第八章 ボヨヨン、ボヨヨヨ、ボヨヨヨゥォン!!
八、ボヨヨン、ボヨヨヨ、ボヨヨヨゥォン!!

 『グッ、モーニン、地球全国の皆様! 今朝の“おっぱよ〜ズーム・イン!”は予定を変更し、国防軍創設記念パレードの模様を、古代ネットワークシステムを利用し、全世界同時生中継でお送りいたします! ではさっそく、パレードにズーム・イン!』
 パッパー♪、ブンカ♪、ブンカ………♪
テレビ画面は、ノー天気な男性アナウンサーから、今日付けで発足した軍隊の行進と観閲式が今まさに行われている、都(みやこ)大通りへと切り替わった。
「かしらー、右ーーー!」
ナチ式敬礼をする、三万の武装イグアノ兵。
 その敬礼の先には、二十階建て国家警察隊ビル、……いや、今は“国防警視軍ビル”となった二階バルコニーから手を振る、警視総監改め“国防警視軍総司令官”アイライク・カネガの姿があった!
 『反逆者紫蘭王子一味が、悪逆非道の逃走を続けているため、警視総監は、本日付けでイグアノ族の軍隊を正式に招き入れ、ここに新たに“国防警視軍”を創設し、総監自ら国防警視軍総司令官に就任されました!』
陽気な声が、全世界中に中継される。
 が、この賑やかさと対照的に、一般市民は家の中で息を潜め、このテレビ中継を不安げに見ていた。
「議会は壊滅、王子は反逆者……そして突然やってきた、あのイグアノ軍が国防警視軍なんて、宇宙鎮尊(おおぞらしずめのみこと)様が造りたもうたこの地球(チタマ)王国は、一体どうなってしまうのか?………」

 一方、総司令官の後ろで、ついさっきまで総司令官同様得意満面になっていたはずの、イグアノ族族長ンタラチュラは、
「◇○♂♀「◎■♪〓#§☆☆〜〜〜〜?!」
今にも卒倒しそうになるのを、やっとこさこらえていた!
 彼は、たった今故郷より届いた、伝書ハドの報告書を読んでいたのだ。そしてその内容に、脳天をぶち抜かれたような衝撃を受けていたのだった!
 「か、壊滅? 我がイグアノ族の街が、壊滅ううう〜〜〜??? あ、あは、あは……」
目を潤ませ、族長はついにその場にへたり込んだ。
「や、奴らは何じゃ? 鬼か? 悪魔か? 逃亡するごとに次々と街を破壊し、つ、つ、ついには我が街までも……」
彼は、この世を破壊する暗黒の王を崇拝する者とは思えぬ言葉をつぶやくと、力無く立ち上がり、フラフラと総司令官へ歩み寄った。
 と!
 「なにーーっ! 奴らを一度は捕らえたものの、飛行船で逃げられただとお………!」
耳打ちされた総司令官の顔色が、見る見る変わった!
「も、申し訳ございません暗黒龍王様〜〜!! 一族の失態は、この族長めの失態! 見事、この腹かっさばいて責任をぉ〜〜〜〜!」
族長は床にひざまづくと、腰から剣を引き抜き腹へ突きつけた!
 が、総司令官は、
「あ〜……、もう、よいよい。うっとおしいから何もするな。何も!」
と、すぐに平静に戻り、さもうっとおしげに手を振ってみせた。
 「くっくっく……、考えようによっては、飛行船とはありがたいではないか。紫蘭王子一行には、とっととこちらへ向かってもらった方が、手っ取り早いと言うものよ。よし、よくぞマヌケにも取り逃がした! 誉めてとらすぞ、ンタラチュラよ!」
「そ、そんな、暗黒龍王様〜、その誉め方、あまりと言えばあんまりのお言葉〜〜……」
 泣き崩れる族長を後目に、総司令官は構わずマイクを握った。
「兵士及び取り方衆全員に、緊急命令を告げる! たった今、あの国家反逆者紫蘭王子一味が、なんと飛行船に乗って、今日にもこの都へ攻め込んで来るとの情報が入った! これまで同様、おそらくヤツらは、この都の壊滅を狙っているものと思われる!!
 全員直ちに戦闘態勢に入れ! 繰り返す、全員直ちに戦闘態勢ーーーーーーーーーっ!!!」
 こうして都は、戒厳令のサイレンが鳴り響き、通りという通りには、蛮刀と棍棒を持ったイグアノ兵が走り回りだしたのだった! 
そしてさらに上空も、地上より飛び立った多数の飛行戦艦によって、あっという間に埋め尽くされていた!


