第一章 謎の三姉妹登場その2
一,謎の三姉妹登場、ようこそわたくしたちの時代へ その2

 「き、聞いたあたしが、バカだった! こんな事なら、とっとと帰って実験しとくんだったよ〜〜〜〜っ!!」
未来は、恥ずかしさと怒りでますます顔を真っ赤にし、頭から蒸気をブリブリ吹き出しながら、肩を怒らせまくり、歩道をずんずんと歩いていた!
 そこへ、
「ま、待てよ未来〜。な〜に急に怒ってるんだよ〜? ど〜したんだよ〜〜〜〜〜???」
と、大慌てで喫茶店の精算を済ませた大地が、追いついて来た。
「知らない、バカ! ほんっと〜〜〜に、バカ!!」
未来は、思いっきり顔を背けた。
 そして、だんだんとその頭の中には、学校での怒りが一緒にこみ上げてきたのだった!
「だいたいアンタ、あたしたちが“いいなずけ”だなんて、学校で言いふらさないでくれる?」
 「なんでぇ? 本当のことじゃんか。」
キョトンとする、大地。
「本当のことって、あのね、ムカつく〜。それは、あたし達が生まれる前、うちのおばあちゃんと大地のおじいちゃんが、勝手に決めた話でしょ?! あたしは認めてないんだからね、あたしとアンタの婚約なんて絶対に! マジ、よしてよね! マジ、ムカつく〜〜!!!!!!!!」
未来は、額に怒りマークの青筋を立て、ますます怒った!
 「えーっ、そりゃそうだけど、そうなのかー? オレはてっきり未来も……」
「あたしも……何よ?」
 未来は立ち止まり、
「言っときますけどね、あたしにはあたしの、夢があるんだからね!!!」
と、大地の顔を指さした!
 「夢え? 夢ってどんな…?」
「あたしはね、大学に入って、物理学の研究一筋に生きるの。そして、この宇宙の起源の謎を、解き明かすのよ!」
空を見上げ、目を輝かせる未来! その目は、遙か遠くを見ている!?

 「ま、マジかよ?」
大地は、顔を少しひきつらせながら、未来を見た。
「マジよ、マジ! 超〜、マジ!! そして海外に留学して論文を発表し、若干(じゃっかん)二十五歳にしてその研究が世界に認められ、あたしはノーベル物理学賞をもらうのよ! いいえ、そんなんじゃ物足りないわね! もっと、ものすご〜い〜、そう、“ノーベル特別スペシャルMVP大賞”なんてのが、あたしのために特別に創設されて、それをあたしはゲット! するのよ、絶対〜〜〜〜〜〜っ!!!」
 未来の目の中には、メラメラと野望の火が燃えている!!
「の、ノーベル特別……は、ははは、そ、そりゃすごいじゃん……はは〜。(ほ、本気かコイツ〜〜〜?………)てことは、あれか、未来の将来は研究一筋で、結婚なんかとんでもないと?」
「チッチッチ、甘〜い!」
未来は、大地の目の前で、舌打ちに合わせて右手の人差し指を左右に振ってみせた。
 「私はね、その勝ち取った名声、そして、この生まれ持った教養と美貌とで、世界一の超二枚目大金持ちをゲットするのよ! そして二十八歳適齢期で、超ラブラブ結婚するのぉ〜。キャ〜、未来ちゃんステキ〜〜〜♪ ラブラブ〜〜〜。。♪♪♪ うぷぷぷぷぷぷ〜〜〜〜〜〜〜〜〜。。。♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪」
顔を両手で押さえ、照れまくる未来! 彼女は、もうすっかり自分の世界に浸っていた!!
 そして、
「でね、三人の子供と優しいハズバンドに囲まれて、超シ・ア・ワ・セ・な一生を送るのよ。ああ〜、すばらしきかな、我が人生〜〜。ラ〜ララララ…………♪♪」
と言うと、今度は道の真ん中でクルクルと踊りだした?!
その周りにはたーくさんのハートマークが……
 これには、
「は〜〜〜………………………………(コイツ、ほんとはアホじゃないの?)」
と、さすがの大地も口をあんぐりさ、せあきれ果ててしまった。
 そして、
「だからね、貧乏剣道場の跡取りなんか、メじゃないの・よ。メ、じゃ!」
と、ウインクして、またまた指を左右に振る未来に、
「…………頭痛くなってきた、オレ〜…。」
思わず大地は、頭を抱えるのだった。


