った。
「この先に“天の岩戸”が………」
「はい、大地様。ここから先は立入禁止でしたから、私たちも実際に行ったことはないのですが………。言い伝えでは、この広場を通って突き当たりに、岩戸への入り口があるそうです。」
一行は、あたりの様子を伺いながら、朽ち果てたビル群、そしてなにかの機械やタンク、パイプ類が草木に埋もれ散乱する広場へと足を踏み入れた。
 「な、なんだここは………。なにかの工場跡みたいな……??」
あたりを見回しながら進む、大地たち。
 そして広場を半分ほど過ぎたとき、
「大地、あ、あれ……!!」
未来は、半分砂に埋もれた、ある大きな物体を指さした!
 そこには、白や黒のタイルで三次元的に覆われた大きな物体が、崩れるようにして砂に埋もれていたのだ。そしてそれは、またまた大地たちがテレビ中継で幾度となく見ていたものに、よく似ているのだった! それは!!!
「す、す、スペースシャトルぅ??!!!!」
「な、なんじゃと…!!」
そう、それは白や黒の耐熱セラミックタイルに覆われた、宇宙を行き来出来る飛行船、スペースシャトルだったのだ!!!!
「はあー…………………………」
大地たちはシャトルに近づき、ため息にも似た声を上げながら、その船体を見上げた!
 一方その後ろでは、それとは対照的に、
「すぺーす…しゃとるう? なんだそりゃ?」
と、雷羅たちが、初めて聞く名称に首をかしげ、顔を見合わせた。
 紫蘭や姉妹は、子供の頃から見慣れたこの“古代遺跡の遺物”に、そんな名前があるというのさえ、今初めて知ったのだった。
 「スペースシャトルってのは、宇宙に飛び出す乗り物だよ。……てことは、ここは、NASAのどっかの宇宙基地かあ……?」
大地は、あらためて回りを見回すした。
 そう、そのつもりでよく見れば、そこいらに散乱する機械群の中にはロケットの残骸らしきものがあり、広場の端にある壊れた大きなボールのようなものは液体燃料貯蔵タンクであり、岬に近い方所に立つ朽ち果てた建物は、ロケット発射台のようでもあった!
 が、
「待って大地!! 違うよ、NASAじゃない!!!!!」
未来が、船体のタイルにかすかに残る文字を指さした!
「ん?……」
大地は、それを確かめるように、目を細めた。
 「N…A…SD……A、NASDA………NASDA!? ナスダ! って、たしか日本の………?!」
驚き、未来の顔を見る大地!
「そうよ大地! NASDA、つまり日本の“宇宙開発事業団”のシャトルなのよこれは!」
未来は興奮し、目を輝かせた!
 「でも、変ね?……確か日本のシャトルって、あたしたちの時代では、だいぶ前に開発ストップされたはずだけど……。結局また再開したのかな??? それともシャトルじゃなくて、超音速ジェット機の背中に乗せて飛ばす方式の“スペースプレーン”かも…………?! あ!!!」
 何かに納得する、未来!
「そうか! 崖の上からさっき見た、王家の別荘まで続く海沿いの道ってのは、ひょっとして道じゃなくて本当の滑走路?!! そう……、そうよ、これは“日本製”の有人宇宙往還機、“宇宙船”なのよ!!」
未来はすっかり興奮して、その機体の回りをぐるぐる歩きながら見回した。
 「日本の……宇宙船〜?!」
「日本の宇宙船とな?」
驚き、顔を見合わる大地と大全!
 そう、それは自分たちの時代において、近い将来実現化しようと、まだ計画が進められている段階に過ぎない乗り物だったのだ!
「どうりで…、見慣れたスペースシャトルとは、な〜んかイメージ違うと思ったはずだぜ…………。あ! 待てよ未来! てことはだ、つまり、もし、宇宙船発射基地が、オレたちの時代と同じ場所のまんまだとしたら、この島は、ひょっとして、その………」
あることに、はっと気付く大地。そしてそれは、大全と未来も同じだった!!
 『種子島?!』
三人は一斉に声を上げた!
 大地たちは、今自分たちがどこにいるのかを、初めて知った!
