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第一章
謎の三姉妹
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一,謎の三姉妹登場、ようこそわたくしたちの時代へ
「ここだ!」
「本当にここですか? 雷羅(らいら)。」
「間違いねえって、舞羅(まいら)姉貴。ほら、こいつを見てみなって。」
雷羅は手に持っている“とある装置”を差し出した。
それはテレビゲーム機のコントローラーに似た装置で、中央付近で二本の細い金属棒が二十センチほど立ち上がり、途中から水平に三十センチほど折れ曲がっていて、その先は左右に揺れ動きつつも、真っ直ぐ前の方向を指し示していた。
「雷羅お姉ちゃま、ほんとにその“ダウジングロッド・雷羅スペシャル”、信用できるんでちょうねー?」
「あったりめえだろ愛羅(あいら)! いったい誰が作ったと思ってるんでえ、あたしだよあたしー! この“天才科学者”雷羅様、一世一代の大傑作だよ! かっかっか!」
「でも今は、宇宙を重大な危機に陥れた、邪悪なマッドサイエンティストでちゅ。」
「愛羅、お前な〜〜!」
「だって、本当のことでちょう! こうなったのも、みーんな雷羅お姉ちゃまのせいでちゅ。お姉ちゃまが科学に突っ走って、舞羅お姉ちゃまやあたちのように、冷静に物事を判断ちないから…………」
「てんめーーー! あたしは神司(かみつかさ)家の“科学”を受け継ぐ雷羅さまだぜ? そのあたしが科学に突っ走ってなーにが悪い! “大統一論”の実証は、科学者の悲願だぞ! “神霊哲学”の舞羅姉貴や、“医学”を受け継ぐお前とは、違うんだよ! 感謝されこそすれーー……」
「おやめなさい、二人とも! 今は姉妹ゲンカしている場合じゃありません、私たちには時間がないのですよ!」
「お、おう。そうだ、そうだった。おーし、今日の所はカンベんしてやらあ。帰ったら覚えとけよ愛羅!」
「それは、こっちのセリフでちゅ!」
二人はそれぞれ捨てゼリフを言い合うと、再びロッドの指し示す先に目をやった。するとこのロッドはまっすぐ二本とも、小さな神社の横にあるしっくい塗りの白塀に囲まれた、昔ながらの古い屋敷を指し示しているのだった。
「すげえ、反応してる。多分、ターゲットはこの中だぜ!」
雷羅、そして舞羅と愛羅は、神社横の屋敷を囲むように高く長く延びる塀を見上げた。
そして、
「あっちに入り口がありまちゅ。」
道なりに延びる塀の途中に屋根付きの立派な門を見つけ、入り口から頭だけを出すようにして中をのぞき込んだ。
しかし、この姉妹らしい三人の格好はちょっと変わっていた。
一番上らしい、それでも十八・九歳くらいの舞羅は、透き通るような白い素肌に栗色の長い髪、額にエメラルド色の飾りをつけ、かすかに体が透けて見える、淡いピンクの薄布を体に巻き付けただけのその姿は、まるで生きた妖精か、天女のようだった。
次に十五・六歳くらいの雷羅。彼女は、小麦色すぎるくらいの健康的な肌に金色の髪、まるで湯上がりにバスタオルを巻き付けただけのような姿で、その両腕には、いくつもの、キラキラと金色に光るブレスレットをつけていた。
そして一番下の七・八歳くらいの愛羅、彼女は、赤い髪とくりくりした緑の目が印象的な、まるで、西洋のアンティックドールのような愛らしい少女で、フリルつきの、かわいい薄黄色の服を着ていた。そして、その背中には赤いランドセルを背負っていて、一見、ただのおしゃれ好きの小学生のようにも見える。
舞羅
(まいら)
雷羅
(らいら)
愛羅
(あいら)
「この板、なんて書いてあるんでちゅか、雷羅お姉ちゃま?」
末っ子の愛羅は、門横に掲げられた看板の文字を、すぐ上の姉に尋ねた。
「ん、んー?……、えーとな…………。なんて書いてあるんだ、舞羅姉貴? なはは。」
雷羅は頭をひねり、さらに長女に尋ねた。
「えーと……、これは……古い古い文字ですから………。てん・しょう…りゅう……けん………そう、『天昇龍剣道場』(てんしょうりゅうけんどうじょう)ですわ♪」
ポン、と手をたたく舞羅。
「さーすが姉貴! で、どーいう意味?」
「え? さ、さー、そこまでは〜………」
なんとか文字は読めたものの、舞羅もまた頭をひねった。
そう、そこはどうやら剣の道場らしかったのだが、その看板に書かれた文字を“古い古い文字”というこの三人は、いったい………?
