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十四、魔の三角海域! 謎の巨大海底生物!!
「はあー……、あたし、朝からたたき起こされた感じで、気分悪いよ大地〜〜……」
「あ、あたしなんか、その上、とっときの“必殺技”を出せなかったんで、もっと気分悪いんだぜぇ、大地ィ〜〜――。♪♪」
未来に負けじと、雷羅は大地に甘い声を出してみせた。
今一行は、あの激烈(?)な海戦を終えて、海賊船“美少年丸”操舵室後ろの客室で、少し遅い朝食を食べているのだった。
「雷羅、悪いけど、その前の醤油とってくれるか?」
大地は目玉焼きにかけようと、雷羅の目の前にある醤油差しを指さした。
「なに言ってんの大地♪ 悪くない、悪くない♪ あいよ。♪」
雷羅は、ニコニコしながら醤油差しに手を伸ばした。
すると、
「あ、雷羅さん、いい、いい、座ってて。あたしがとってあげるよ大地。」
と、未来が雷羅を制し、椅子から腰を浮かした。
「あ、てめえ、何しやがんだよ、大地はあたしに頼んで……」
「いいのいいの、あたしが、大地の横に座ってるんだから。ね、大地?」
「う、うん……?」
とまどったような表情の大地に、未来はニコッと笑い、そのまま醤油に手を伸ばした。
が、その手を雷羅が、
ガシッ!
と押さえ、立ち上がった!
「な、何するの?!」
「何するのじゃねえ! てめえ〜、もう我慢できねえ! だいたい、何なんだ最近のお前はよお! こっちの世界に来て、最初は紫蘭ベッタリだったくせに、何で今は、大地にそんなベタベタくっついてんだよおっ!!!!」
それはみんなも気になっていたらしく、一同の箸の動きが一斉に止まった。
「!!……だ、だって、あたし、大地のいいなずけ……だもん、当然じゃない! だから雷羅さんに、とやかく言われる筋合い無いじゃん!」
「!!!」
この言葉に、雷羅は一瞬動揺した。
そしてその場を、何とも言えないような気まずいような雰囲気が包むのだった。
雷羅は黙って、そのまま数秒間未来とにらみ合うと、
「そ、そうか、そういやそうだったよな。……ッ…!」
と、舌打ちともつかぬ口の動きをして、払いのけるようにその手を離した。
未来は、
「ふふん!」
と、勝ち誇ったような表情で醤油を持ち上げると、なおも言った。
「それより雷羅さん、あなたこそもう少し、紫蘭王子のお世話をしたらどうなの?」
「な、何をー?!」
再び未来をにらむ、雷羅!
「だって、雷羅さんこそ王子のいいなずけでしょ? いつもいつもほっといて、あれじゃ、王子がかわいそうじゃない!!」
バーン!
雷羅はテーブルを両手で叩き、体を半分乗り出すようにして未来を指さした! 上に置かれたみんなの食事が、中身を飛ばしながら踊る!!
「うるせえ! それこそ、てめえに言われる筋合いはねえ! そうだよ、紫蘭はあたしのいいなずけさ! それがどうした? だったらあたしが、どう行動しようと勝手じゃねーか!!」
「か、勝手とは何よ、勝手とは! あなたがそんなんじゃ、あたしたちが元の世界に帰った後の王子が、思いやられるわよ!」
二人はまたまた、テーブルを挟んで火花を散らした!
「ああ? そんなもん、お前の知ったこっちゃねーだろが! お前こそあっちでベタベタ、こっちでベタベタで、節操がねえんじゃねえかあ? あーっ、大地こそかわいそうだぜ!!」
「きーー! 何ですってえ!」
未来は、今大地に渡そうとした醤油を、
「てんめえーーーーっ!」
雷雷は、目の前のみそ汁を相手に投げつけた!
こうして客室は、
パリーン、ベシャーン!
と、食器と食事が飛び交う戦場と変わったのだった!