そう、ここは“種子島宇宙センター”だったのだ! 一行が上陸した場所、それはかつて種子島宇宙センターのJ−1やH−2Aなどの大型ロケットを発射していた“大崎射場”の裏側であり、別荘のある場所と言うのは、小型ロケットを発射していた“竹崎射場”に位置していたのだ! そして大地たちが目指す場所は、かつて、液体エンジン試験場として使われていた所だったのだ!!
 「おっどろいたあ! まさか、飛鳥が種子島だったなんて。しかも、スペースプレーンの滑走路まであったなんて!?」
「…てことはだ、つまり、オレたちの目指す“天地核”の封印された“滅びの大地”ってのは、種子島の奥にあったのか!?」
大地たちは、遠くに広がる島の山々を見渡した。

 「そうですか……。ここはみなさんのご存じの島でしたか……。そう言えば、この島に関して、王家にこんな言い伝えがあります。
 その昔ここは、先ほど口にされた“ニポン”と言う国に属し、宇宙と行き来できる場所でした。でも最終戦争が起きた時、同時に起こった地殻変動により、ニポンは、その大部分が海中に沈んでしまったのだそうです。そして唯一ここだけは、なんとか沈没を免れた、と……」
 「日本が沈んだあ?! 戦争で?!」
舞羅の言葉に、愕然とする大地たち。
 彼らは、また一つ重大な事実を知ったのだった!
「とにかく……、沈んだのが戦争のせいなのか、はたまた何かの天変地異が重なったのかは分かりませんが、この時、地軸がずれ、ニポンだけでなく、アメ・リーカとかいう大陸も沈んでしまったそうです。そして逆に、いくつもの新たな陸地が、海底より隆起した…と、伝えられています。」
「ええっ、アメリカ大陸も……! え? ちょっと待って、待って待って!!! ここのシャトルが最終戦争当時のものだとしたら……、何? 最終戦争は、私たちの時代の、そう遠い未来じゃ無いってことじゃない!」
 そう、その推測は正しかった!
未来の言うとおり、最終戦争は彼女らの住んでいた時代の遠い未来の話ではなく、実は、“かなり近い”未来の話だったのだ!!
 が、
「けっ! 今はどうでもいいじゃねえか、そんなこと! それより、さあ急ごうぜ! もしここで暗黒龍王に岩戸を開かれたら、もう最終戦争や天変地異どころじゃないんだからよ!!」
 雷羅は、この突きつけられた事実に愕然呆然とする大地たちに、次への行動を促した! 


 「急げ、急ぐのだ! 奴らがここに来る前に、何としても紫蘭の魂を復元するのだ!! 」
「はっ、ただ今、再生率九十九・九九九九パーセント、金ならすでに純金でございます、暗黒龍王様♪ この分では、あと数分で、紫蘭王子の魂残り半分の再生が、完了するものと思われます♪♪」
「よ、ようし! では、いよいよ天の岩戸が……♪」
必死にダイヤルを合わせる張飛とアグネスの横で、総司令官と族長はニコニコしながら、自動販売機ほどの大きさの“霊波動3Dモニター”を取り囲んで見ていた。
 中では、再生された紫蘭の魂の“霊波動”が、三次元でモニターされ、複雑なデコボコを形作りながら揺らめいているのだ。そして、魂が再生されるにつれその三次元画像は、アメーバをたくさん結合させたような、複雑怪奇な形へと変わっていたのだった。
 「しかしこれが、紫蘭王子の魂の“形”にございますか。なにやら、大変複雑な形をしておりまするなあ〜……」
「うむ、余にとっても、驚きですらある。この“宇宙の意志”により創造されし“かけら”どもの魂が、ここまで複雑な波動を持った生物に、進化するとはな……………ん?」
この時、モニターを見つめる二人の目の前に、さらに驚くべき映像が映し出された!
 「暗黒龍王様、こ、これは……!!」
「なん………………………だ………と??!!!」
なんと、それまで複雑かつ無秩序に収縮していた波動が、ゆっくりと……、ゆっくりとではあるが、ある“完全な形”に収束し始めたのだ!
 その、形とは??!!!
「え……………円?!! なにい? 紫蘭の魂は純粋な“円”!、濁り無き、完全なる球体だというのかあっ」!!」
愕然とする総司令官!
