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十三、大海戦、弾岩対小石
長崎出島、この港町は今、空前の不況に見舞われていた。
なぜなら、通る街通る街すべてを破壊する“反逆者紫蘭一味”のために、世界中の経済は壊滅的大打撃を受け、この港町も、荷揚げが完全にストップしていたからなのだ。
しかも、沖合いに軍艦が集結し港を封鎖、小船一艘とて入出航は不可能な状態となっていた。
このため、港は言うに及ばず街中が、職を無くした数万の元港湾労働者のホームレスで溢れ返っているのだった。
彼ら“にわかホームレス”は、この状況に心底憤慨し、例の、凶悪にデフォルメされた手配書を見ながら、
「ひっでーもんだな、しかし、この紫蘭一味ってのは! 都を破壊しただけでは飽きたらず、あちこちの街を破壊してるって言うじゃねーか!」
「うん、まったくもって極悪非道の振る舞いだぜ! 王家開祖の宇宙鎮尊様も、あの世で嘆き悲しんでおられるに違いない!!」
「ニュースでは、だんだんこっちに向かってるって話だぜ!?」
「ああ、それで港も、無期限封鎖だとよ!」
「ちくしょーっ! これじゃホントに飯の食い上げだぜ! うちの母ちゃんは怒って子供つれて実家に帰っちまうし、家賃払えなくて家は追んだされるし、オレたちがこんな目に遭ってるのも、みーーーんなこいつらのせいだ! もしオレがこいつらを見つけたら、絶対ぶっ殺してやるぜ!」
「おうよ! ぶっ殺して魚の餌だ!!」
「そーだそーだ!!!」
と、あちこちで怒りをあらわにしていた!
「ひっでー言われようだぜ、たくう!」
「仕方ないだろ、雷羅。あちこちの街を破壊して来たってのは、事実なんだから。………誰かさんの使う武器のせいで。」
「な、なな、なーに言ってんだよ、大地! あたしはみんなを助けるため、仕方なく武器を使ってやってるんだぜ! それをだなー、…」
「それとこれとは、話が別でちゅよ! 雷羅お姉ちゃまが次々変な欠陥武器さえ出さなきゃ、あたちたちもこんなに評判悪くなってないでちゅ! ほんと、極悪非道のマッドサイエンティストなんでちゅから!!」
「愛羅、て、てめえ〜〜〜〜!」
「みんな静かにして! ここで正体がばれたら大変よ!!」
大地の横に座っていた未来が、三人の間に割って入りたしなめた。
一行は、ホームレスがたむろする、港の見える丘にある公園の一角で、木と木の間に青いビニールシートを張り、その下に堂々と座っていた。
旅と戦いですっかりうす汚れたその身なりは、もう何も変装しないでも完璧に回りの人々(ホームレス)にとけ込んでいて、正体がばれる心配はなかったのだ。
しかし、大地だけは、今までと少し身なりが違っていた。
彼は三日前、先々代王の館を出るとき、先々代王から草薙の剣を収める鞘(さや)を貰った。そして、それを布にくるんでひもを付け、自分の背中に背負っていたのだった。
そしてもう一つ、一行の中には、これまでと違う変化が起こっていた。
その変化とは、この世界に来てからずっと紫蘭と行動を共にしていた未来が、先々代王の館を出てから以後は、ピッタリと大地に寄り添うようになっていたことだった。
そして、それは今も同じだった。
未来は、やはり大地の横に寄り添うようにして座り、その腕に手を回していた。
「ねえ大地、早く暗黒龍王を倒し、天地核ってのを封印して元の世界に返りたいね。」
「う、うん、そだな?!……」
大地は、そんな未来の態度に戸惑いつつも返事をした。
そんな二人の様子を横目で眺めながら、
「……けっ!」
と、思いっきり面白くない、雷羅だった。
そして、その後ろで紫蘭もまた、
「………………」
と、無言のまま、二人を複雑な表情で眺めていたのだった。
