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九、やはりアホの部分が―
ドッカーーーーーーーーン!
ガラガラガラガラ、カンカンカン…
大全の放った杖の一撃は、見事に石組みの城壁に風穴を開けた!
一行はそのまま中へと突進し、王宮の中庭へと走り出た。
地球王国王宮、それはこの国、この地球の中心だった。日本のお城のような見事な石垣が何層にも連なり、その上には、日本はもちろん、中国からヨーロッパ・中近東に至るまで、ありとあらゆる城をミックスしたような櫓(やぐら)が幾重にも立ち並んでいた。
そして中央、頂点には、両脇にピラミッド状の石積みを従えて、五重塔を幾重にも重ねたような、巨大な巨大な金色に輝く塔が建っていた。
そのてっぺんは、雲をも突き抜けている!
「こ、これが王宮だって?」
「な〜んか趣味悪いわね……」
「う〜む、こりゃまた、奇妙奇天烈な……」
そのあまりの壮大さと奇抜さに、古代人三人はぽか〜んと口を開け見上げた。
「実は、この王宮、紫蘭王子のおじいさま、つまり先々代王の設計により、二十年ほど前に新しく作られたものです。真ん中の“五百重塔”(ごひゃくじゅうのとう)が王宮で、私たちが目指す所はその横の“アレ”ですわ!」
そう言うと舞羅は、王宮右のピラミッドを指さした。
そう、大地たちが目指す所こそ、この五百重塔王宮殿(ごひゃくじゅうのとうおうきゅうでん)脇のピラミッドの中、“王家即位の間”なのだ!
そこには、暗黒龍王を倒し、天の岩戸を開け、宇宙の御心の結晶“天地核”(てんちかく)を封印するための鍵となる“草薙の剣”(くさなぎのつるぎ)が待っているのだ!!
「ねえ、おかしいと思わない、ここには取り方衆もイグアノ兵もいないよ?」
未来は、これまた世界中の庭園がミックスされたような“悪趣味”な王宮の中庭を見回した。
「へっ、ここもみんな逃げちまったのさ、きっと!」
雷羅も腰をかがめ、辺りを見回した。
「ワナかもしれぬ……。いや、この場合、ワナと思った方が正解じゃろう! じゃが、虎穴に入らずんば虎児を得ずじゃ! ここは行くしかあるまい!!」
大全の号令一過、一行は右左に幾重にも折れ曲がった石畳を駆け上った。
そして、目指すピラミッドの中へと一気に飛び込んだのだった!!
中に入ると、石で囲まれた四角い通路が一本、真っ直ぐ奥へと通じていた。
ひんやりとした空気に包まれながら慎重に先へ進むと、一行は、二十メートルほど行った所で広い空間へと出た。そこは、部屋と言うよりホールと言った感じで、正面には石の壁を削った大きな人物レリーフ像が浮かんでいた。
それを一瞥するなり、大全は、
「こ、これは……!」
思わず、立ち止まった!
大地も驚き、
「これって……、じいちゃんそっくりじゃん!」
と、声を上げた!
そう、大地の言うとおり、格好こそ昔の中国皇帝のような服を着ていたのだが、その顔は、どう見ても大全とウリ二つだったのだ!