 「二人が帰って来ましたよ、雷羅!」
「来たでちゅよ、雷羅お姉ちゃま! いったい、修理に何時間かかってるでちゅか!」
向こうから歩いてくる大地と未来を、舞羅と愛羅は公園の茂みからのぞいていた。
 雷羅は、その後ろの地べたにあぐらをかき、汗をびっしょりとしたたらせながら、まだ必死に装置の修理をしていた。
「うるせー、分かってるよ! ……よし、ほ〜ら出来た♪ これでいい、蓋をしてスイッチ・オンと♪」
 雷羅は、修理し終わったばかりの“ダウジングロッド・雷羅スペシャル”を手にすると、再びそのスイッチを入れた。
すると、ロッドはしばらく自由に動いていたが、やがてまた、こちらへ歩いてくる大地をピタリと指し示したのだった。
「おーし、成功だあー! やっぱり雷羅ちゃんって、天さ〜い!」
雷羅は、装置が無事また動作しだしたのを確認すると、
「さてさて、シンクロ率は…?」
と、装置の中央にある緑色のボタンを再び押した。
 と?!
「……い? う? な…なに〜〜〜っ????!!」
装置の表示を見て、雷羅は思いっきりのけぞった!
 「ま、また何かあったでちゅか?」
「今度はどうしました、雷羅?」
慌てて装置をのぞき込む、舞羅と愛羅!
「そ、それが…、シンクロ率百………」
「すごい、百パーセントでちゅか?」
「それじゃあ、完璧なのですね!!」
二人は、目を輝かせた!
 しかし、
「いや…百十、百十五、百二十、百二十五……」
数値は百を越え、なおもどんどん跳ね上がっていくのだ!
「……百三十、百四十、百五十、百五十五……。百五十五パーセントお??? あっれー? はは、はははは?????」
雷羅は、ひきつった笑いを浮かべ、頭をひねった。
 「完全同一体で百パーセントのはずなのに、なぜ、五十五パーセントも余分なのですか、雷羅?」
舞羅が、冷静に問いかけた。
「ど、どうしてって〜〜………????」
「やっぱバカ科学者でちゅ!!」
「て、てんめ〜、お姉さまに向かって……!」
「はいはい、ケンカはあとあと。もう、日が暮れます。とにかくもう、あたくしたち時間がありませんのよ!」
あくまで冷静な舞羅だった。

 三人は、歩道に出ると横一列に並び、大地たちに向かってゆっくりと歩き出した。
「んー? なんだあ、ありゃあ?」
大地は、前から歩いてくる変な格好の三人に気付いた。
 そして未来も、
「うは♪ なにあれ、変なカッコー。近くで、アニメのコスプレ大会でもやってるのかな? ぷ、見て見て、ほら、通行人が避けて……」
と、最初は、笑いながらを見ていたが、
「??? げ? あの三人こっちに向かってくるよ?……。や、やだ! 目線も真っ直ぐこっちだよ、大地ぃ〜〜〜!」
と、どうもこの三人が、自分たち目がけて近づいてくことに気づき、あわてて大地の後ろに隠れたのだった。

 三姉妹は、そのまま二人の目の前まで来ると足を止め、大地の顔を、じーーっと見つめた。
「?? あ、あのー、オレになにか……」
わけが分からず、とまどう大地。
 すると、
「……助けて、ほしいのです。」
と、舞羅が静かに口を開いた。
「へ?…………… 助けて……って……………あの〜……?」
大地は意味が分からず、ポリポリと頬をかいてみた。
「説明している時間は、ないのです。今すぐあなたを連れて帰らないと、大変な事になるのです。」
「は、はあ〜?」
舞羅は、不思議そうに未来と顔を見合わせる大地にかまわず、
「愛羅、頼みます!」
と、下の妹に合図を送った。
 すると、
「はいでちゅう♪」
愛羅はすぐに返事をして、いきなり大地の腕にしがみついた!
「な、なんだあ〜?!!!」
のけぞる大地!
 愛羅は、
「今でちゅ、雷羅お姉ちゃま!」
今度は、真ん中の姉に合図を送った!
 と、
「よっしゃあ!」
 雷羅はうなずき、左手を前に差し出して、ブレスレットの一つに右手をかけた!