「あ、大全おじいちゃまと舞羅お姉ちゃまが、帰ってきたでちゅよ。お帰りなちゃーい♪」
この時愛羅が、ホームレスの人混みでごった返す中から、こっちへ歩いてくる二人を見つけた。
「ただいま愛羅ちゃん、みなさん。ふう〜。」
「あー、くたびれたぞい。」
汗を拭き拭き、二人は青屋根の下に入った。
「で、どうだったんだい首尾は? 先々代様の紹介してくれた“船の手配師”って人には、ちゃんと会えたのかい、じいちゃん?」
水を入れたヒョウタンを手渡しながら、大地が大全に聞いた。
「うむ、なんとかの。さすが、先々代の元召使いと言うだけはある。身なり品格、なかなか立派な人物じゃったぞい。先々代の言うとおり、あれなら充分信用できるじゃろう。……ぷはー、汗をかいた後の水は、うまいのう。」
言いながら、大全はうまそうに水を飲み干した。
「逆にこちらも、大全おじいさまが先々代様とウリ二つだったので、持参しました紹介状、すぐ信用していただけましたのよ♪」
「じゃがの、見ての通り、今は街も港も取り方衆とイグアノ兵で溢れておる。正規に船をチャーターすることは、無理と言うことじゃった。じゃが、ま、金さえ払えば何とかなる船もあるということで、無理に手配を頼んでの………。とりあえず、有り金全部預けて来たわい。」
「えーーーっ、あの金を全部う?」
「ほんとでちゅか?!
雷羅と愛羅が驚く!
二人が驚くのも、無理はなかった。なぜなら、今言った“有り金”とは、先々代王の館を後にしてすぐ次の街の中央郵便局を襲った時のもので、金庫にあった七億六千万マネーという、途方もない金額だったのだ!
「は〜っ、マジかよ姉貴。少なくとも、あの金って、超豪華客船を百隻は買える金額だぜ………」
「仕方ありませんわ…。私たち今はただ、先方様を信用するしかないのです。」
一行がこの街に着くと、大全と舞羅は目立たぬように二人だけで、先々代王の紹介してくれたある人物を訪ねて行ったのだった。
薄汚い路地裏の一角の、ハシゴを渡しただけのような空中回廊をいくつも渡った所に、その男は住んでいた。場所に似合わぬ、三つ揃いのスーツを着込んだ立派な紳士、それが、先々代王の紹介してくれた船の手配師だった。
「で、無事、船の手配が出来たとして、じいちゃん、その連絡方法は?」
「うむ、それじゃが、しばらくここで待つようにと…」
言いかけて、大全はこっちに近づいてくる小男に気づいた。
回りのホームレスより、さらに年期が入ったボロボロの服に、伸び放題で白髪混じりの髪と髭、日焼けと汚れでどす黒い顔にまん丸黒メガネという出で立ちは、ホームレスというより“筋金入りの浮浪者”と言うのがふさわしかった!
男は大全の前で立ち止まると、回りを気にするようにして一行を見回し、小声で話しかけた。
「あんたらズラか? この厳重な警戒のさなか、“百万マネー”というとんでもない大金で、うちの船をチャーターしたいと言うズラはー?」
大地たちは、顔を見合わせた。
まさかこの薄汚い男が、手配師から紹介された人物だと言うのか?
しかも“たった百万マネー”で?!!!
大地たちは、くるりと男に背を向け、ひそひそ話を始めた。
「ひ、ひでえ! てことはヤロー、七億六千万のうち、七億五千九百万マネーもネコババしやがったってことじゃねーか? どこが、信用できる先々代様の元召使いだよ! 姉貴、これじゃ、単なるぼったくりヤローじゃねえか!!」
「あきれたでちゅ!」
「ああっ、やられましたわ!」
騙されたことに気付き、頭を押さえる舞羅。
「う〜むむ!」
大全も、さすがに気まずそうな顔をした。
「ふん、よーく分かったぜ! 先々代さんといい、じいちゃんといい、同じ顔してるだけあって、二人とも“人を見る目がない”んだな! なーにが、“身なり品格、なかなか立派な人物”だよ。見た目でころっと騙されてんじゃねーっつーの、たくう!