 そう、そこに新たに現れた映像、それは、黄金に光り輝く完全な球体だったのだ!!
「し、信じられぬ、信じられぬ、信じられぬ!!! たかが人間ごときが、たかが宇宙意志の“かけら”より進化せし下等生物が、このような、汚れ無き純粋な形に成長することが、できるというのかあ!!!
 たとえそれが、宇宙の意志により選ばれし“賢者の末裔”だとしても、これほどの、これほどの……………………」
総司令官は、驚き、そして絶句した!
 紫蘭の、この魂の形は、暗黒龍王である彼にとって信じられぬ完全さを形作っていた!
“完全なる球体”!
それは、この宇宙の意志以外、いや、この宇宙を持ってしても“暗黒の王である自分がその中に存在するために”なし得るはずもない完全な形だったのだ!!
「宇宙自身に匹敵する………魂の……存在を………、内なるものに、自ら進化させるとは………」
総司令官は、まるで“時”と言うものを忘れたかのように、その球体を見つめ固まった。

 その時!
 ガッシャーーーーーーン!
公明の父そして母が、自分たちの手で作り、そして今まで必死にダイヤル調整をしていた装置に、体ごと飛び込んだ!
 と!
 ボン、ボボン、ボン、ボボーーーーーーーーーーンン!!
装置は二人の巨体に押しつぶされ、それまで中でブンブンうなっていた何百本という真空管が、次々と炸裂した!
 「ああっ? な、何をする貴様らーーーーーー!!!」
驚く総司令官と族長!
 その目の前で夫婦は、熱と電流で体を焦がしながら叫んだ!
「よ、よー聞け二人とも……! オレら夫婦が…今までおとなしゅう装置動かしてたんは、大地さんたちがここに来るまでの時間稼ぎ……だったんやあ!」
「そーです! でも……、間に合わなかった今となっては、あたしら……もう、こうするしかないんです!!」
「な、なにいーーーーーー!!」
瞬時に、総司令官の表情が怒りへと変わった!!
 そして孔明が、
「と、父ちゃん、母ちゃーーーーーん!!」
二人を見て、籠の中から叫んだ!
 「孔明…、堪忍やで、お前を助けられなくて…」
「孔明ちゃん、ごめんな、お母ちゃんら……一足先に……」
二人は、焦げながら薄れゆく意識の中、必死に孔明へ詫びた。
 そこへ!
「おおーーーーのれーーーーーーー!!!」
 ブオオーーーーーーーーッ!!!!
総司令官は、体中から怒りの暗黒体を吹き出し、瞬時に本来の姿へと戻った!
 そして!!
「キサマらああああ〜〜〜っ! こうなれば、おめおめ、そのまま死なせはせぬぞ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
ドームいっぱいにその体を膨らませた龍王は、左手で、黒こげの両親をわしづかみにして持ち上げた!
 「よくも、よくもよくも、余をたばかってくれたなあ!!! 許さぬ! こうなったら貴様らが死ぬ前に、目の前でガキをひねり殺して見せねば、気が済まぬわああ!!!!」
 言うや、
 バキバキイ!
と、暗黒龍王は右手で籠をぶち抜き、孔明をつかみだした!
「ギャーーーーーーー ー!!」
締め上げられ、悲鳴を上げる孔明!!!
「こ、孔明ーーーーーー!!」
両親の悲痛な叫びがドームを包む!!
 孔明は、今にもつぶれそうに体を絞り上げられた!!

 この時!
「またそんなことやってんのかよ、このワンパターン野郎があーっ!」
聞き覚えのある声が、ドームに響いた!
と同時に、ドームへ通じるトンネルの奥から声の主、大地! が中へと飛び込んできた!
 大地は背中の草薙の剣を抜くや、すぐさま強烈な気を剣に乗せ、
「ぐわあっ!」
「がはっ!?」
飛びかかる二人の護衛イグアノ兵を、ドームの反対側へ吹っ飛ばした!
今や巨漢のイグアノ兵と言えど、真の力を身につけた大地にとっては敵ではないのだ!
 そして大地の体は、
「いやあああーーーーーーーーっ!!」
まばゆいばかりに光り輝かせた正義の剣と共に、宙を舞った!
 次の瞬間!
 ビシュウ!
切り裂かれる暗黒体!!