 「メインコンピューター、命令! 時空間断層オープン、回廊リセット! よっしゃ、オープン確認! オーケーだぜ舞羅姉貴!“時空召喚の印”を頼むぜ♪♪」
「分かりました!」
今度は舞羅がうなずき、腰からさっと黒光りする“何か”を右手で取り出すと、それを顔の横に持ってきた!
「な、なんだ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?」
思わず後ずさりする、大地!
 が、
「…………って、え? そ、そろばん?」
 そう、舞羅が出したモノ、よく見るとそれは……そろばんだった!!
それも、昔懐かしの一つ玉の多いそろばん!?
 舞羅は、右手で持ったそろばんに左手のひらを当てると、
 「きえ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」
今度は、奇妙な雄叫びを上げた!
 「わああっ!?」
「きゃ〜〜〜っ、なんなの? なんなのいったい?」
またまた驚く、大地と未来!
 舞羅はかまわず、
「行きますわよ“時空召喚の印”! いん……いん…いん、いんいち……が、いち。いんにが、に。いんさんが……」
と言いながら、今度はジャカジャカとそろばんをはじき出した!
 驚きを通り越し、呆気にとられる大地と未来。
「九………九ぅ? あ、あのー……、なんスか、あんたたちは……?」
「しっ、おだまりください。印が組めませんわ。いんはちが、はち〜〜、いんくが、きゅう〜〜〜〜!、ああっ…………、来た……来た来た来た、来ましたわ〜〜〜〜〜〜っ! いんじゅうが、じゅう〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜! あちょーーーーーーーーーーーーー@♯♭〓※§♪〆*」
なんと、舞羅は、そろばんをジャカジャカジャカと打ちならしながら、右に左に踊り始めたのだ!
その視線は空をさまよい、最初は、ただ単調な左右の動きだったのが、だんだんと不可思議な動きに体が支配されてくようだった!
 そう、彼女は今まさに、そろばんの音と踊りを通して、トランス状態に入りつつあったのだ!

 一方、この、計五人の回りでは、通行人達がこの奇妙なパフォーマンスに足を止め、十重二十重と取り囲んでは、クスクスと笑いながら見物していたのだった。
 その中で、
「父と子と聖霊の御名において、エコエコ南無八幡大菩薩〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」 
もう絶好調の舞羅!
 「ちょ、ちょっと、あんたたちいったい何? ひょっとして、何か変な宗教の勧誘とかじゃないでしょね〜? あぶないあぶない! こんなのほっといて、早く行こーよ、大地!」
未来は、この、モロあぶなそうな三人組から助けようと、大地の腕を後ろへ引っ張った。
 と、それを見て!
「ば、バカ、さわるな! 定員オーバーになっちまうじゃねーか!」
雷羅が、青い顔をして叫んだ!
 なんと、未来が大地の腕に触れた瞬間、雷羅のブレスレットが怪しげな光を発し、不安定に明滅し始めたではないか?!
 その時!
遠くから、この騒ぎに超高速で近づく人影があった!
 「おのれ、大地〜〜〜〜〜〜! キサマと言うやつは、ワシの言うことを聞かぬばかりか、そんな往来のど真ん中で、見知らぬ婦女子といちゃつきおって〜〜〜〜〜! そこへ直れい! 今すぐ、手打ちにしてくれるわーーーーーーっ!!!!」
「げ? じ、じいちゃんーー!」
そう、それは大地の祖父の姿だった!
 綴目大全八十歳。人間とは思えぬような超高速で接近したかと思うと、その体は瞬間的に宙を舞い、軽々と野次馬の頭上を飛び越えた!
 そして!
「キエエーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーイ!!」
気合いと共に振り下ろす杖は、“怒りの気”でまばゆく発光していた!!!

 舞羅は、大地の手を未来が引っ張ったのに続いての、この大全の予期せぬ乱入に、
「雷羅、これでは無理です、一旦中止を!!………」
と、叫んだ!
 が!?
「だめだ姉貴、すでに転送が始まっちまった! もう間に合わねえーーーーーーー!!!」
時すでに遅いらしく、雷羅が泣きそうな顔をして声を上げた!
「えーっ、どうなるんでちゅかあ?!! きゃあああーーーーーーーー!!!」
そして愛羅も、悲鳴を上げた!
 次の瞬間!
 ビカアーーーーーーーーーーーッ!
突如、この六人の回りに激しい光の渦が出現した!
 そして!
 ゴオオオオ、ドガラガラガラ……
突風が吹き荒れ、雷鳴があたり一帯に鳴り響いた!!
この、目もくらむ激烈な光の渦は、激しい放電を身にまといながら六人を飲み込むと、一気に、天空高く巻き上がる巨大トルネードと化し、
 ズッドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンンッッ!
激しい衝撃波と共に、遙か宇宙の彼方へ突き抜けた!!
 ………が、全てそれは、ほんの一瞬の出来事だった。
風と雷鳴はすぐにおさまり、通行人が再び目を開けた時…………

“六人の姿は、跡形もなく消滅していた!!!!!”