しかも、そんなやつが紹介したのが、これまた思いっきり怪しいこのおっさんだぜ……。みんなどう思う?」
「そうねえ……でも、人間見た目じゃ分からないわよ、大地。ねえおじいちゃん?」
「う、うおほほん、そそそ、そうじゃな、未来ちゃん! それにこの男は、それでも“大金”だと言っておるしの………。今更、仕方あるまい?」
この“お客”たちの様子に、男は苛立ちはじめ、ついにしびれを切らした!
「ぬ〜〜〜〜〜ん、え、どうなんズラ?!」
それに対し、
「左様、ワシらがそうじゃ! ゆえあって、どうしてもすぐ港を出ねばならぬのじゃ!」
大全が振り返り、答えた。
「ふーん…。やっぱり、このチャーター話は本当だったズラか……。でも、残念ながら今は、例の極悪非道の国家反逆者“紫蘭王子一味”の騒ぎで、港は出航禁止ズラ。もし無断出航して、それがバレて捕まったら、全員打ち首獄門ズラよ?」
男は、首に手刀をあてて、ぴゅっ! と前に振って見せた。
「そんな事は、百も承知じゃ!」
「なに、知ってる? は〜……、それでも出航したいズラか。……何か、余程の事情があるズラな………。で、行き先はどこズラ?」
「行き先は………」
言いかけて、大全は一同の顔を見渡し、みんながうなずくのを確認し、言った。
「“飛鳥”じゃ!」
「!!!!!!!!!!!」
一瞬にして、男の顔色が変わった。
「な、なにズラッ、“飛鳥”と言ったズラッ? 近づく船は飛鳥の“ご来光”に討たれ必ず沈むと言う、“魔の三角海域”にある、あの伝説の島ズラかあっ?!」
そう実は、飛鳥とは、ここから高速の船で丸一昼夜進んだ所にある、魔の三角海域と船乗りに恐れられる中にある、誰も行ったことのない伝説の島だったのだ!
「そう、その伝説の島ですわ。」
「そんな……、あまりにも危険ズラ!」
男は額に脂汗をにじませ、思わず後ずさりした。
「危険は、覚悟してます。でも、わたくしたち、どうしても飛鳥に渡らねばならないのです! この通り、どうかよろしくお願いします!」
舞羅は深々と頭を下げ、懇願した。
「あ、あんたらが覚悟してるつってもズラなあ〜。オラもオラの船の船員も、あの海域だけはズラなあ〜〜、う〜〜〜〜ん………………」
しばし迷ったあげく、男はしかし、決心を固めた!
「分かったズラ! なんと言っても超大金の百万マネーずら! よし、今夜、港のはずれにボートを用意させとくから、みんなそれに乗るずら!!」
「ありがたい!」
幸いなことに、その夜は曇り空で月も隠れていた。
大地たちは闇に乗じ、用意された小さな手漕ぎボートで出航すると、プランクトン一匹這い出る隙間もないはずの軍艦の間を簡単に通り、沖合いで待つ、とある船にいとも簡単に乗り移ったのだった。
一行が縄ばしごをよじ登ると、目の前には木製の甲板が広がっていた。
「きゃー、思いっきりボロっちい船だぜ!」
「こんなんで、大丈夫でちゅかあ?……」
「これは……ひどいですわね…。」
「うーむ、まっこと古い……」
「あたし、これと同じようなの乗ったことあるよ。ほら大地、たしか中学の修学旅行で行った九州のテーマパークで…」
「ああ、でもありゃ、もっと綺麗だったぜ。」
大地たちは、そのあまりの汚さに船を見回した。
それは、まるで中世から持ってきたような、全長四十メートルほどの中型木造帆船で、しかもかなりの年期が入ったシロモノだったのだ。
船体はボロボロ、甲板もボロボロ、歩くとミシミシときしむのが分かった。
「ひゃひゃひゃひゃひゃ! 心配せんでもええズラ、これは世を忍ぶ仮の姿ズラ! 見た目はボロでも、中身は、古代技術を蘇らせた最新式の木造帆船ズラよ!」
「あ、あんたは……」
大地たちは、目の前に現れた人物を見て驚いた。
顔も声も、確かに昼間の男だったのだが、その格好は、これまた中世から抜け出た、海賊船船長のような姿なのだ。
男は、右手に持ったパイプをゆっくりくゆらせながら、言った。
「ようこそ、我が海賊船美少年丸へ、ズラ!」
「か、海賊船〜?」
そう、見たままそのものズバリ! がこの男の正体だったのだ!!