「ほんと………、でもどうして? だ、だれなのこれ?」
未来も二人と並び、不思議そうにこの巨大レリーフを見上げた。
「このお方こそ、さっき申しました、先々代王“宇宙時津風”(おおぞらときつかぜ)様なのです。」
舞羅が、大全の横に並びながら説明した。
「わたくし、皆様方を召喚しました最初の夜、言いましたね? 『なぜ封印の儀や王子の技が、あなた方のものと同じかは、いずれ証明出来ると思いますわ』と。………これが、その答えの一つです!」
「むむむむ、むう〜……なるほど、そういうことか。………」
大全はあらためて、まじまじとレリーフを見つめた。
「どゆこと?」
一人得心する大全に、大地が聞いた。
「ニブいわねー大地。あんたと王子だけじゃなく、そのおじいさんどうしもウリ二つ、つまりこれは単なる偶然じゃなくて、あんたと王子の家系そのものが“同じ血筋”ってことなのよ。しかもおそらく“直系”の!」
「な、なんだって????」
大地は、大全に変わり説明を始めた未来を見た。
「……そうよ、だから、剣の技や儀式が一緒なんだわ! あーもう、その顔はまだ分からないみたいね? 簡単に言うと、王家はあんたんちの“子孫”なの!!」
「な、なに? ……え、えーと……、え? オレの……子孫?」
しかし、未来の説明にも、まだイマイチ理解出来ない大地だった。
「えーい、我が孫ながらニブイやつだな! もーよいから、行くぞ先に!」
「イデデデ!!」
大全は大地の耳を引っ張り、再び向反対側の通路へと進み出した。
が、
その行く手には、今度は二つの入り口が口を開けている。
「ふむ……」
「あれ…?」
立ち止まり、左右を見比べる大全と大地。見ると、一見、どちらも同じような通路が続いているのだった。
するとその後ろから、
「左が正式な通路だよ。右は近道になっているんだけど――」
と、雷羅が言った。
「なんだ、だったらそっちを通ればいいんじゃん。なにもオレたち正式な訪問じゃないんだし。」
「あ、待ちなよ大地! 確かにそっちは近道だけど、いろんな侵入者撃退トラップがー……あ〜あ、行っちまいやがった。」
大地は、雷羅の言葉を最後まで聞かず、さっさと中に入ってしまった。
が、三歩進んだ所で、
ピュピュピュピュッ!
突然壁から、何十本もの矢が飛びだした!
「わあああっ?!」
かすめる矢を必死に避け、五歩目には、
ゴオオオオオオオオ〜!!
「ひ、火だあ〜〜〜〜!」
今度は炎が吹き出した!
ケツを焦がしながら八歩、十歩、十三歩目、
「み、水だ〜〜〜〜」
「岩が落ちてきたあ!」
「ぎゃあっ! 今度はレーザービームかい!」
………と散々な目にあって、大地はみんなの前に引き返してきた。
「ぜーっ、ぜーっ、ぜーっ、ぜーっ、わ、ワナがあるならあると、先に言わんかい!」
「言おうとしたのに、勝手に行っちまうのが悪いんだろ。そっちは確かに近道だけど、空気以外、細菌一匹通れないように出来てんの!」
「そ、そう言うのは近道とは言わん!!!」
こうして一行は、遠回りだけど安全な正式通路を通った。
そして雷羅が、
「よっしゃー! あそこを曲がった所こそ…」
と、前を指差した時!
ドガラガラガラ!
一行の足下が突然崩れた!
「うっわーーー!」
ぽっかりと開く真っ暗な穴!
一行は、次々とその中へ吸い込まれてしまった!!
…数秒の後、
ガラガラーン、ドッシャーーーン…………
暗闇の遙か底から、落下した岩の砕け散る音が響いた!
果たして、一行の運命は………?!
しばらくの静寂が、この通路を支配した。
そして、
「み、みんな大丈夫かあ〜………」
穴の中から、大地の声が響いた!
間一髪、大地は落ちる瞬間、手を床の淵に引っかけ難を逃れていたのだ!
さらにその足には紫蘭が、紫蘭の足には大全、雷羅、未来…と、みんながしがみつきぶら下がっていた。
「ま、まさか、ここに落とし穴が作ってあるなんて……、死んでも手を離すんじゃねーぞ、大地!」
「言ったとおり、思いっきりワナがあったじゃないのー!」
雷羅がわめき、未来が怒った。
そこへ!
「コレより奥へ、通すわけにはいかへんで〜!」
突如、頭上に低音が響いた!
驚き見上げる大地の目に!
「い、イグアノ兵ーーー!!」
一人のイグアノ人が映った!
「兵? 兵士やないであんさん、見ての通りの民間人やでぇ〜!」
よく見ると、確かに本人の言うとおり、このイグアノ人(多分男)は、兵士のような鎧兜(よろいかぶと)にこん棒姿ではなく、医者か技師のような白衣をまとっていた!?
男は、傍らに落ちている小石を拾うと、
「申し訳ないけど、皆はん、ここで行き止まりや!」
と言って頭上に振り上げた!