 「あー、食った食った〜♪」
一方その頃大地たちは、丁度朝飯をたいらげた所だった。
 そして窓から、もうすぐ到着するであろう前方、都の方角を、まだのんびりと眺めていたのだった。
「そう言えば、孔明のご両親は、連れ去られて何か仕事をさせられてるとか言ったな。何をさせられてるんだ、一体? 」
大地は、操縦席に座る孔明に聞いた。
「さあ…。ただ、うちは、元々電気科学の家系やから、なんか電気に関係するもん、やらされてるんや思うで。」
「ふーん? しかし、わざわざ誘拐してまでやらせるんだからなあ、一体何なんだろう……?」
「それより大地兄ちゃん、見てみ! ほら、少しずつ砂漠の色が変わって来たで、そろそろ都が近いんやないか?」
 孔明の言うとおり、昨夜より永遠に続くかと思われたこの赤い砂漠は、やっと終わりを告げようとしていた。赤は徐々に灰色の砂に変わり、その中にぽつぽつと緑の点が現れ、点は面となり、面は林へ、森へと変化していくのだった。
 「あれは、都を囲む原生の森ですわ!」
舞羅は、前方に広がる緑の森を指さした。
「ここを越えれば、すぐに都でちゅよお!」
「よっしゃあ! やっと帰って来たぜえ、今に見てろよ暗黒龍王!!」
雷羅は、自らを鼓舞するかのように腕を上げ、ブレスレットをジャラジャラと打ち鳴らした。
 「わたくしたちが飛行船で行くのは、おそらくもう連絡が行っているはずです。ここはいったん、あの森を回り反対側に降りて……」
舞羅が段取りを言いかけた、
 その時!
「あそこに何かありまちゅ!」
愛羅が、森の中に銀色の反射光を発見した!
 そして、この雷羅の叫びが合図だったかのように、銀色の“それ”は森の木々の葉を押しのけ、上昇を始めた!
「し、しまった………、待ち伏せだあ!」
雷羅が叫ぶ!
「王国の飛行戦艦隊ですわ!」
そう、森の中から姿を現したもの、それは、全長悠に百メートルはあろうかという、地球(チタマ)王国が誇る最強の巨大飛行戦艦だったのだ!
 しかもそれは一隻ではなく、森のあちこちから何十隻と現れ、瞬く間に小さな白岳号を十重二十重に取り囲んだ!

 「反逆者、紫蘭元王子一行に告ぐ! こちらは国防警視軍である! おとなしく停船せよ! そして指示に従え!! 抵抗しても無駄だ、お前たちを逮捕する!!!!」
王国飛行戦艦部隊改め、今は国防警視軍飛行戦艦部隊の警告が、空中に轟いた!
 「あっという間に、ピーンチ!!!!」
大地は、両手で頭をかかえた!
 戦艦の窓という窓からは、何百何千という弓矢が突き出していた! そしてそれは、今まさに放たれんと、白岳号ただ一点に向けられていたのだ!
 と?!
「あたしに、まかしときな!」
雷羅が窓の外に向け、ブレスレットを差し出した!
 それを見た大地たち、
「ば、ばか、やめろお〜〜〜!」
大慌てで、その体を取り押さえた!
 「な、何しやがんでえ?」
「何しやがんでーじゃないだろ、オレたちの上には、水素タンクがあるのと同じなんだぞ! ここでもしお前が爆発なんか起こしたら、オレたち一体どうなると思ってるんだ!」
「そ、そうよ、あたしたちを殺す気?! ヒンデンブルグ号の乗客みたくなるのは、イヤよ!!」
未来も必死でしがみつく!
「てめえら、ほんっとにあたしのことを…」
 そして、なおもジタバタ抵抗する雷羅に、
「はいはい。ほら、雷羅、静かにしなさい、∞∽∝∀@√ФПЖЙ…………ムンッ!」
と、舞羅が頭に手を置き、眠りの呪文をかけ始めた。
 さらにそれでは物足りないと、愛羅が素早く背中の救急箱から。何かの薬品の入った瓶を取り出すと、中身をガーゼに染み込ませて雷羅の口にあてた!
 「う………?? く、くそ……お〜〜?☆☆…………」
この二段攻撃には、さすがの雷羅も意識が遠のき、床へ崩れ落ちた。
「あ〜、怖かった……」
ホッと胸を撫で下ろす一同だった。
 そしてその一部始終を、
「な、なにをやっとるんだ、やつらは?????」
と、飛行戦艦の兵士達は呆気にとられ、攻撃も忘れて見ていたのだった。

