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無謀なチャレンジその2
心得へ
無謀なチャレンジその2 それは、地方在住でイラストレーターになろうとすること!
ということで、以下、私の体験とそれからくる独断なんぞを書いてみたいと思います。

 実はイラストレーターになるのは簡単! 「イラストレーター」と名刺を刷って配れば、今日から誰でもイラストレーターになれるのじゃ!
なぜなら、この資格社会の中においてイラストレーターって、資格や学歴が一切必要ない職業だったんですねえ。(それで仕事が来るか来ないかは別だけど)

 んが! しかし、名刺を配ろうにも地方には出版社が無いのだ!
(え? 漫画家になる時の話と一緒だって? いえいえ、ここからが違います)
ということで、地方在住でイラストレーターになる方法は、
 1、都会に出るだよ。
 2、印刷会社や企画会社を回る。
 3、金にならない商売なのでやらない。
ということになります。
そう、出版社はないけど(タウン誌や新聞社系はあります)、印刷会社や企画会社があるのです。そして大きな特典(?)として、この商売はもれなく貧乏と仲良しになれます。実際、出版社のない地域ではこれ一本で食ってる人は少なく、勤めているとかバイトとかデザイナー兼業の人も多いのです。

 私は農業をやった後、父の怪我の回復と共に、いとこのやってる店でPop屋さんになったのでした。
そこでの私はある意味目標を失った凧。休みにはバイクにまたがり、朝から夜までひたすら走り続けるという半逃避的生活を送っていました。(いやあ、でも楽しかった!)
 でも、そんな状態を一生続けるわけにもいかず、行く場所もないくらい走り回ってそろそろバイクも飽きた頃、その1にも書いたように、自分が一番世の中に貢献できる(この感覚が漫画を描いている時には持てなかった)、つまり自分を一番生かせる仕事は何かと考えたのでした。
特技は漫画、漫画は絵とストーリー……ストーりーはとりあえず生かせる場がない、ということで、絵、つまりイラストレーターになろうという結論に達したのです。

 しかしそのためには、自分にはデザインや印刷の知識が不足していました。実践も。
ということで、とりあえずデザインを知ろうと、とある個人デザイン事務所に丁稚奉公し、2年間の切った貼った(丁度MacDTPが始まる頃で、私は手作業の貴重な経験をしました)の後、イラストレーターとして「名刺」を作ったのでした。
そう、名刺を配れば、ほんとに「イラストレーター」なんですね。仕事来る来ないは別として、一応誰でもなれる職業なのだ。

 実は、私は熊本でイラストレーターという職業が成り立つかどうかも知らず、とりあえず始めたんでした。でも、ただ名刺を配っても作品が無いと分かってもらえないので、自らパンフレットを作り千数百部ほど印刷してDMで配ってみました。(30万円くらいかかったかな……)
でも、その効果はあって、(DM効率は悪いものの)地元熊本や福岡からポツポツと注文が来るようになったのです。
 しかしこの時、私は過去の漫画は全て封印しました。というのも、全国誌の漫画と地方の漫画やイラストでは、まったく逆の要素が必要になるのです。

 漫画はなにより個性、独創力が重要ですが、地方のイラストではそれが邪魔になってくるのです。私のようなイラストは通常、印刷会社や企画会社を通して印刷物に使われますが、印刷物の紙面との調和を考えた場合、ある意味セミプロ的な絵、個性の弱い絵にする必要があるのです。
そこでは専門性よりも、なんでも描ける能力が重要となってきます。(実はここに落とし穴があるのですが)
 私も一応いろんな方のアドバイスを受け、何でも描けるという触れ込みで始めたのですが、やはり得手不得手、向き不向きはあるもので、やがて漫画や漫画的なイラストがメインになりました。

 私はあちこち営業して回りましたが、ある日、私はとある会社へ営業に行き、そこの偉い人とデザイナーさんとで話をしたのでした。この時、私のそれまでの地元向け漫画や漫画的なもの中心の作品集を見て、応対してくれた二人はこう言いました。
「このままではダメだ。もっともっと絵の幅を広げた方がいい、それがあなたのためだ。」と。
そして、そのデザイナーさん自らが制作した印刷物、そしてそこに自らが描いた多様なイラスト群を自慢そうに見せてくれたのです。
 そう、それは確かに私よりはるかに見事に、いろいろな絵柄に描き分けられていたのでした。それは、カット集でも出せるほどの「うまい」絵だったのです。
 しかし、彼はその後、こんなふうに言ったのです。
「こんなにうまく描いても、しょせんは印刷物のおまけ程度しか料金は取れないのだよ。」と。
つまり、どんなに上手く描いても、イラストではお金が取れないというのです!