またもや大地、絶体絶命のピーーーーーンチ!!!!
と、その時、
「あんた、あかん、やめてえやーー!」
今度は別の、やはり白衣を着たイグアノ人(多分女性)が現れ、後ろから男に抱きついた!
「は、離せ、離すんやお前、でないと、でないとあいつの命がーーー!」
「きゃあっ!」
女を振りほどき、再び腕を振り上げる男!
が!
「そ、その印は………!!!!」
その腕は、振り下ろされる事無く固まった。
男は、大地の上着の袖からのぞく手首に、あるモノを発見したのだ!
その時!
「お父ちゃん…? お母…ちゃん…? その声は、お父ちゃんとお母ちゃんかーーっ?!」
一番下にぶら下がっていた孔明が叫んだ!
「そ、その声は…、孔明ーーーーーーー!」
再会!!
抱き合う3人の足下は、ドバドバ溢れる涙で水たまり状態になっていた。
そう、孔明はついに、離ればなれになっていた両親に再会することが出来たのだ!
しっかりと抱き合う親子を見て、
「良かったね、孔明ちゃん♪」
愛羅も感動の涙を流し、祝福した。
そして大全たちも、
「うん、うん!」
と、心を熱くしてうなずくのだった。
こうして、感動の再開はしばらく続いた。
そして、しばらくして落ち着くと、孔明の父親は大地に、そしてみんなに、
「大地さん言われましたな、私たちは孔明の両親で、山形屋張飛にアグネス言います。さっきは誠に申し訳ございませんでした。もし孔明の“舌印”(べろスタンプ)に気付かなんだら、孔明の命の恩人を、大変な目に遭わせるところでした。堪忍して下さい。堪忍してください!」
と、何度も頭を下げた。
そして母親も、
「協力しないと、息子を殺すと脅されてまして〜、うっ、うっ…」
と、泣きながら一緒に謝罪した。
「なに言うてんねん、やつら、最初からオレのこと殺す気いやったねんで! オレ、もう少しで兵士のエサになるところやったんや。その危ないところを、この大地兄ちゃんに、大地兄ちゃんに、うわああああ〜〜〜〜〜…」
孔明は、そう言うとまた泣きじゃくった。
「分かってる、分かってる、このお方の腕に残るお前の舌印を見たとき、全てを悟ったんや。堪忍やで、堪忍やで、孔明〜〜〜〜。」
二人は、また孔明を強く抱きしめた。
そんな様子に大地は、
「いやあ気にしないで下さい。孔明くんには、オレたちも飛行船で助けてもらいましたから。」
と言ってなだめ、なぐさめるのだった。
「そうか、孔明、良くやった、それでこそ私の息子や! 良くやった〜!」
「うん、父ちゃん。母ちゃん…!!!」
そして両親は、あらためて大地の方へ向き直った。
「大地さん!」
「は、はい?」
「ぜひ私たち両親からも、お礼の舌印を一つ〜!」
「そうですとも、いいえもう、一つと言わず百個でも千個でも、ぜひ〜〜!!」
言いながら、二人はどぴゅぴゅ、と舌を延ばしてきた!
孔明の舌とは比べもにならないくらい、腕のようにどでかい舌が、胃液をしたたらせ大地に迫る!!
「ぎょえ〜〜〜〜〜、そ、それだけは結構です〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」
大地は、ジュウジュウ胃液を垂らし向かってくる舌から逃げ回り、それだけはなんとか勘弁してもらった。
こうして、予期せぬ再開も無事済むと、一行は、今度は孔明の両親を先頭に進み、先ほど雷羅が指さした通路の角を曲がった。
すると、そこはまた広い空間になていて、その先には、大きくて立派な扉が待ち受けていたのだった。そしてその扉には、これまた大きなネームプレートが張り付けてあり、そこには“王家即位の間”と分かりやすく記されていたのだった。
「いよいよここが、私たちの目的地、王家即位の間ですわ!」
舞羅は、扉に手を掛けると、そのノブをゆっくりと引いた。
が!
「ええーーっ……?!」
中に入ると、すぐに舞羅は驚きの声を上げた!