 「孔明、この船には、何か武器になるものはないのか?」
大地が尋ねた。
「武器は無いけど、脱出する方法ならあるで! 未来姉ちゃん、後ろのガス発生装置のバルブ、そう、それや、そいつを全開にしてんか?!」
「これ? これね、ようし!」
未来は、言われた通り思いっきりバルブを左に回した。
 孔明はそれを確認すると、椅子の下からハサミを取り出し、
「緊急脱出装置、作動や!」
と言って、操縦席前の計器類横にある蓋を開け、中を横切る一本のロープを、
 ブチッ!
と切った!
 瞬間、
……ロープは……………そこから消滅した!????
「へ?」
意味が分からない大地。
 と!?
 ガクン!
すぐに船室が傾いた!

「な、なんだあ〜〜〜〜???」
あわててそこいらにしがみつく、大地たち!
 実はこの船室は、たった一本のロープをグルグル巻きにすることで、ガス室にぶら下がっていたのだった! そして孔明が、今そのロープを切ったのだった!
 ロープは瞬時にほどけ、操縦室は上のガス室と分離した!
 「わああっ、脱出って、落っこちる事なのかあ〜〜〜?」
大地たちは、自由落下する船室の中で無重量状態になって浮いていた!
 しかし孔明は、さらに、頭の上にぶら下がっている、いや、今は漂っている、電車の吊革のようなものを引っ張った!
「プロペラエンジン、分離!」
 ボンッ!
今度は、船外後部に付けられていたプロペラエンジンが、小爆発と共に分離された!
 「な、なんだやつら、一体どうする気だ? とにかく撃て、矢を撃て撃て撃てーーー!」
ますます訳の分からない反逆者の行動に、飛行戦艦部隊は、半分混乱しながらも攻撃を開始した!
 ヒュヒュヒュヒューーーーー!!
一斉に放たれる数千数万本の矢!
それはまるで爆破シーンを逆回転で見るかのように、あるいは漫画の集中線のように、落下する大地たちの船室目がけ集中した!
 が、
孔明はその前に、一つのレバーを押した!
 「水素ロケットエンジン、点火やあ!!」
なんと、プロペラエンジンが分離された跡には、噴射口が出現していた!
 そして孔明の合図と共に、
 ドン!!!
そこに巨大な火柱が出現した!!
 「ぐ、ぐわわわ〜〜〜〜〜〜??????!!」
瞬間駅に襲いかかる強烈なG!
 大地たちは、気を失っている雷羅をつかみながら、吹っ飛ばされまいと中央の柱に必死にしがみついたのだった!!