『あ、あ〜…………』
こうなったらほっとくしかないと、大地達はケンカする二人を残し、外に避難した。
「ねえ舞羅お姉ちゃま、大地お兄ちゃまモテるでちゅねえ? 二人で取り合いしてまちゅ。うぷぷ♪♪」
愛羅は、客室の壁に背もたれしてしゃがみながら、隣で立ったまま背もたれている姉に話しかけた。
「違うのよ、愛羅ちゃん……。そうじゃないのよ……、そうじゃ………」
舞羅は、複雑そうに微笑んだ。
「??? どうちがうでちゅか?」
「そうねえ………、愛羅ちゃんも、もう少し大きくなって、好きな人が出来れば分かりますよ。」
「?????? ふーん…………??????」
このやりとりに、
「…………………………」
「!!」
手すりにもたれかかっていた大地と紫蘭は、顔を見合わせ、また気まずそうに目をそらした。
そして、
「いやいや、青春じゃのう! かっかっか!」
と、一人大全だけは、海原を眺めながら高笑いしたのだった。
この時、
ズドーーーーーーーーーーーン!!
強烈な衝撃と共に、“何か”が船を突き抜けた?!
「な、なんだあ?」
慌てて手すりや船室にしがみつく大地たち! 未来と雷羅もまた何事かと、ケンカをやめて外へ飛び出した!!
一方操舵室では、
「し、しまったズラ! ついうっかり、魔の三角海域に入ってしまったズラあ!!!」
と、美少年丸船長瀬戸内水軍が叫び、大慌てで舵を右に切り返した!
しかし、
バスン、ドスン!
と、またもや続けて衝撃が襲った!
この衝撃、船体を突き抜けるたびに、
シュウッ!
と、音をたて、沸き上がる水蒸気と共に、船内に木の焦げた臭いを漂わせた!!
「今度は一体、何が起こったんだあ?」
衝撃の正体を確かめようと、大地たちはあたりを見回した!
すると、船が急旋回で進路を九十度変えた時、
「あれは?!」
水平線に、キラリと光る物を発見した!
と、その瞬間!
ドスン!
まばゆい光の矢が船腹を貫き、またもや衝撃が船を襲った!
シュウウ………
そして立ちこめる、木の蒸気!
「これは……飛鳥の“ご来光”ですわ!!」
「こ、これが、ご来光?! ご来光って……レーザービームのことなのね?!!」
舞羅と未来が叫んだ!
そう、それは水平の彼方より放たれる、超強力なレーザービームだったのだ!
ビームは船体を突き抜け、瞬時に船体を蒸発させると、直径数メートルの風穴を開けた!
まるでボロボロのスポンジのようになり、向こう側を見通せる穴をいくつも開けた木造帆船が、傾きながら碇を下ろし、波間にユラユラ停泊していた。
「お、オラの、オラの美少年丸があ〜〜〜―………」
「船長〜、お察し申し上げます。ううっ…」
デッキの上で船長、そして船員たちは、あまりにも変わり果てた我が船を目の当たりにし、泣き崩れていた。無理もない、ほんのわずかの油断で自慢の海賊帆船美少年丸が、今やただの産業廃棄物になってしまったのだから!
「ヒック、ヒック、オラの、オラの〜〜〜………………………ん?…………ま、まてよ?」
船長は、何かを思いついた様子で急に泣きやむと、自分の懐に手を突っ込んだ。
「ま、いっか。この百万マネーで、新しい船を買うズラよ♪」
それは、渡し賃にもらった金!
船長は、その金を懐から出すと、
「わーははは、どーせこれで、あたらしい船を買うズラよ〜〜〜〜♪♪」
と、まるで阿波踊りのように踊り出した。
「そ、それもそっすね――♪♪」
こうして一転、船乗り達は全員、陽気に阿波踊りを始めたのだった。
「なるほど、あれが“おおもと”というわけじゃな、舞羅どの?」
「はい。あの、左右に高くそびえる塔が、飛鳥を守る灯台、“ご来光”……つまり、レーザービームの発射装置なのです。灯台は、島を三角に取り囲むよういくつも配置され、その内部に入る何者をも阻止するよう、大昔からプログラムされているのです。」
大全たちは、デッキの手すりに寄りかかり、遙か水平線から雲の上に突き出る白い塔を見つめていた。
「何者をも近づけぬ聖域、と言う訳か。」
「はい。飛鳥……、つまり、天の岩戸に近づけるのは、唯一、王家の所有する、渡航用の小さな潜水艦のみなのです。おそらく暗黒龍王たちは、それで渡ったものかと……」
「う〜む………」
大全は、思案顔で腕を組んだ。
そして、その横では大地が、物置から取り出した一本のデッキブラシを、海上に差し出した。
と?!