そしてその後ろには、これまたいかにも海賊船の水夫というような格好をした、二十人ほどの荒くれ男たちが控えていた!
「そうズラ。そしてオラが船長“瀬戸内水軍”(せとうち すいぐん)ズラ!! おい、野郎どもズラ!!!!」
船長のこの合図に、船員たちは待ってましたとばかりに、バララッと大地たちを取り囲んだ!
「だ、だましたなあ!」
雷羅は叫び身構え、大全も杖を、大地は背中の剣に手を掛けた!
しかし船員たちは、そんな一行に薄笑いを浮かべ、手に手にこん棒やナイフを持って近づいて来るのだった!
「ひゃひゃひゃ! オラたちは海賊ズラよ。だまされるお前たちが悪いズラ! 百万マネーをポンと出すお前たちズラ、もっと大金を隠し持ってるに違いないズラ! さあ、命が惜しかったら、残りの有り金全部出せズラ!」
船長は、得意満面にこの獲物たちに命令した!
「残りの有り金……???」
これには、思わず大地たちも顔を見合わせた。
そして十秒後、
「な、何ズラか〜! 手配師に七億六千万マネー払って、今は無一文〜〜〜〜〜〜〜??!!!」
船長は愕然となった!
海賊船船長瀬戸内水軍は、一行がもう無一文で、しかも自分が手配師に七億五千九百万マネーもピンハネされていたことを、今初めて知ったのだ!
「さて、瀬戸内船長どの、無一文と分かった所で、ワシらをどうするかの? 海にでも叩き込むかの!!」
大全は、あまりのショックでデッキにへたり込む船長に迫った!
その後ろで雷羅が、
「やるかあーー!」
と、ブレスレットに手をかけ、大地と紫蘭も身構えた!
「はあ〜〜? ………何を…ズラ?」
力無い声を出しながら、顔を上げる船長。その顔には鼻水が!?
「な、何をって、海賊だろあんたたち? だったら、あたしたちの命を……」
「何をお嬢さん、馬鹿なこと言ってるズラ? オラたちは“心正しい”海賊ズラ、盗みはすれども非道はしないズラよ。今さっきのも、ただの脅しズラ……。はあ〜………」
船長は溜息をつき、力無く立ち上がった。
そして船員たちも囲むのをやめ、
「あ〜あ、やっぱうちの船長だよ……。」
「ハラ減ったあ〜、晩飯でも食おうぜ〜。」
とか言いながら、ゾロゾロと船の中央にある船室に引き返し始めた。
一人、みんなの前に残った船長は、大地たちに聞いた。
「それより、なんであんたたち、そんな大金を持ってたズラ? いや、なんでそんな大金を払ってまで、飛鳥に行きたいんズラか?」
と、今度は十六秒後、
「何ズラか〜〜〜〜! では、あなた方が、反逆者紫蘭王子一味言うズラか〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
船長は、今度は大地たちの正体を聞かされて、またまたひっくり返った。
そして、
「お見それしましたズラ。はは〜〜〜っ!」
船員一同、今度は大地たちの前に集まり、ひれ伏したのだった!