 「な、なんだこりゃ? か、体が動かないぞ?!」
大地の体は、ピクリとも動かず固まっていた。
「ど、どうなっとるんじゃこれは??」
それは大全も同じだった。
 大全も、大地の頭に杖を打ち下ろし、ヒットした瞬間のままの状態で空中に浮かんでいた。
いや、大全だけではない、未来も、あの三姉妹も、六人全員が、消えた時のままの状態で固まり、不思議な空間に浮かんでいたのだ!
「どこ、なの? こ・こ…」
未来は、体を内部からよじられるような奇妙な感覚に襲われ、必死に耐えていた。(もっとも、動けないからじっと耐えるしかないのだが)
 「ここは……“時空間断層”です。時間と空間の狭間、ですわ……。あ、申し遅れましたが、わたくし、神司(かみつかさ)家の“神霊哲学”を司ります、長女の舞羅と申します。」
舞羅が疑問に答えた。
 ―と言っても、彼女も唇すらピクリともは動かないのだが、不思議と意志は伝わるのだった。
「時空…間…………断層? なんだそれ?」
大地が尋ねた。
 「なーんだ、お前、そんなことも知らないのか? あたし、次女の雷羅、“科学”担当だ。つまり、時空間断層ってーのはだな、時空間の流れを縦に切り、切った左右をそのまま垂直にずらした時生じる“絶対無”の空間の事だよ。」
「絶対無…………って、…つまり、“存在しない空間”?」
驚く未来。
「ほ〜、おねーちゃん、少しは理解力あるみてーだな。つまりだ、分かりやすく言えば、“地層”と同じ事だよ。地層に縦に断層があると、そこを境に左右で年代がずれてるだろ? 同じように、自分たちの回りの時空列を“擬似的”に横に引き伸ばした状態で、縦に亀裂を入れてずらすと、違う時空間が横に来るんだよ。で、それを利用して横に飛び移ると、一気に違う時空間に移動することが出来る、ってわけさ。で、その亀裂、つまり“時空間断層”が、今いる、この空間ってことなんだよ。」
 「あたち、三女の愛羅、医学を司りまちゅ。雷羅お姉ちゃまの説明は、難しすぎまちゅ。つまり早い話、あたちたち、時間をワープしてるんでちゅ!」
「わ、わーぷう〜? じ、時間のワープって、オレたちいったいどこにぃ〜?」
「あたちたちの時代、つまりあなた方の時代の、ずぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っと未来に、でちゅ!」
「未来〜?!」
愛羅の説明が、一番分かりやすかった。