 しかし、ちょっと待て? 私は考えました。そこには明らかに矛盾があったのです。
<絵の幅を広げたほうがいい=でもお金にならない。>???
そう、いろんな絵が描けるのと料金の多少には、相関関係どころか反比例関係が存在する場合もあるのです。つまり、彼らの言うようにいろんな絵が器用に描けても、「その絵に価値が無い」というのでは、デザイナーが自分の付加価値を高める場合ならともかく、イラストレーターとしては商売が成り立たないじゃ、あーりませんか!? 事実、そう言う絵はカット集のCDなどを最大限利用すれば済むことで、それらとの競合を避け地方でイラストレーターになるためには、当然のことながら、やはり付加価値としての他人にない部分、「個性」が必要だったのです。

 ただし、前にも書きましたが、実は、全国誌に載る絵と地方で印刷物に使われる絵では180度の違いがあります。それは、「個性をとことん追求した絵」と「個性を磨かなかった絵」の違いと言えばいいでしょうか。ある意味アマチュア的な絵が、普通の印刷物にはバランスがとれるのです。個性的訴求力が、邪魔になるのですね。(どうしても違和感が出ます)
 そして実際、そういうアマチュア的絵が地方では「メイン」なので、常にそういうもので印刷物のバランスを取ってるデザイナーさんにとっても、個性の強い絵はバランスがとれなくなるので敬遠の対象でもあります。
そのへんの兼ね合いが難しいのですが、しかし長い目で見れば、やはりわざわざイラストレーターに仕事を頼むと言うことは、そこにその人だけの価値(値段と内容)を認めるわけで、個性無くしては成り立ちません。

おっと、ここでも本題に戻そう。地方在住でイラストレーターになる方法、それは、
 1、絵の勉強(あたりまえ? でも、死ぬほどデッサンとかやっといたほうがいいです)
 2、名刺を作る
 3、名刺を配る(おいおい)
 4、「これなら自分が地域一番」という個性を磨き、自分勝手な自信(妄想)を持つ
 5、いろんな人に会い注文を受ける商売なので、いろんな話題に合わせられる浅広知識が必要。
   (新聞を毎日読みましょう)
 6、いろんな注文を受けるので、浅広知識プラス臨機応変に逆提案出来るだけの機転を磨く。
   (経験と歳が味方してくれます)
 7、どんなモノに使うどんな絵でどんな場所に使うか、色、サイズ、納期、完成形その他、疑問はとことん聞き、打ち合わせはしっかり。

くらいかな?
おっと、もう一つ。私は応募したことはありませんが、何かの「賞」をとるという方法もあります。地方では、身近なものや出る杭をなかなか評価できない(あるいはけなす)反面、逆に何かの権威をありがたがるという心理がありますので、自分のステータスを上げるのに「賞」は手っ取り早い方法で、それだけでかなり違うと思います。
もっとも、前に述べたように、地方と全国ではメジャーとなる要素が違う部分がありますし、「一般からの評価がフィードバックされて腕を競う」という競争原理が働きにくいので、地方で賞をとりトップになることが、かならずしも全国レベルと言うわけではない場合もあるでしょう。(だからこそ、賞は有効です。)

 私自身は、自分より絵の上手い人はいっぱいいるけど、「自分的な絵なら誰にも負けない」(当たり前)という変な妄想的自信だけを頼りに、いろんな不安をうち消しながら自分を信じて仕事をやってきました。
 私が20歳の時、漫画家になる決心をした時から持ち続けている座右の銘は「志あるところ道あり」です。多分これからも、そこに道があるのかないのか判らない藪の中を、一生懸命(でもボチボチと)歩いていくことでしょう。