「通る街をことごとく襲う紫蘭王子ご一行こそ、“悪党の鏡”とご尊敬申し上げておりましたズラ! 手配書と、あまりにも違っていたので気づきませず、ご無礼の数々、平に、平にお許しをズラ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!」
船長はぺこぺこと頭を下げながら、大地たちを操舵室後ろの客室に案内した。
そして、豪華な食事を振る舞い、最上級の扱いで一行をもてなすのだった。こうして一行は、またまたご馳走にありつくことが出来たのだ♪
「でもさっきの、聞いたか紫蘭? 紫蘭王子一行は、泥棒の鏡だってさ。ははは………」
「……………☆☆☆☆☆」
「わたくしたち、すっかり悪名が身についてしまいましたわねえ…………」
「でもおかげで、VIP待遇でちゅ♪ 船室も男性用、女性用とそれぞれ分けて用意してくれたでちゅよ♪」
「そーそー、分かれてんだよなあ。ちぇっ!」
「え? ……それどういう意味、雷羅さん?!」
「い? いやあの、なんでもねえよ未来。こっちのこと、こっちの。はは〜…………、そ、それよりさ、船長は何を勘違いしたのか、そうまでしてあたしたちが目指すんだから、飛鳥には、よっぽどすごい財宝があると思ったらしいぜ。」
「よいよい。渡し賃の百万マネーはちゃんと払われとるのじゃからして、最初の約束通り連れていってもらおうではないか。」
「いよいよ、明日は飛鳥かあ………。いったいどんなとこなのかしら…………」
未来は、波がものすごい早さで過ぎ去っていく丸窓の外を眺めた。
この船は、船長が自慢するだけあって、外観とはほど遠い超高速スピードで、真っ暗な海原を疾走していたのだ。
一方、操舵室では、
「目指せ飛鳥! 目指せお宝ずらーーー♪」
と、とっても陽気な船長だった。
こうして一行は、快適とは言えないまでも、その夜は先々代王の屋敷を出て以来、数日ぶりにゆっくりと熟睡したのだった。
そして次の朝早く、
ド、ドーーーーーーーン!!
船体を揺らす激しいショックに、大地たちはベッドから放り出され、目が覚めた!
「何事じゃあ?!」
そして、男性用女性用それぞれの船室から飛び出すと、ハシゴを駆け上り操舵室へと急行した!
「大変ズラ、軍艦が追いかけてきたズラ! 誰も知らないはずなのに、どうしてオラたちのこと、ばれたズラ? どこかに、密告者でもいたと言うズラか?!」
『密告者?!! も、もしや!!……』
この時大地たちは、瞬間的に一人の、“ピンハネ手配師”を思い浮かべた!
そう、反逆者紫蘭一味には、今や“一億マネー”もの懸賞金が付いているのだ! あのあこぎな男が、みすみすそれを見逃すはずないではないか!
「多分…、おそらく…、いや絶対そうに違いない! またもやヤツに、してやられたわい! 昨日金を受け取ってすぐ通報しなかったのは、ワシらが船の上なら、どこにも逃げ場が無いと考えたからじゃろう!!」
「きい〜っ! 無事に帰ったら、あの方に思いっきりお説教して差し上げますわ、わたくし!」
大全はほぞをかみ、舞羅は精いっぱいの怒りを表した!
「せ、説教ねえ〜…」
ポリポリと、頬をかく大地たち。
その間にも、
ドーーーーン!! ドドーーーーン!!!
攻撃はますます激しくなり、船は波にもまれ、前後左右にグラッ、グラッと大きく揺れた!!
「わわっ!」
「きゃーーーー!」
飛び交う悲鳴!
今や海賊船美少年丸の後ろには、数十隻の鋼鉄で出来た戦艦が追いすがり、雨あられと砲撃を繰り返していたのだった!