「は、半分、抜けかかってるじゃねーか!」
雷羅もまた驚き、大声を上げた!
無理もない、承認の台に深々と突き立っているはずの草薙の剣が、雷羅の言うとおり、今や半分ほど抜けかかっていたのだ!
「な、なんでちゅか、この機械は……??」
そして愛羅は、その承認の台横に置かれた、乗用車ほどもある謎の機械に気付くと、その回りを見回した。
すると、この見慣れない変な機械は、ブンブンうなりながら強烈な熱気を発していて、下からはたくさんのケーブルが延び、それが承認の台へと接続されているのだった。
孔明の父山形屋張飛は、たくさんのメーター類やダイヤルが並ぶ、この怪しげな装置の横に立つと、一行にとって驚くべき言葉を発した!
「この装置を使い、あと一週間ほどで、その剣は抜ける予定でした!」
「な、なんだってえ!」
それは、衝撃的な言葉だった!
三姉妹、そして紫蘭は、愕然とその装置を見つめた!
「ふ、ふざけるな! そんな機械でどうやってー…」
我に返り、張飛にくってかかる雷羅!
と、今度はその装置を挟んで反対側に、アグネスが立ち、
「はい、これは私たち夫婦が作り上げた、その名も“霊波動足りないトコ作るぞ装置”なのです!」
と、説明を始めた。
「霊波動…を、作る?! そうか、あたしとしたことが、その手があったかーーーー!」
雷羅は、驚きつつもその発想に感心した!
そして、装置に近づいて裏へ回ると、裏蓋の隙間からその中を覗き込んだ。
すると中には、まばゆい光を放つ何千何万と言う小型真空管、そしてコンデンサーや抵抗類がが並び、さらに無数のコイル、配線が満載されているのだった!
それはまるで、人類初の真空管式電子コンピューターENIAC(エニアック)の真空管を小型化して無理矢理詰め込んだような装置で、近寄りがたい強烈な熱気は、実はこの真空管から発せられていたものだったのだ!
「ひゃー、アナログだよ、真空管だよ、すげーー!!」
雷羅は、妙な感心の仕方をしてみせた。
雷羅にとってもそれは、もはや家の文献でしか見たことのない、古い古い回路方式だったのだ。
しかし張飛は、
「おやー、たしか雷羅さん言われましたな、あなたは真空管をご存じで? え、まてよ? 雷羅さんと言えば、神司家の科学を継承するという、あの雷羅さんですか?
これは失礼しました! 実は我が家も山形屋という電気屋の家系でおまして、代々高度な電気技術を継承してきましたんや。で、この真空管は、長年研究を積み重ね、最近やっと完成小型化したものなんですわ♪」
と、ちょっぴり自慢げに説明するのだった。
「でも、うちの亭主のこの技術に、族長が目をつけまして……」
「誘拐され、この装置を作るよう脅されたと言うわけなんですね?」
アグネスの語尾を、未来が続けた。
「はい。この装置に、抜き取った紫蘭王子の魂が発する“波動パターン”を入力して、残り半分の波動を、このダイヤルを回してチューニングして行くんです。」
そう言うとアグネスは、装置の前面に付けられた何十というダイヤルを、微妙に回して見せた。
「魂の波動というのが、どういうのかは知らないけど…………たしかにこれなら、高度なデジタル技術を使う必要は無いわね。微妙にチューニングした周波数を重ねて行けば、時間はかかっても、逆にかなりの精度で、波動の不足部分を再現できるかも…。」
未来も感心し、装置を見回した。
一方大全は、そんなやり取りも耳に入らない様子で、食い入るように、ただひたすら剣を見つめていた!
そして、
「この形、この刃紋、この金色を帯びた輝き……! こ、これはまさしく、我が綴目家先祖伝来の宝刀、神剣“虎鉄”(こてつ)ではないか!!!」
と、大声を上げた!
「ええっ、草薙の剣が虎鉄?!」
大全の言葉に、大地も驚いて剣に近寄った。
そう、大全が見れば見るほどに、それはまさしく綴目家に龍を倒したと代々伝わる、神剣“虎鉄”そのものだったのだ!
