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「雷羅、あの少年に間違いないのですね?」
塀の陰から、その一部始終を見ていた舞羅が、目を輝かせながら雷羅を振り返った。
「ああ…、このロッドを見てみなよ姉貴。ホラ、さっきにも増して、ビーンビンに反応してるぜ♪」
雷羅は、“ダウジングロッド・雷羅スペシャル”とやらいう、例の怪しげな機械を目の前に差し出した。
すると、自由に動く二本のロッドは、呼応し合うかのように揺れが揃い、まるで強力磁石に吸い寄せられるかのように、遠ざかる大地の後ろ姿をまっすぐ指し示していた。 |
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「な?」
「確かに………」
「ほんとでちゅね……」
雷羅は、二人にそれを確かめさせると、
「ど〜れどれ、では次に、どれくらいシンクロしているかな〜?と……」
と、今度は、装置の中央にある緑色のボタンを押してみた。
「えーと、シンクロ率は?……、うっひゃー!」
驚きの声を上げる雷羅!
「ほら、ほらほら見なよ姉貴! 愛羅! これまで調べたどの旧バージョン体より、遙かに高いシンクロ率だぜ!! ほら、レベルがどんどん上がって行く………。九十、九十五、おいおいウソだろ、すげーー、九十八、九九…………、あ、あ〜〜〜〜っ?!!」
またもや雷羅が声を上げた。だが今度は、驚きと言うより悲鳴に近い!
「ど、どうしました雷羅?」
「どうちたでちゅ? う? あ、あーっ、火事でちゅ、機械が火を噴いてまちゅ〜〜!」
見ると“ダウジングロッド雷羅スペシャル”は、
シュシュシュシュシュ〜!
突如煙を吐き出したかと思うと、
ボンッ!
音を立てて発火した!
「きゃあっ!」
あわてて離れる舞羅と愛羅! |
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「ら、雷羅お姉ちゃま! その機械、やっぱり欠陥品…」
「や、やかましわ! どわあ〜あーーちちちち!! や、やべえーーー!!!」
雷羅は、ヤケドしそうになり、あわてて装置を前に放り出した!
そして、道を挟んで道場の反対側にある家の、生け垣の下から手で土を何度もすくうと、炎と煙を上げる装置にかぶせまくった。
「だ、大丈夫ですか雷羅?」
「う、うん、あぶねえあぶねえ! なんとか、軽いヤケドで澄んだよ姉貴。ほら!」
愛羅は、舞羅に両手を広げてみせた。
これに愛羅が、
「バカでちゅか! 誰も雷羅お姉ちゃまなんか心配してまちぇん! 大丈夫かと聞いてるのは装置の中身の事でちゅよ!」
と、横から腕組みをして突っ込みを入れた!
「な、なにおーーー! てめえ愛羅、またケンカ売ってんのか! 舞羅姉貴が、そんな薄情なわけねーだろが!」
「はいはい、もう〜、いちいち姉妹ケンカしませんのよ、ケンカ!……で、雷羅、装置の中身は大丈夫なのですか?」
グサリ!
雷羅の胸に、舞羅のとどめの言葉が突き刺さった!