そして大地は、飛んで来てはそばの海に着弾し水しぶきをあげる砲弾を見て、驚いた!
「い、岩あ〜?!!!」
そう、その砲弾とは………よく見ると、単なるでっかい“岩”だったのだ!!!
「ご存じのように、我が地球王国では、銃火器類が法律で禁止されてます。ですから戦艦の砲弾も、全て岩の弾、“弾岩”なのですわ。」
「だからって、油断すんじゃねーぞ! その発射装置は“超電磁パルス・カタパルト”と言って、火薬より何十倍も強烈なんだからよ!」
「はー…。そりゃすげー……いや、凄いのか凄くないのか、よー分からん武器だな…。」
舞羅と雷羅の説明に、大地は変な感心をした。
この時、
ズッドーン!!!
弾の一つが船体をかすめ、すぐ横の海面に着弾した!
船は、横倒しになるくらい左右に大きく揺れ、みんなは必死に柱にしがみついた。
「うっわー! こりゃヤベえぜ! 船長、大丈夫なのかよ!」
雷羅が叫んだ。
「だ、大丈夫じゃ無いズラあ! 戦艦の方がスピードが速いずら! このままじゃ、やられるのも時間の問題ズラあ〜〜!」
「こっちも、反撃せぬのか?」
「反撃なんて、とっくにやってるズラ! 部下が一生懸命船尾でやってるズラが、こっちは振り子式の投石器しかないズラ! 到底、向こうの“弾岩”にかないっこないズラあ!!」
船長は泣きそうな顔をしながら、それでも弾岩を避けようと、舵を右に左に回し必死のジグザグ走行を行っていた!
そして船尾では、船長が言うように船員たちがロープを引っ張り、でっかいスプーンみたいな物に岩を乗せては後方へ放り上げ、必死に反撃していた!
が、やはり振り子式の悲しさ!
その岩の大部分は、戦艦のずっと手前に“ジャボン”、と情けなく着水してしまい、たまに小さな岩が何とか艦船にに届いても、相手が鋼鉄の船では何の効果も無かったのだ!
逆に、戦艦の放った弾岩は、
ブオオ!
と、うなりをあげ、美少年丸に雨あられと吹っ飛んでくる!
もしこれが一発でも命中すれば、それで確実に一巻の終わりというのは誰の目にも明らかだった!! しかも、この砲撃の間にも船の距離はどんどん縮まりつつあり、その砲撃の正確さは、一発ごとに確実に増しつつあったのだった!
そして、遂に、海賊船は先頭の戦艦の完全射程距離に入った!
それまではなんとか当たらずにいたものの、今まさに数発の弾岩が、海賊船目がけまともに向かってきた!!
これには、必死に投石していた船員たちも、
「うわあ、もう駄目だあーー!!」
遂にあきらめ、船の前の方へ逃げ出した!!
と、その頭上を!?
「キエエエエエエーーーーーーーーッ!!」
ひらりと、大全の体が舞った!
大全は逃げる船員を飛び越え、船尾に立つと、迫り来る最初の弾岩目がけ杖を突き出した!!
「天昇龍剣泌奥義、点心爆裂剣ーー!」
瞬間!
ドーーーーーーーーーーン!!
弾丸は激烈な光を発し、粉々に砕け散った!!
なんと弾岩は、大全の杖が当たった瞬間、その先端より爆発的気を注入され、内部原子が激しく揺さぶられ自爆したのだ!
『おおおっ、し、信じられん!!』
驚く船員たち!
その目の前で、
「そーれ、それそれい♪♪」
ドーン、バガーン!
大全は、次々と迫り来る砲弾を処理して見せるのだった! しかも楽しそうに??
そして、最初に大全の後ろにに追いついた雷羅も、
「ようし、あたしもお♪♪」
と、大全に負けじと腕を振り上げた!
「雷羅様一世一代の大発明、名付けて〜……」
そこへ、大地と紫蘭、そして舞羅と愛羅も追いついた!