「へ〜……、オレ、初めてみたよ。これが、家宝の虎鉄かあ…♪ あ? てことは……、やっぱ紫蘭は、うちの子孫ってことか!………。☆☆?! えーっ! てことは、その昔、暗黒龍王と戦った宇宙鎮尊ってのも、うちの子孫に間違いないってコトかあ????」
大地は、その意味する所にあらためて気付いた!
「うむ……。そういうことじゃな! それどころか、我が天昇龍剣の由来に、『神の御心が宿る玉を奪い、この世を滅ぼさんとする黒き龍を、高天原(たかまがはら)から下りし我が祖先が、神剣虎鉄を持ちて退治し、玉を大地に封印した…』とある通り、恐らく我が家系は、代々、神世の昔から繰り返し、暗黒龍王と戦ってきたのに違いない!」
「ええーーーーっ?!!」
大全の、この推測は正しかった!
大全、そして大地は今、己の家系の真実の一端、そして自らの運命を悟ったのだった!!
「大地様、さあ、今こそあなたの御手で、あなたの魂の波動で、その草薙の剣を引き抜くのです!」
そう言うと舞羅は、久しぶりにそろばんを取りだした。
そして、
「αιηθππωξψυσ……」
と、そろばんをジャカジャカと鳴らしながら、呪文を唱え始めた!
するとどうだろう!?
その合図を待っていたかのように、承認の台が光を放ち、色とりどりに輝き始めたではないか!
だが、当の大地は、
「ひ、引き抜くったって、どうやって?」
と、いきなりの事に、おろおろするだけなのだった。
「気を乗せるのです! 台の上に立ち、全身全霊を込めて、剣に気を乗せるのです! χβαΨρ……」
舞羅はそう言うと、ますます強く呪文を唱えだし、徐々にトランス状態に入って行くようだった。
「やってみるのじゃ大地! もはや猶予はならぬ! ……えーいやらんか、コリャアー!!」
大全は、なおも尻込みする大地に苛立ち、そのケツをドカッと蹴っ飛ばした!
「あいたー!!」
思わず台に飛び乗る、大地!
大地は、
「あ、あの…………」
と、なおもとまどいながら言いかけて、みんなの視線を感じ、仕方なくもう一度舞羅を見た。
すると舞羅は、呪文を唱えながら、大地の目をじっと見据え、コクッ、と深くうなずいた。
そして、その後ろに立つ紫蘭もまた、真剣なまなざしで大地をみつめ、深くゆっくりとうなずくのだった。
「!!!!!!」
大地は、後に引けないことを悟ると、顔をひきつらせながら目の前の草薙の剣を見つめた!
そして、しばらくの沈黙の後、
ゴクリ!
決心の唾を飲み込む音が、みんなに聞こえた!!
「わ、分かった、オレ、やってみるよ!!!」
大地は剣をにらみ、額に一筋の汗を流しながら、剣の束(つか)へと手をかけた。
そして、
(全身全霊の気ね………… 全身全霊の気………………全身全霊の………………!!)
と、ブツブツと自分の心に言い聞かせ、静かに呼吸を整えると、息を深く吸い込み………
叫んだ!
「全身全霊の、気いーーーーーーーーーっ!」
ドテッ!
その場でずっこける、大全たち!
「な、なんじゃそのかけ声は〜〜!」
大全は、すぐに立ち直ると大地に罵声を浴びせた!
が、次の瞬間!
「こ………これは?!!」
大全は、我が目を疑った!
そう、かけ声は、問題では無かったのだ!
なぜなら大地は、この時代に来てからの数々の経験、実戦で、天昇龍剣継承者として、真の力を確実に開花させつつあったのだ!!
爆発するように、体内からほとばしる気は、
バチ、バチッ!
と火花を散らし、大地の髪の毛を逆立たせ、服を逆立たせ、
ビカーーーーーーーーーーーーーッ!!
剣を、見る見るうちにまばゆく光り輝かせた!!
「むううっ! 剣と大地の魂が、見事に共鳴しておる……! 天晴れじゃ大地! 元来お主が受けるはずであった封印の儀は、そのようにして剣と魂を通わす儀式ぞ!!」
大全は、つい今しがたの怒りはどこへやら、嬉しい驚きで珍しく孫を誉め称えた!