 「やっと来たか、紫蘭よ………。その魂、待ちかねたぞ…………くっくっくっ……」
総司令官アイライク・カネガは、二十階建て国防警視軍ビル最上階にある、総司令官室の一枚張りガラス窓に近づくと、厳戒の街並みを眺め、ほくそ笑んでいた。
「報告では、やつらは、手作りの小さな飛行船でこちらに向かったとか。そんなオモチャ、“我が”飛行戦艦隊の前には、ひとたまりもございますまい!」
後ろから、イグアノ族族長が進言した。
 その時、
 ズゴーーーーーーーーーン!!!
突如二人の目の前を、火を噴く大きな“何か”が右から左へ横切った!
「!!!!!!!!???????…………な、なんだ今の…は…………?」
「さ、さあ…………??? 何やら、でっかいウニか、ハリネズミのような………」
 煙をたなびかせ、市街地へ落下して行く謎の物体を、二人はボーゼンと見送ったのだった。

 「キャ〜〜〜!」
大地たちは、ロケットエンジンの加速度に負けまいと、なおも中央の柱に必死にしがみついていた。
 そして、その竹で編んだ船室には、飛行戦艦部隊から放たれた何千何万本という矢が突き刺さり、外から見ると、それはまるで、巨大なウニかハリネズミのようだった!
「ど、どこに向かってるんだ、孔明〜〜〜?」
「わ、分からへ〜ん! 矢が刺さってて、操縦不能なんやあ! パラシュート開くことも、出来へんのや〜〜!」
「な、な〜〜にい〜〜〜〜〜〜??!!!!」
「行き先は、神様に聞いてくれっちゅうことや〜、ぎょえ〜〜〜〜〜〜〜〜…………!」
 数十秒の飛行後、
 ダッフンダ!……
黒煙を吐いて、突然ピタリとロケットの噴射が止まった!
 こうしてハリネズミは、やっとその加速をやめ、ゆっくりと放物線を描きつつ自由落下へと移行した。
 ヒュウウウウウ〜〜……
「ぎゃあ〜〜〜〜〜!!!!」
「落ちてまちゅう〜〜〜〜〜!!!」
 そして、
 ドッ、ドドーーーーーーーーーーン!!!!
ある建物の屋根を突き破り、中へと突っ込んだ!

 「いててて……ん、な、なんだよここは?」
雷羅は衝撃で目を覚まし、回りをキョロキョロと見回した。
 するとそこは、回り一面、矢と船室の残骸が散乱しているのだった。
 と、
「し、死ぬかと思った〜。み、みんな無事かあ?」
大地たちが、その残骸の中から姿を現した。
「ふん、修行が足りんな!」
しかしその後ろで、大全だけが、一人平然としっかり着地を決め立っていたのだった。
 「おしり打ったでちゅう〜。」
「ひどい目に遭いましたわ。ゴホゴホ……」
などといいつつ、一行は全員の無事を確認すると、自分たちが立っている場所を見回した。
 すると、そこは巨大な建物の中で、目の前にはアニメに出てくる宇宙戦艦のエンジンのようなものがあり、その中央で、直径五〜六メートルはあろうかという横向きの黒くて巨大な軸が、静かに、しかし超高速で回転していた。
「ああっ! こ、ここは……」
舞羅が驚きの声を上げた!
「ど、どうしたんですか?」
「ここは………………反重力発電所じゃねえか!」
聞いた大地に答えるかのように、雷羅も叫んだ。
「反重力発電?!」
今度は未来が驚く!
 「ああ。神話によれば、あたしたち神司家の開祖、神司姫が作ったと伝えられるシロモノだ! こいつは、反重力波を発生する特殊な超放射性物質を使って、半永久に回転する発電機さ。」
「へー! それがホントなら、神司家の開祖ってすごい科学者だったのね。」
未来は、感心したようにその巨大な機械を見上げた。
 「へっへーん、すごいだろ。実はこの王国の電気は、すべてコイツで賄ってるんだぜ。」
雷羅は胸を張った。