 体を包む空間は、密度の差なのか、ゆがみながら絶えず虹色の明滅を繰り返し、体の周りを、そして中を通り過ぎていく。
「あ、あああ、ああ〜〜〜〜〜………」
気が遠くなるような、奈落の底に落ちていくような、なんとも言えない不思議な感覚が、未来の、そしてみんなの体と脳髄を貫いていった。
 そして永遠のような、だが瞬間の出来事にも思えるその“時”が、不意に終わった。
 と思うと!
 バキーン!!!!!
「あいたーーーーーーーーーーーっ!」
それまで止まっていた大全の杖が、大地の脳天をぶち抜いた!
そう、この瞬間、みんなの体に自由が戻ったのだ!!
 「じ、じじい、てめええーーーー…………って、あれ? こ、ここは……ど…こ・だぁ…?」
みるみる大きくなるたんこぶを押さえながら、大地は周りを見回した。
そこには、一瞬前までいた街角とは明らかに違う空間が、広がっていた。
 暗い空間、点滅するいくつもの光、じめじめした、かび臭いにおい、そしてオゾン臭いにおい……
徐々に暗闇に慣れてきた目で回りを見回すと、六人は、点滅する機械郡に囲まれた、狭い、暗い、じめじめした、かび臭い、そしてオゾン臭い部屋の中央に立っていたのだ。
 三姉妹は、呆然とする大地たちに向き合った。
 「ようこそ、わたくしたちの時代へ。そしてわたくしたちの国、“地球王国”(ちたまおうこく)へ。」
そう言うと、舞羅は深々と頭を下げた。
「ち、ちたま?……」
顔を見合わせる大地たち。
「はい…、こここそが、わたくしたちの世界“地球(ちたま)王国”なのです。そして、私たちが今立っている場所は、我が神司家に代々伝わる、太古の祈祷術を元に再現した“神方陣”(じんぽうじん)の中なのです。」
舞羅は、静かな口調で説明した。
 「神方陣?」
「こ、これは〜〜〜〜〜????????」
大地たちは下を見て驚いた!
 なぜならそこには、子供の頃からよーく見慣れた“図形”が、白い線で描かれていたのだ!
 それは……………、
「ドラ…えもん〜〜〜〜????」
未来が甲高い声を上げた!
 「どら…えもん、というのですか正式には? すばらしいですわ! 瞬時にこの方陣の名前を挙げられるとは、さすが神世紀時代の方々です!」
感激する舞羅。
 そう、なんと六人は、大きなドラえもんの絵が描かれた、ちょうど“四次元ポケット”の場所に立っていたのだ!
 「では、ご存じでしょう? この図形の、この“舟形”をした場所は、異空間を通り別の時代へ抜けられる力があると、伝えられています。」
「そ、そりゃそうだ。だってこれ、“四次元ポケット”だもん。は、ははは〜……。」
顔をひきつらせる大地。
 「さらに、方陣の周りをご覧ください。周りには、幸運をもたらすと伝えられる“神々”を配し、さらにそれらを、重要な儀式で唱えられたという“呪文”で結んでいます。」
「じいちゃん、あれって…」
「うむ。七福神……じゃな。たしかに、幸運をもたらすには違いないが〜……」
なんと、ドラえもんの周りには、陽気な笑顔を浮かべた大黒様や布袋様たちの瀬戸物像が並べられ、それらはさらに、ドラえもんの枠線に沿って書かれた“文字列”で結ばれていた。
 「じゅ、呪文って……?」
三人はその文字列をのぞき込んだ。
「これは………、うむ、多少誤字はあるが、間違いなく……般若心経じゃ!」
 〈観自在菩薩行深般若波羅…〉
 そう、大全の言うとおり、そこに書かれた文字は、確かに般若心経だった!
「ドラえもん、七福神、般若心経〜? ま、マジかよ〜〜。なんか悪い冗談か? それともあんたら、ひょっとして頭おかしいんじゃねえかあ?」
「な、なんだとてめえ!」
大地のバカにした口調に、雷羅が怒った。
 「まってよ、大地! 七福神の頭を、見て! ほら、それぞれの頭から線が伸びて、奥の機械につながってるよ!」
なるほど未来の言うとおり、よく見ると確かにそれらは、狭い部屋を取り囲む異様な機械群と、電線のようなものでつながっていた。
「ふ、ふふん♪ よーく気付いたな、ねーちゃん! 舞羅姉貴がこの方陣で“時空召喚の術”を行い、その神霊パワーを、あたしの作った“亜空間増幅装置”で増幅し、見事に時間を飛び越えたってわけだ! どーだ、まいったか! 雷羅様って、てーんさーーい。がははは♪♪♪」
雷羅は機嫌を直し、腰に両手をあて得意げに威張りまくった!
 そのスカートを、
「雷羅お姉ちゃま、あれ……!」
愛羅が引っ張っりながら、震える声と手である方向を指さした。
「ん〜、なんだよ愛羅?………ん? んん? …………うげゃ!!」
言われた方を見て、驚く雷羅!
 なんと、そこには、バチバチと異様な放電に包まれた装置が!
そして放電は、みるみる広がり、
 バチン! ド・ドン!
と装置をはじき飛ばしながら、部屋全体へと広がった!
 そして!
 バコン! ベコン! ズドドーーン!
と、音を立て、あちこちから炎、火柱、爆風が吹き出したではないか!!
 「ヤバい! やっぱ“定員オーバー”で、回路が過負荷状態になってたんだ! 全員、地下壕に緊急待避しろ! すぐに亜空間爆発が起こるぞ、急げーっ!」
雷羅は、切迫した声を上げたかと思うと、床にあるマンホールの蓋のような丸い鉄板を開け、そのまま中へと飛び込んだ!
 「な、なんでちゅか、自分だけ〜〜〜〜〜!!」
「みなさん、早く!!」
舞羅と愛羅は、唖然としている大地たちを大慌てでその中へ押し込むと、すぐに自分たちも後に続き、急いで蓋を閉めた!
「伏せろーーーーーっ!」