一方、この古くて大きい屋敷、中をのぞくと母屋らしき立派な建物の横に、植木に囲まれて池や灯ろうの並ぶ和風の庭があった。そしてその向こうには、庭に面して開け放たれた平屋の古い道場が建っており、中では羽織袴(はおりはかま)姿で杖をついた白髪の老人と、カバンを肩に掛け右手に木刀を持った青いブレザー姿の、ちょっと間の抜けた感じもする短髪少年が向かい合っていた。
その二人を見て、
「お、お姉ちゃま、あ、あの二人は……!」
愛羅が、驚きの声を上げた!
「ええ、あれはまさしく……。雷羅、ではあのどちらかが?」
「いや、じいさんは違うよ、姉貴! この装置は、同じ歳の少年を捜すようセットしてあるから……ほら、見てみな! ロッドはあっちの若い方をしっかりと指し示してるぜ!!」
彼女の持つ装置のロッドは、確かにその少年の方を向いていた。
「へーっ、じゃあ、これは偶然でちゅか……。不思議な偶然も、あるもんでちゅねえ〜……。まあそれはいいとして、それよりあの二人、向かい合って、何してるんでちゅか?」
「うーん、ありゃあどうやら……、仲良く向かい合ってるってわけじゃ、なさそうだな……」
「ええ……。何やらあぶない雰囲気ですわね。」
そう、雷羅や舞羅の推察した通り、この二人はただ向かい合っているわけではなく、その目は燃え、お互いきつくにらみ合っているのだった!
「覚悟はよいな…、大地。」
眼光鋭く、老人が短い言葉を放つた。
と、
「それはこっちのセリフだぜ、じいちゃん! 今日という今日は引導を渡してやるぜ!」
少年も、木刀を正面に構えながら、驚くべき言葉を返した!
そう、今まさにこの二人は、対決の直前にあったのだ!
体こそ小柄だが、眼光鋭きこの老人、名を綴目大全(とじめ たいぜん)といい、齢(よわい)八十歳!
彼こそは誰あろう、現代の剣聖とうたわれし天昇龍剣道場当主、天昇龍剣第二百九十八代目継承者その人であった!
彼は、朝食後の爪楊枝(つまようじ)を口にくわえ、右手で持った杖を前についたまま、ゆったりとした自然体で立っていた。
そして相対する、この少し間の抜けた雰囲気の少年は、その孫、綴目大地(とじめ だいち)、天昇龍剣第三百代目継承者〜となる予定の〜十六歳高校生だった!
大地は、額(ひたい)に一筋の汗を浮かべ、祖父大全をキッとにらみつけながら、手にした木刀をゆっくりと持ち上げると、上段に構えた!
秋の青空にも似た、凛とした静寂があたりを包む。
そして次の瞬間!
「いやあああああーーーーーーーーっ!」
道場に、渾身の気合いが轟いた!
バーン!
激しく床板を蹴る音と共に、大地の体は宙を舞い、その手にした木刀を祖父の脳天目がけ振り下ろした!
が、その時!
「甘いわっ!!!」
大全は、ほんの少しだけ顔を上げると、
“ちょこん”
口にくわえた爪楊子の先っちょで、それを受け止めた!
すると!!
バッシーーーーーーーーン!
なんと、爪楊枝の先から目もくらむような赤い火花が発生したかと思うと、木刀は瞬時に粉々に飛び散ってしまったではないか!
さらにその光は、道場を焦がすような稲妻を発しながら大地の体を包み込み、
ズッドーーン!
そのまま、まるで瞬間移動でもさせるかのように、その体を吹っ飛ばした!!
「あんぎゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜………………!」
「見いたか! これぞ天昇龍剣奥義、“天昇閃光気”(てんしょうせんこうき)! お主のようなひよっこの相手なぞ、この口にくわえた爪楊枝で十分じゃあ! かっかっかあ!!」
大全は、勝ち誇ったように高笑いした。
この“天昇閃光気”なる術(わざ)! 実はこれは、瞬間的に体内エネルギーを一点に集中し、一気に爆発的な“気”を発する、天昇龍剣の“秘奥義”なのだ!
大全は、爪楊枝の先に“爆裂気”(ばくれつき)とも言うべき巨大エネルギーを集中させ、瞬間、その恐るべきエネルギーにより、木刀をブラシのごとく張り裂かせ、そのまま一気に大地を飲み込吹っ飛ばしたのだ!
綴 目 大 全
(とじめ たいぜん)
綴 目 大 地
(とじめ だいち)