「おやめなさい雷羅!」
「でちゅう〜!!」
姉妹はあわてて雷羅に飛びつくと、そのまま後ろへ引き倒した!
「あーっ、何すんだ、てめえらまた邪魔…」
「問答無用ですわ! 昨日も川下りの途中、“これ”で大変な目に遭いましたからね。」
必死に腕を押さえつける、舞羅。
「そうでちゅ! しかも川と違ってここは海でちゅ! 沈没ちても、はい上がる岸はどこにも無いでちゅよ! えーい動くなと言うでちゅ、こうなったら、愛羅ちゃまの“必殺技”かましてやるでちゅう!」
カプ!
「あいた〜〜〜〜〜〜!!」
愛羅は口を大きく開けると、思いっきり姉の腕に噛みついた!
「大地、要領は分かったであろう、ワシと代われ!」
「わ、分かった!」
大全は、大地を自分と入れ替わらせると、飛び来る弾岩の処理を交代した!
そしてその後ろでは紫蘭に、大地が処理を失敗した弾丸を受け持たせたのだった。
こうして大全は自分の手を空けると、今度は、操舵室の横からこっちを目をまん丸くして見ている船員たちに近づいた。
「船員の方々、戦艦に確実に届く石を、一つ飛ばしてくだされ!」
「石を……? へ、へいっ!」
ニヤリと笑う大全に、船員たちは訳が分からないまま二つ返事で投石機へ急ぐと、ロープを引いて、握り拳ほどの石をスプーンに乗せた。
「こ、これでよろしいでしょうか?」
今や、不思議な異生物でも見るかのような畏怖の目つきをして、船員たちは大全に聞いた。
「うむ。十分、十分!」
大全は、ススっとスプーンに近づくと、
石に手をあて、
「ハッアア!!」
瞬間的に大量の気を封入した!
カアアッ!
中心部から、石が発光した!!
石は、外観からは想像もつかないほどの気を中に充電され、まばゆく発光しているのだ!
「よし、ファイヤーぢゃ!!」
それは、艦隊の強烈無比の弾岩に対して、あまりにも小さく、ひ弱な軌跡を描く小石だった!
ポッコ〜ン……
と、打ち出された石は、情けないくらいに、
ヘロヘロヘロ………
と、飛んで行く。
その時先頭の軍艦では艦長が、自分たちの弾岩が海賊船に着弾するにも関わらず、いっこうに敵が沈まないのを不思議に思っていた。
「ど、どうなってるんだ? 弾は確実に届いているのに、なぜ沈没しないのだ?! あんな大爆発が起こっているのに????」
双眼鏡をのぞき込みながら船長が叫んでいると、その視界の中に、今度は
ヘロ・ヘロ
と、こちらに飛んでくる小石を発見した。
「ん? な、なんだあの小石は……? もしかして、また反撃再開か? ぶ、ぶはははは、何だあれは? 弾岩と言うより、ただのちっこい石ではないか?! やつらバカか? そんな小石、いくら撃ってもこの鋼鉄の船には、何の効き目もないぞう! ぎゃはははははは……」
大笑いする船長の目の前で、その“ヘロ・ヘロ”小石は甲板のはずれに、
コキン!
と着弾した。
「ぎゃははは、“コキン”だと、“コキン”! 笑わしてくれるぞ、笑いすぎて、ハラが痛い、“コキン”だと、ぎゃ〜ははははははは、は…は? はあ?!…………………ウギャア〜〜〜〜〜〜〜ッ????」
船長の大笑いが、しかし、瞬く間に悲鳴に変わった!
なぜなら、例の小石が情けなく着弾したかと思うと、
ビカーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!
すぐに強烈な光を発し、
次の瞬間!
ボ…ボーーーーーーーーーーーーン!!
と、まるで風船がはじけるかのように、総排水量数百トンのばかでかい鋼鉄の船体が、バラバラに細かく分解消滅したのだ?!