バシュウ!
瞬時にビームが貫き、その先っぽを蒸発させた!
「ひゃー、す、すげえ! こりゃ、やっぱだめだぜじいちゃん! ここから先は、見えない結界がはってあるようなもんだぜ!」
「これじゃあたしたち、何のためにここまで来たのか分からないわね……やっとたどり着いたのに……」
横で未来が、手すりに頬づえをつきつぶやいた。
すると、さらにその横で、
「けっ、船でこれ以上行けないのは、ハナから知ってたんだ。あたしにとっちゃ、こんなのとっくに計算済みだぜ!」
と、雷羅が
ドン!
と、手すりに“右足”を掛け、威張るようにして腕組みをした!
「計算済みって、なんかいいアイデアでもあるのか、雷羅?」
「かっかっか、もちよお!」
言うや、雷羅は左手のブレスレットに手をかけた!
「あーっ、ば、ばか、こんな所で一体何を………」
「へっへ〜、心配すんなって大地! こいつはただの超音波発生装置さ。見なよ。そこに、イルカの群れが自由に泳いでいるだろう? どーいうことか分かるか? つまりあたしたちも、泳いでいけば大丈夫ってことなのさ♪」
「な、なるほど…!」
一行は、雷羅の言葉に一応納得した。
「てことで、コイツであのイルカちゃんをおびき寄せ、その背中に乗って飛鳥に渡ろうって寸法でい!」
雷羅は、ブレスレットのスイッチを入れた。
キイイイイイン!!!
効果てきめん!
バシャバシャと一斉に騒ぎ出すイルカたち!!
「見たか、この威力! 雷羅様一世一代の大発明、その名も“超音波アニマル制御装置・雷羅スペシャル”でいい!!」
「なるほどお! つまり、海のトリトン作戦ってわけか!」
大地は、船の下を見下ろした。
しかし?
「あのー、雷羅、なんかイルカたち、狂ったように逃げて行くように見えるんだけど?」
「あ、ありゃ? 周波数間違えたかな? 大丈夫、心配すんなって大地、こんなもんチョチョイと調整すりゃ、バッチリだぜ♪ えーと、こうして、こうしてっと…」
「あのー、雷羅さん? ますます暴れて、すっかりイルカ居なくなってしまったんだけど?」
「“イルカいないか”ってかあ、未来? ガハハ、“下手な駄洒落はよしなしゃれ”な〜んちって! まてまて、おかしいな? こうだろ、こうだろ―?」
「あのー、雷羅どの? なんか、でっかいサメの大群が、船の下に集まって来たみたいじゃぞ?」
「なにー? そんなばかな! だって………、あ、そうか、これだ、ここをこうすりゃ………」
「あのー、雷羅? 今度はシャチの群がやって来て、船の横に体当たりしてるようですよ?」
「げげ、何で何で〜???」
「あのー、雷羅お姉ちゃま? 遠くから、おっきいクジラが向かってくるでちゅよ?」
「く、クジラ? え? え? え??」
「▽□◇◯♂♀☆…………!!!」
さらに紫蘭が、声にならない表情で下を指さした!
と、
なんと今度は、巨大イカやタコ、ついには謎の巨大海底生物までが、
ドババ〜〜〜〜〜ン!
と、一気に浮上してきた!!
「ぎょえ〜〜〜〜〜???!!」
そして、直径何メートルもあるイカ足タコ足・謎の足が、
ヌメヌメ、バキバキイ!!
と、船体にからみつき、締め上げ、船を破壊し、
「きゃあ〜〜〜〜〜〜〜!」
さらに、船上の人間に襲いかかった!
いや、それはただ一人、雷羅だけを目指しているようにも見える!
「え?え?え?」
雷羅は、何がなんだか分からないまま固まった!