「………………!! ……は、はは、姉貴〜〜」
顔をひきつらせるしかない、雷羅だった。
しばらくして雷羅は、無事鎮火した装置を拾い上げた。
そして、上のカバーをはずし、
「あー、よかったあ。 焼けたのは“四次元回路”だけで、中の“瓶”は無事だよ。しかし、こりゃだいぶ修理が必要だなあ。………ひょっとして、時空間移動のショックで、四次元回路に無理が来てしまってたのかもな……」
と、中を点検しながら説明した。
「もう一度、ちゃんと確認しなければなりません。間違いは許されませんからね…。雷羅、それで修理にどれくらいかかりますの?」
「どうかな〜……。あんまり工具が無いからなあ………、多分、三・四時間ってトコかな。」
「頼みますよ。日没までに帰らないと、“あの方”のお体が持ちません!」
舞羅は、祈るような目で言った。 |
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三人は、大地たちの歩いていった後を途中までつけると、
「あの二人、どうやら学校に登校するみたいですわ。とりあえずここで、修理をしながら帰りを待つことにしましょう。」
と、住宅や団地が立ち並ぶ街の一角にある、小さな公園へと入った。
そして、道路に面した植え込みの前にあるベンチを見つけ、そこに陣取ったのだった。その反対側には小さな砂場があり、そこでは数人の主婦達が、小さな子供たちを遊ばせながらのんびりと世間話をしているのだった。
雷羅は、ベンチ前の地面に直接あぐらをかいて座り、腰に着けた小さな箱から、ドライバーやペンチ、見たこともない工具類を取り出すと、ベンチを作業台に見立てて“燃えてしまった”自慢の装置を修理し始めた。
「舞羅お姉ちゃま、雷羅お姉ちゃまの“欠陥品”はともかく、あの少年、舞羅お姉ちゃまの“神霊印象”ではどうなんでちゅか?」
雷羅の作業の横で、愛羅は舞羅と並んでベンチに腰掛け、足をぶらぶらさせながら姉に尋ねた。
「ええ、私も霊的に透視してみましたが、確かにあの少年は“旧バージョン体”に間違いないと感じます……。それだけではありません。なによりあのお二人の顔、あの術(わざ)……!」
そう言うと、舞羅は祈るように手を組み、目を輝かせた。
すると、横で雷羅も作業をしながら、
「ああ、あれにはあたしも驚いたぜ。本人だけならともかく、そのジイさんまでだもんな。こりゃ、もしかするともしかするかも……」
と、意味ありげにうなずいて見せた。
「もちかすると?」
愛羅は、その意味が分からず舞羅の顔を見上げた。
「雷羅の機械を信用するとすれば、恐らくあの少年は、これまで調べた中でも最高の旧バージョン体なのかもしれません。それだけでなく、もしかすると血筋も………」
「“信用すれば”は余計だぜ姉貴! だけど、うん、あたしもどうもそんな気がするな。」
雷羅は、再びうなずいて見せた。
「ふーん。なるほど、血筋でちゅか……。それはそれで、医学的にも興味深い話しでちゅね。でも、顔つきは、たちかに似てるけど、あの高貴なお方に一番チンクロする旧バージョン体が、あんな下品そうな少年だなんて、あたちにはまだ信じられないでちゅ! その上血筋までって言うのなら、それは我が家の沽券(こけん)にもかかわる話ちでちゅよ!!」
愛羅はそう言うと、不満そうに頬を膨らませた。 |
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「あ、お母さん、今日図書館寄ってくから、少し遅くなるね。え? おばあちゃんが、日暮れまでには帰って来いって? なんだろ…、ん、分かったよ、だいじょうぶ。どうせそこまでは、遅くなんないから。うん、じゃ〜ね、バイバイ。……え? 隣の大全おじいちゃんが、来てる? 電話、代わるって…え、あ、おじいちゃん? え? 大地はケータイの電源切ってるから、つながらない? はい、“早く帰って来い、このバカ孫が”って伝えればいいのね? 了解ーー……。」
未来は、ピッとスイッチを切ると、
「ったく、あたしゃアイツの留守電かいっつ〜の! ブツブツブツ……」
と、文句を言いながら、携帯を胸の内ポケットにしまい込んだ。
ここは大地と未来の通う“県立西東高校”で、つまり二人は同じ高校に通っているのだった。
「あ、ほらほら未来、文字通りあんたの“未来”の王子様が、お迎えに来てるぞ〜。うぷぷぷ〜♪」
後ろから、クラスメートの一人が、ニヤニヤしながら未来に話しかけた。
「未来の王子様あ?」
その言葉に、未来は帰り支度の手を止め教室の入り口を見た。
するとそこには、
「未来〜、一緒に帰ろうぜーーー。」
と、笑顔で手を振る、大地の姿が!