「ぐわあーーーーーっ、き、貴様あ!!!」
 が、間一髪、
暗黒龍王は、剣が自分の本体に届く寸前、とっさに孔明とその両親を放り出し身を避けていたのだ! 
「ちいい!!!」
舌打ちしながら、床へ着地する大地!
 その近くに孔明たち親子も、
 ドサ・ドサア!
と、音を立てて落ちてきた!

 「すみません、来るのが遅れて、そんな目に遭わせてしまって!」
大地は、うずくまる親子に声を掛けた!
「だ、大地さん!……い、いいえ、そんな…」
横たわったままの苦しい息の中、孔明の父張飛が弱々しく答えた。そして母親アグネスも、涙を流しながらうなずくのだった。
 そして、
「だ、大地兄ちーーゃん!!」
と、孔明がすぐ起きあがった!
 彼は締め付けられただけで、幸い深いケガは負っていなかったのだ。
「おう、無事だったか孔明! ようし、親父さんたちを連れて、早く出口の方へ行くんだ!」
「う、うん、分かったで!」
急いで孔明が両親のそばへ寄ると、そこへ素早く、紫蘭や舞羅姉妹、そして未来と大全も駆けつけ、みんなで両親をトンネルの方へと引きずった。
 この時、
 「ま、待ってください、あれを……あれを……………」
と、引きずられながら張飛が、今、自分たちが壊した装置の方を息も絶え絶えに指さした。
 見るとそこには、破壊され煙を上げる部品の中心で、光り輝く握り拳ほどのカプセルが姿を現していた。
「あ、あの中に…、紫蘭王子の…魂が……王子の魂が………!!」
『…………!!!!!』
驚き、顔を見合わせる一同!
 そう、それはまさしく紫蘭にとって、暗黒龍王に盗まれし“自分自身”の魂が封じ込められたものだったのだ!
「わ、分かったで父ちゃん、任しとき!」
孔明が、カプセル目がけ走り出した。
 しかし!
 「させるかあ!!!!!!!」
暗黒龍王は尻尾を一閃! まるで木の葉のごとく孔明の体を、
 バシイ!
とはじき飛ばした!
「わああああ〜!」
ゴロゴロと床を転がる孔明。
 それを、
「大丈夫か!」
と、大地が無事受け止めた!
 「孔明、カプセルは後回しだ! 急いで親父さんたちと出口の方に逃げろ! 今は三人を助け、コイツを倒すのが先だあ!!」
大地は孔明を走らせ、一行が無事トンネルまでたどり着いたのを確認する間もなく、再び上空に揺らめく暗黒の王に対峙した!!
 堂々と! 力強く!!!!

 「二人の様子は、どうじゃ?!」
「多分、大丈夫でちゅ! しっかりするでちゅよ、二人とも! すぐ応急手当をしてあげまちゅから!!」
一行は、張飛とアグネスをトンネルの中に運び込み床へ寝かせた。そしてすぐに愛羅が背中から薬箱を下ろし、中から薬や包帯を取りだして二人の手当を始めたのだった。
 一方雷羅は、それを見届けると、
「ようし、あたしも……!!」
と、きびすを返し、すぐまたドーム内に飛び込もうとした!
 が、
「待つのじゃ!!」
「じ、じっちゃん?! どうして?!!!」
その手をつかみ、大全が止めた!
 「今、ワシらが出ても足手まといじゃ。今は、全てを大地にゆだねるのじゃ!!」
「だ、だけど………」
 しかし、それは大全の言うことが正しかった!
今彼らに出来ることと言えば、唯一、大地が勝つことを祈ることだけなのだ!
 一行は、トンネル出口の所から、今まさに始まらんとする再びの対決を、固唾を飲んで見守った。そしてそれは、イグアノ族族長と、その部下二人もまた同じだった!
「おじゃまします!」
吉本のギャグのようなセリフを言いながら、イグアノ族族長、そして大地から当て身を受けた二人の部下もまた、この戦いに巻き込まれるのを避けるため、大全たちのいるトンネルに飛び込んで来たのだった。
 そして大全たちとともに、このR(ラウンド)2のゴングが打ち鳴らされた戦いを、
「あうあうあう……」
驚愕の目で見つめた!