「いかん、救命ボートに乗り移るのじゃあ!」
「な、なんズラ〜〜〜〜〜?」
みんなは、この予期せぬ……いや、半分予期していた非常事態に、慌ててボートに走った!
が、さっき愛羅が見つけた巨大クジラが、まるで魚雷が突き進むように突進してきて、船の上を目がけ、いや、船の上でまだ固まったままの雷羅目がけ、
ザッパーン!!!
と、大ジャンプした!!!
「え? え? え? ぎょえ〜〜〜―?」
影を落とし、頭上に迫り来るクジラの巨体!!
「バカ、なにボケッとしてるんだよーー!」
大地はあわてて引き返し、雷羅に飛びかかった!
そしてその体を小脇に抱えると、きびすを返し救命ボートへ飛び乗った!
間一髪!
ブワリブワリブワリメリバリィ!!!
巨大クジラは二人をかすめ、船の上に着船! そのまま、美少年丸を粉々に圧砕した!!
こうして船は、哀れ、レーザービームでボロボロに穴を開けられたあげく、イカタコ謎の巨大海底生物に襲われ、さらに巨大シロナガスクジラにボディーアタックされ、完全に海の藻くずと化したのだった!!
「し、信じられない。あたしの作った装置が、こんな失敗をするなんて…」
『いつものことだろ!!』
ブレスレットを見つめる雷羅に、一同があきれて突っ込んだ!
間一髪、大地たちは全員、無事、救命ゴムボートに乗り移り難を逃れていた。
そして、
「いいズラかあ、あの波間に見える島影が飛鳥島ズラ! 野郎ども、力一杯漕ぐズラぞ!」
『へ―――い!!』
と、備え付けの櫂(かい)を使って、一路飛鳥を目指すのだった。
どうやら灯台のレーザーも、海面すれすれの小さな小舟には反応しないらしい?
「なんだ、オレたち、最初からこうすれば良かったんじゃないか!」
「ほんと。何が魔の三角海域よねえ…。」
ボート最後尾に座り、灯台を見ながら文句を言う大地と未来。
そこへ、その前に紫蘭と並んで座っていた雷羅が振り返りった。
「あの、大地、さっきは危ないところを、アリガトな……」
「ん? ああ、気にすんなって雷羅。前にも言ったろ、“雷羅は目が離せない”って。」
そう言うと、大地は、また雷羅にウインクした。
「え? う、うん。。……」
ちょっぴり頬を染める雷羅。
が、それを見ていた未来、
「ほーんと目を離すと危ないのよね、雷羅さんって。あまり大地に迷惑かけないでよね!」
と、ふたりの間に首を突っ込んできた。
「な、何い、未来てめえ、そりゃどういう意味だ!」
「どういう意味もこういう意味も、そういう意味よ!!」
「ててて、てめえ〜〜〜――!」
こうして二人は、また言い合いを始めるのだった。
その前の場所で、
「あ〜あ、また始まったでちゅよ。はあ―〜」
「元は同じ魂の転生体ですのに、困ったもんですわねえ。」
「自分自身と喧嘩してるようなもんじゃからのう〜。」
やれやれといったふうで、あきれる姉妹や大全たち。
するとこの時、紫蘭が、
「……………!」
雷羅の肩に手をかけ、静かに首を左右に振ってみせた。
「し、紫蘭?」
雷羅は、紫蘭の諭すような目に、
「…………………わ、分かったよ。ちぇっ。」
と、おとなしくその誘導に従い前を向いて座り直した。
この時、一瞬、未来は紫蘭と目があった。が、紫蘭はすぐに目をそらし前を向き、未来もまたうつむき目を閉じた。沈んだ表情を見せながら……
そうこうしてる間にも、船員たちが力一杯漕ぐこの船はどんどん前に進み、それにつれ、島影もまたどんどん大きくなっていた。
「ついに来たんだ、オレたち。……そしてまたヤツと……!」
大地は、不気味に浮かぶ黒い島影を見つめつつ、後ろに背負った草薙の剣に手をやった。
大して重くない、しかし“この宇宙の重さと等しい”剣に! |
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