 その時!
 ドンドンドン!
建物のドアを叩く音が響いた!
 「やつらは、この中だーーっ!」
すでに建物の外には、街中の“イグアノ国防警視兵”が続々と集結していたのだ!
 その数三万!
「大変だあ! もう兵士が来たあ!」
「大丈夫ですわ、大地様。ここは完全自動管理ですから、何世紀も前から入り口は封鎖されてます。そう簡単に、中には入れませんわ。」
 しかし、この舞羅の読みは甘かった!
なぜなら、一人一人が怪力の持ち主のイグアノ兵は、
 ズゴーン! ドゴーーン!!
今度は丸太を持ち出し、お寺の鐘を突くようにドアに叩きつけ始めたのだ!
 「すぐに、入って来そうでちゅよ!」
「こ、こりゃヤバイでえ、なんか方法は無いんかいな?!」
愛羅も孔明も青ざめ、みんなを見回した。
 「じいちゃん!」
「うむ、こりゃまたまた、覚悟を決めんといかんのう!」
「………………!!」
身構える大地と大全、そして紫蘭!
 さらにその横で、
「へん、来るなら来やがれ! さっきはこのアホどもに眠らされたけど、今度こそあたしの新兵器をご披露してやるぜ!」
雷羅が腕を突き出した!
「お、おい、新兵器って、ちょっと待て〜」
またまたこれにうろたえる、大地たち!
 が、この時、
 ドッカーン!
ドアは破られ、見渡す限りのイグアノ兵が一斉になだれ込んできた!
 そして兵士たちは見た!
腕をこちらにかざし、立ちはだかる一人の少女!
 ……と、その後ろで床に伏せる、その仲間たちを?!

 「????? な、なんだコイツら??」
呆気にとられるイグアノ兵に、雷羅は不敵な笑みを浮かべ、言った。
「この場所を記念して、雷羅様一世一代のスペシャル大発明、“反重力波動砲・雷羅スペシャル”だーーーーーーっ!」
「ぎゃぴーーー! また“雷羅スペシャル”でちゅう〜〜〜!」
「しかも今度は、“スペシャル”の上にまた“スペシャル”がついてるわ〜〜〜〜〜〜っ!!!」
頭を押さえる未来たち!
「やーかましい!!」
委細構わず、雷羅はそのスイッチを入れた!
 と!
 ビカァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!
瞬間、雷羅の腕が光った!
 そしてその髪が、服が、その皮膚が、振動で脈打った!
そして…!
 ズドオオオオオーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!
強烈な光の束が、雷羅の腕から発射された!
「行っちゃってちょうだ〜い!!!!」
幾筋もの光の束は、まるで蛇が獲物に襲いかかるかのようにのたうち回りながら、イグアノ兵に襲いかかった!
 と思うと、あっという間に兵士を飲み込み、突き抜けながら、遙か後方まで突進した!
この時今まさに、目の前の敵に飛びかからんとしていたイグアノ兵たちは、謎の光に飲み込まれると同時に、
「アグア?!」
突然体から、突進力が消え失せたのを感じた!
 そして、なおも前に進もうと足を必死に動かしても、まるで後輪を浮かせた自転車を漕ぐがごとく、足が空中で空回りするだけなのだ?!
 「わ、わあああ〜〜〜〜〜〜??? どうなっているんだあ〜〜〜????」
パニックになる、兵士たち!

 恐るべし(?)反重力波動砲!!
雷羅のスペシャル大発明は、イグアノ兵の巨体を一時的に反重力状態にし、空中高く浮上させ、
 ドドドドドドドドドドドォ!!……
落下させた!!!!
「ぎゃああっ!」
「ぐええっ!!」
さすがの屈強の兵士たちも、これではひとたまりもなかった!
 彼らは次々と飛ばされては地面に叩きつけられ、ことごとく失神していくのだった!
 「す、すごい。雷羅の作った装置が、マトモに作動しているわ…!」
この未来の言葉が、みんなの驚きを代表していた!
 口を半開きで見ている大地たちの前で、
「ぎゃ〜はははは! どうだどうだ、それそれそれ〜〜〜〜〜〜い!!!」
雷羅は得意になって、何度も反重力波動砲を発射した!