「な、なんだあ〜〜〜〜〜?????!!!」
なんと小石は、甲板と接触した瞬間、すぐに厚さ十センチはあろうかという鉄の板と融合し、内封されていた激烈な“気”の衝撃を、その船体に全て手渡したのだ! するとそれは、すぐに船の隅々へと伝搬するや、船体の大部分を構成する鋼鉄の原子結合を激しく揺らし、あっという間にはじけさせたのだった!
後に残ったのは非金属物体、つまりロープ類や備品、そして船員たちだった!
彼らは、自分たちを取り囲む船体が、突如、ごま粒のようになって消えたので、
「□〇♂♀●◎△##@※〜〜!」
訳が分からないまま、そのままの態勢で次々と海へ落下した!
この、一部始終を見ていた海賊船の船員たちは、今目の前で起こったこのとてつもない出来事に、
「す、すごい………」
口を大きく開け、唖然としていた。
そしてそれは、大地たちもまた同様だった。天昇龍剣の真の凄さと奥深さを、一行は改めて知ったのだ!
大全は、この後も間髪入れず、“気”込めた小石を次々と戦艦へと放った! すると他の戦艦も、最初の戦艦同様、次々とはじけては撃沈されていくのだった!!
こうしてしばらく、激しい………いや、今や一方的な交戦が続いた後、海上に一つのモールス信号が飛んだ。
『紫蘭一味を乗せた海賊船は、信じがたい武器を発射し、次々と我が戦艦を撃沈! これ以上の追撃は不可能、繰り返す、これ以上の追撃は不可能! ただちに残った船で海中の船員を救助し、港に帰還する! 以上!』
「何い!! 国防艦隊が、紫蘭一味を乗せた海賊船に、壊滅させられただとお?!」
例のドームで、イグアノ族族長ンタラチュラは、部下から通信電文を受け取りのけぞっていた。
「あの、伝説の、無敵の艦隊と呼ばれる…………」
そう、艦隊は、王国史上まだ一度たりとも、一隻たりとも戦いに敗れたことはなかったのだ!
……といっても、地球王国は、その誕生以来“地球全土”を一つの国としたので、海賊以外と戦ったことが無かったのだが。
だが、とにかくもこれまで無敗には違いなく、その無敗神話は、遙か遠い異境の民イグアノ族にまで知れ渡っていたのだった。
「むうう〜〜〜〜!! まったくこの時代、どいつもこいつも役にたたん奴らだ!!」
後ろで、総司令官は頭を抱えつつ、怒りをあらわにしていた。
それを、
「やーいやーい、ざまあ見ろ♪♪」
と、籠の中から孔明が茶化した。
「や、やかましい小僧! しかし暗黒龍王様、この島に来る方法は“我々がとった方法”のみでございますれば、当然奴らは、これ以上ここに近づく事はできません! したがって、何とぞご安心を……!」
「あほう! どうして、安心できようぞ!! 奴らはこれまでも、信じられぬ方法でことごとく窮地を突破しておるのだぞ!」
「そ、それはそうでございますが、いくら奴らでも、今度ばかりは〜………」
「うるさい! とにかく、“霊波動足りないトコ作るぞそ……そ……”あいた! 舌噛んだ…!! …えーい、なんてヘタクソなネーミングだ! とにかく、ソイツでの紫蘭王子の魂再生には、あとどれくらいの時間がかかるのだ、族長!」
総司令官は怒りながら、不眠不休で作業させらている孔明の両親をにらんだ!
「は、ははっ、暗黒龍王様! 先ほどあの二人に確認しましたところ、ただ今、再生率九九・八パーセントだそうにございます! あれよりさらに作業は進んでおりますれば、再生作業はあと数時間で完了するものかと思われます!」
「おお、そうか♪ よし、族長、とにかく急がせるのだ!」
「ははーーーーーーーっ!!」 |
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