「あ、あ〜、大地ね………。」
思わずガクッとなる未来。
未来は、横でニヤつくクラスメートに、キッと向き直ると、
「ジョーダン、だれが王子様よ! 言っときますけど、あいつは、ただの幼なじみなんだからね、幼なじみ! それ未満はあっても、以上はあり得ないの! も〜〜〜〜〜〜…!」
と、目の前で必死にブンブンと手を振り、思いっきり否定してみせた。
「えーっ、だってあんたたち“いいなずけ”同士なんでしょ? この前、カレ自身がそう言ってたけど?」
「え、ええっ? そそそ、そりゃ……、ま〜……(だ、大地のヤツ、バラしやがったなあ〜〜〜〜っ!)」
あわてて、しどろもどろになる未来に、
「ほらねー、やっぱりぃ〜♪♪♪」
ますますクラスメートの顔が、ニヤついてきた。
これに未来は、
「で、でも誤解しないでね、それはあたしのおばあちゃんが、勝手に決めた話で〜〜……」
と、顔を真っ赤にしながら必死で弁解しようとしたのだが、しかし、クラスメートは未来の両肩をぐっとつかんで、頭を左右に振りながら言葉を続けた。
「いーのいーの、隠さなくても。この、別名東大組といわれるA組の、しかもクラス始まって以来の“天才!”と誉れ高い、美人クラス委員長の未来が、H組、つまりオチコボレ組始まって以来の“アホ!”のアイツと、実は婚約してたなんていう話、『もう、この世の終わりかも〜っ』て、学校中で超ウワサなんだョ。ウ・ワ・サ。うぷぷ〜〜〜〜〜〜〜♪♪♪」
「う〜〜〜………(言えない、あたしが生まれる前、大地のおじいちゃんとうちのおばあちゃんとで、我が家に代々伝わる祈祷術のお告げをもとに、勝手に決めた縁組みだなんて、ばかばかしくて、とっても言えないよ〜〜!)」
未来は、もはや何も言えず、顔を赤くし固まったままの状態で、心の中で葛藤していた。
そう、実は、何を隠そうこの大地と未来は、正真正銘“いいなずけ”だったのだ!
というのも、二人は未来の祖母の占いで、
“今度生まれる二人の魂は、必ずや結ばれる宿命にある!”
というお告げが出て、生まれる前から勝手に婚約させられていたのだった!
「と、とにかくあたしはね、アイツといいなずけなんて、絶対絶対認めて無いの! 今時ばかばかしい!!!」
……とは言ったものの、未来は今日も、とりあえず大地と一緒に下校していた。(といっても、単に大地が、毎日の登下校時に、未来の後ろにくっついているだけなのだが)
未来は、もう大地のことはほっといて、カバンから小さなPDA(携帯通信端末)を取り出した。
「メールメール……と。あ、トーマスから返事が来てる! なになに……paper was presented by……………ふむふむ…………ええっ? じゃあ、あの理論に似たものは、もうすでに発表されてたのかあ…。となると、新しい数式が必要ね。うーん、やっぱりこの辺はもう一度、図書館の特別データベースでサーチしてみるしかないわね…………。サンキュー、トム。」
未来は、一人何やらブツブツつぶやいた。
そして、一通りの確認作業を済ませると、端末をカバンにしまいこんで大地に言った。
「ねえ大地、あたし図書館寄ってくよ?」
「図書館? おー、OK、OK! 図書館ねー、つき合うよ。ノープロブレム! だからそのあと、ファミレスにでもよってこーぜ♪」
あくまでノー天気な大地。
「あ、あーのねえ………、あたし、おじいちゃんからの伝言、伝えたよね? ありゃー、相当怒ってたからね、絶対! あたし、アンタのために言うけど、マジ早く帰った方がいいと思うよ!?」
「や〜だね!!!」
即座にキッパリ拒否する、大地。
未来は頭を抱え、首を右に振って言った。
「かーっ、ガキ! それにあたし、調べもの済んだらソッコー家帰って、昨日の実験の続きするんだからね。」
「実験〜? なんじゃ、そりゃ?」
「うん。今あたしね、ネットでアメリカの素粒子宇宙論のサイトに参加してんのよ。ま、実験といっても、コンピューターシュミレーションなんだけどね。向こうの研究者のコンピューターと直接つないで、宇宙誕生時の素粒子論におけるインフレーション理論に、私が考える超ひも理論の十次元不確定性モデルを数値化して入力するの。最近の宇宙観測結果では、宇宙には反重力的な作用が認められるので、それを加味した素粒子の生成消失の残存率とエネルギー量を…………と、大地に言っても、目が点か。」
そう、目が点、鼻水垂らし状態の大地だった。
(ほんとにコイツ、オレと同じ高校生か〜〜〜?)