 この時、突如!!
 ボヨヨン!!
まるで、プリンの波打つような振動が、大地たちの体を襲った?!
「な、なんだ? ボヨヨン…???」
ボヨヨン、ボヨヨン…
なおも続く振動に、大地たちは後ろを振り返り………、
 そして見た!
さっきまで、何百年何千年と、静かに超高速回転していた反重力発電機の巨大な軸が、急に不規則に波打ち始めたのを!
 「こ、これは………」
反重力波動砲を発射しまくる雷羅、そして波打つ反重力発電機…。
 大地たちは、それらを交互に見やると、あることに気付いた。
「き、共振…………………している?!」
そう、その振動は、明らかに雷羅の攻撃と連動していたのだ!!
 「わ〜〜〜、や、やめろ雷羅〜! 攻撃やめやめ〜〜!!!」
慌てて雷羅に飛びかかり、体を羽交い締めにする大地!
 この時、大地の頭の中には、“イヤな予感”と言うヤツが、岸和田だんじりのように駆け抜けているのだった!!
 「な、なにしやがんでえ! 人がせっかくゼッコーチョーに攻撃を、攻撃を……………え???!」
雷羅も、やっと異常に気付いた!
 が、時すでに遅く、あわてて雷羅がスイッチから手を離しても、もうブレスレットは止まらないのだった! 止まらないどころか、不気味に明滅を繰り返し続けている!
 そして、それとともに、発電機はさらに大きく波打ち始めた!!!
「も、もしかして、あたしの装置と発電機が共鳴して、暴走を?………。しかも、不完全同調で“うなり”状態になってる? ような〜…………はは、はははは……………」
雷羅は、慌ててブレスレットをはずすと、床に叩きつけ、叫んだ!!
 「に、逃げろ〜〜〜〜〜〜〜!」


 総司令官とイグアノ族族長は、司令官室を走り出て、慌ててエレベーターに駆け込み屋上に出ると、さっきの“空飛ぶハリネズミ”の消えた方向に急いだ。
「暗黒龍王様、報告では、先ほどの謎の飛行物体は、紫蘭王子一行が乗った飛行船だそうにございます!」
そう言いつつ族長は、手すりから身を乗り出し手にした双眼鏡をのぞいた。すると!
「な、なんだなんだ? どうなっとるのだこれは、一体〜〜〜〜???」
そこには、発電所から走る光と共に、まるで噴水のように空中に吹き上がっては落ちる、我が屈強のイグアノ軍団の姿があったではないか!!
「!! こ、これは!!?」
総司令官も、双眼鏡の中に映し出されるその異常な光景に、思わず見入った。
 やがて、イグアノ兵の噴水が止むと、
 バリバリバリイーーーーーーーー!!
今度は都(みやこ)中に伸びる送電線に、発電所から同心円を描くようにスパークが走った!
 スパークが駆け抜けた地点では、送電線がブヨンブヨンと波打ち、さらなる異変が勃発した!
 『ど、どうなっているのでしょうか一体? 中継カメラが捉えました通り、紫蘭王子一味は飛行船の操縦室もろとも発電所に落下した模様ですが、そこに、今日新設されたばかりの国防警視軍が駆けつけましたところ、信じられないことに、まるで噴水のように兵士が空中に吹き飛ばされてしまいました! しかも見て下さい! 今度はさらに、街中に摩訶不思議な異変が起こり始めましたあっ?!』
さっきまで、ノー天気にしゃべっていたアナウンサーが、絶叫した!!
中継カメラが捉えたもの!
 それは?!
 ズドーン!、パピューン!、スコーン!…
街路灯の電球部分が次々とはじけ、さらに根本から持ち上がり、ロケット花火のように空中に飛び上がる姿だった!
 『飛んでいるのは、街灯だけではありません! 信号、電車、電話線、地下送電線、あちらの工場、こちらの商店、ああっ、この放送をお伝えする中継車、カメラ、おっと、わ、わたしのマイクまで、ま、マイク、ああ〜〜〜〜〜…………… ザ、ザーー……』
こうして、放送された物や中継機材はおろか、放送局、それを受信していた家庭のテレビ、電話、扇風機、洗濯機、その他ありとあらゆる都中の“電気伝導体”が、重力の束縛から解き放たれ、一斉に空中に浮揚しはじめたのだった!!