「こ、孔明、どういうことや? この大地さんいうお方は、一体………?」
この出来事に、孔明の両親もまた驚いていた!
なんと、紫蘭王子以外に、あの剣を抜ける人物がいたとは?
「へへっ、父ちゃん、母ちゃん、どや、驚いたか? 信じられへんやろけど、この大地兄ちゃんはな、この舞羅さん姉妹が大昔の世界から召喚した、紫蘭王子の“生まれ変わる前の魂を持つお人”らしいで♪」
「ええっ、生まれ変わる前の?」
「ほな……、つまり何か、孔明? 大地さんと紫蘭王子は、同じ魂の…それで剣が……」
信じられない光景、そして説明に、もはや言葉にならない両親だった。
一同は、光り輝く剣と大地を見つめた。
大地は、
「いやああああああーーーーー!!」
さらに気のパワーを上げた!
ますます光り輝く剣!
それにつれて、台の承認を受けた紫蘭王子以外、何人たりとも抜けぬはずの神剣草薙の剣が、徐々に、徐々にではあるが、台から抜け始めたではないか!!!
「や、やったぜ大地ーー!!」
雷羅は、思わず拳に力を入れた!
その目の前で、なおも剣は引き抜かれていく!
あと十センチ、そしてあと数センチ………という時!
バチイーーーーーーーン!
突如、剣に強烈な火花が走った!!
瞬間!
「ぎゃああーーーーーーーっ!」
大地の体は、その悲鳴とともにはじかれるように吹っ飛んだ!
そして固い石の床へ、
ドズン!
と、叩きつけられてしまったのだ!!
「ああっ、大地様!」
「だ、大地!!」
「大地お兄ちゃまーーーっ!」
三姉妹は、すぐに駆け寄り抱き起こした!
「ま、舞羅さん、やっぱ駄目でしたあ〜〜…………。はあ、はあ、はあ…」
大地は肩で大きく息をしているものの、ケガもなく、
「よ、良かったあ、無事だったでちゅう。」
愛羅はホッと胸を撫で下ろした。
「よ、よかった……」
雷羅も思わず涙ぐむ。
「でも、いったい何が起こったんですか?」
頭を押さえながら、大地が尋ねた。
「拒否…されたのです……。剣はすでに半分抜けかかっていたとはいえ、やはり、大地様と紫蘭王子の魂の波動には、違いが大きすぎたのですわ…。」
未来の問いに、舞羅はうつむきながら答えた。
この時、
「ああっ、く、草薙の剣が……みなさん、剣が……」
孔明が声を上げた!
それにみんなが振り返ると、剣はまた再び、台に吸い込まれるかのようにゆっくりと、元の位置へと戻っていくのだった。
「うーむ、誉めて損したわい! こりゃやっぱ、お前の“アホ”の部分が拒否されたんかのう?」
大全は情けないという顔をして、へたり込んでいる大地の顔をのぞき込んだ。
「や、やかましわ!!」
と、その時!
カカカカッ!
再び、剣がまばゆく光り輝いた!
なんと、今度は本家本元、紫蘭が台の上に飛び乗って、剣の束を握っているのだ!
紫蘭は、瞬間的に爆発気を剣に乗せ、
「!!!!!!!!!!!!!!!!」
ますますそのパワーを上げた!
顔は紅潮し、額から汗が噴き出す!
見よ!
それにつれ、剣は再び、ゆっくりと、ゆっくりと引き抜かれ始めたではないか!!
「おお!!」
一同は目を見張った!
しかし!!
バチイーーーーーーン!
「し、紫蘭王子ーーーー!」
大地同様吹っ飛ばされる紫蘭に、未来は慌てて駆け寄った!
承認の台は、やはり、紫蘭の魂をも拒否したのだ!
「無理ですわ。たとえ紫蘭王子本人でも、魂が半分では……」
舞羅の言葉に、一同はガクッと肩を落としたのだった。
もはや彼らには、剣を抜く術は残っていなかった。大地たちは、これから一体どうしたらいいのだろうか………?! |
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