「い〜や、分かった! 分かったから、とにかくどっか寄っていこう〜♪♪」
言うと、大地は未来の背中に右手を回し、左手でテキトーに前方を指さした!
「あ・の・ね〜〜! 今日は、大地の大事な大事な誕生日なんでしょ? 早く帰っておじいさんと、ナントカって儀式の準備しないと…」
「だーからさ!」
「え?……」
大地は、今度は未来の前に回ると、その両肩に手をかけ、ゆっくりと顔を近づけた。
「だーからあ、年に一度の大事な誕生日だから、未来と一緒にいたいんじゃんか!」
「い?」
ドキッとする未来!
大地は、なおも顔を近づけ、マジな表情でその目をじっと見つめ………言った!
「何が楽しゅうて、誕生日に年寄りと過ごさにゃならんの?!」
(あ、そういう意味ね。あーびっくりした)
ちょびっとアセった、未来だった。
というわけで、図書館のあと、結局未来は大地につき合ってしまった。
二人は、ファミレスに入ると窓際の席で向かい合って座り、とりあえずアイスコーヒーを注文した。
「ま、とにかく、誕生日おめでとさんね。」
そう言うと未来は、ちょこん、とグラスを上げた。
「サンキュ〜♪」
嬉しそうに、同じ動作をして見せる大地。
「ねえねえ、未来、言葉だけ? プレゼントはないの?」
「なんでそ〜なる! 甘えんじゃねえ!」
「やっぱし? なはは〜。」
大地はそう言うと、笑いながらストローを口にくわえた。
「ねえ大地……、ほんっとに帰んなくていいの? おじいさん待ってるよ〜?」
「いーのいーの。あんなくそじじい待たしとけば。ふんふんふん〜〜〜♪」
一向に気にする様子もなく、コーヒーを飲みながら下手な鼻歌を歌い出す大地。
未来は、そんな大地にあらためて聞いた。
「そのー、なんてったっけ? 今日やる“ナントカの儀”? それって、そんなに大切な儀式なの?」
「えー? ああ、“封印の儀”かあ?」
「うん、それそれ。」
「う〜ん……、よくは知らないんだけどさー、天昇龍剣の跡継ぎが十六歳になると受ける儀式で、ま、早い話、“お主も一人前になったのう〜”って認める儀式らしいんだ。」
「ふーん。……いわゆる“元服”ってわけか…。で、どんなことするの?」
この質問に、大地はきょとんとした顔で未来を見つめた。
「あれーっ? 未来は、何も聞いてないのかあ? 儀式は、大昔からずーっと、未来ん家でやる事になってるらしいぜ?」
「えーっ、じゃあ、うちのおばあちゃんが?」
「ああ……、なんでも、未来ん家とウチとは、古い、古〜〜〜いつき合いらしいからな……」
その言葉に、未来は、何かを思いだしたかのように視線を天井に向けた。
「う〜ん、そう、言われてみれば……、小さい頃、そんなコト聞いたような…聞かないような………。あたし、おばあちゃんのやってる祈祷術みたいなの、あんまし興味ないからなあ……」
「ま、そんな事どーでもいいけど、封印の儀ってのはさ、うちに代々伝わる神剣“虎鉄”(こてつ)ってのがあるんだけど、そいつをチョエー、トヤーッって、型どおり振り回すだけなんだ。よーするに剣の舞い、“剣舞”だな。」
掛け声に合わせ、大地は腕を振り回してみせた。
「な〜んだあ……、たったそれだけなの?」
「ああ。ただの儀式だからな。ほら、正統伝承者、つまりオレのオヤジってさあ、オレが小さいとき病気で死んでしまっただろう? だから、正式な伝承者が空位のままなんだよ。それでじいちゃん…」
「楽しみにしてたんだ。」
「そゆこと。」
「だったら、よけい早く帰ってやらなきゃ〜」
「ば〜か。も少しほとぼり冷まして帰らなきゃ、ま〜た、お仕置きされるだろーが。」
「ぷっ、……なるほどね♪」
未来は、思わず吹き出した。 |
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