 一方大地たちは、この“予想もしなかった事態”を利用して発電所から飛び出し、街の大通りを駆け抜けていた、
一行の周りや上空には、無数の電線や電柱、地下ケーブルが浮かび、これまた数え切れないほどの電気製品が、家やビルの天井を突き破っては空中に漂っていて、その下では、一般市民がパニック状態で郊外へと逃げまどっているのだった!
 「やっべー! こりゃ多分、送電線を流れる電流が一種の“搬送波”になって、発電機の暴走で溢れた反重力エネルギーを、街中に運んじまってるんだあ!!」
雷羅は、このとんでもない状況を走りながら説明した!

 そして、この異変に対しては、国防警視軍ビルも例外ではなかった!
バリバリッ!
と、スパークが走り抜けるや、国防警視軍ビルもまた“電気伝導体の反乱”に遭遇した!!
 ドッカーン、ドコン、ドドドド!!…
屋上を突き破り飛び上がる、照明や電話電線に、
「□☆▽「○∞!!!!!!」
抱き合って目を丸くする、総司令官とイグアノ族族長だった!
 「な、なんなんだ奴らは? 一体何をやらかしたんだ? 奴らは、通り過ぎる街を次々と破壊したが、今度は、自分たちの都さえもホントに破壊しようとしているのか????」
「この世の暗黒化を願う暗黒龍王様をもしのぐ、極悪非道ぶりでござりまするな!!」
あきれかえる総司令官に、イグアノ族族長ンタラチュラもまた変な相づちを打った。
 パニックと悲鳴に包まれた都では、人々が一斉に郊外へと避難していた。
そしてそれは、屈強のイグアノ兵も例外では無かった。彼らもまた恐怖にかられ、街の外へ外へと逃げ出していたのだ。
 その人混みの中を、ただ一つ、大地たちのグループのみが、流れに逆らい反対方向に駆け抜けていた!
なぜなら、彼らの目指す場所、目指すものが都の中心にあるからなのだ!
目指す場所、それはただ一つ、王宮!
 目指すもの、それはただ一つ、草薙の剣!!

 一方、
 ボヨヨン、ボヨヨヨ、ボヨヨヨゥォン!!
反重力発電機の暴走、そして不規則な振動は、今や限界に達しようとしていた!
反重力波は、もはや発電所の建物全体に溢れ、激しい“うなり”は、
 ズッドオオオオオオーーーーーンン!!
その空間の、限界点を一気に破壊した!
 バキバキ、ベリベリ、ベキベキ!!
この時、巨大な発電機は、ありとあらゆる轟音を発し、今度は自ら空中浮揚を始めたのだった!!
 そう、“彼”は、建物や地面もろとも、長年働いたこの地からの旅立ちを決意したのだ!!! 
今や“超巨大飛行船”と化した反重力の塊は、係留ロープを引きずるかのように、無数の電線、そして“アンカー”の鉄塔や電柱、その他、街中の諸々を引き連れ上昇を始めた!
 そして百メートルも上がっただろうか、飛行船は“反重力エンジン”の次のうなりの頂点を迎えたかと思うと、
 バヒョーーーン!!
急激な加速力を得て、都の上空から、そして街の外へ避難した住民の視界から、瞬間的に消滅した!
 遙か宇宙の彼方へと……!!!!!

 街が壊滅していく様子を、総司令官とイグアノ族族長は、警視庁ビル屋上の手すりにしがみつき、ただただ呆然と見ていた。
この建物も、街中の建物同様ボロボロで、斜めに傾き、手すりにしがみついていなければ立っていられないのだった。
 「あうあうあう………」
もはや二人に、言葉は無かった。
 が、この時!?
総司令官が双眼鏡をのぞくと、電気製品と人陰が消え、たった今廃虚と化した街の中に、なお走り抜ける一団があった!
 「やつらか?! ぬお、あの方角は……!」
総司令官は双眼鏡を、
「…………………!!!!」
無言のまま、道側へとと投げ捨てた!
「へ、陛下?」
 「くっくっく……。やはり、余自ら出ねばならぬようだな……。茶番は終わりだ!!!!!」