─西暦2105年、小惑星帯軌道上─
「船長、もう我慢できません、いったい我々のミッションの目的は何なんですか?!」
「そうですよ、火星を出発してはや半年、もうあと数時間で目的地に着こうってのに、いい加減本当の目的を教えてくれてもいいんじゃないですか?」
「ほんと理不尽だわ! なぜ惑星連合軍の超エリートパイロットである私たちが、こんな無意味な旅を続けなければならなかったんですか?!」
クルーたちは、今や反乱寸前の状態に陥っていた。
無理もない、彼ら惑星連合軍のトップ3パイロットたちは、月面本部から1年の月日をかけて火星へ赴任したその日、惑星連合大統領の極秘命令により、さらに「火星圏外探査派遣」の特別指令を受けていたのだ。
「そ、それは私にも分からんのだ。ただ、『半年前に起きた小惑星帯(アステロイド)・キュベレー系にある小惑星爆発の原因を探査せよ』と言う命令しか受けておらのだよ。」
「本当に、それだけなんですか? 他には何も受けてないんですか、船長?」
「もし、本当にアステロイド探査だけが目的だとしたら、探査衛星を送り込めばすむことで、我々人間を派遣するなんてこと、必要ないじゃないですか?」
「船長〜・・? ほんとうに、他には何も????」
女性クルーは、こめかみをぴくぴくさせながら船長に顔を近づけると、腰のスタンガンにゆっくりと手をかけた。
「う・・わ、分かった、もうここまで来たんだ、本当のことを言おう。実は・・・もう一つ、重要な『命令』を受けていたんだ。」
船長は、彼女の気迫に観念した。
「やっぱり、それは何!」
「そ、それは・・・」
「それは!?」
3人の顔が船長に迫る。
「そ、それは・・・・・『生存者を救助せよ』・・・だ!」
「な、何ですって!?」
クルーたちは、一斉に顔を見合わせた。
無理もない。そんなバカな命令、あるはずが無いのだ!
「な、何を言ってるんですかあんた? 地球から月や火星への移住が本格化したと言っても、まだ火星軌道外に人類が出た事なんて、一度も無いじゃないですか!?」
「そ、そうよ! ましてや、危険な小惑星帯(アステロイド)へなんて!?」
「だ、だから言わなかったのだよ、その事は! 言えば君たちは、不信感をあらわにするだろうからな。」
「当たり前じゃないですか! それを最初に聞いていたなら、俺たち誰も、こんな馬鹿げたミッションには参加なんかしてませんよ!」
「そ、そう言うな、それは私も君たちと同じなんだ。同じ思いなんだが・・・・・、私は・・家に帰れば妻と3人の子供、それに年老いた両親がいるし、もし命令拒否して首にでもなったらと思うと・・・・そう簡単にイヤだと言うワケにもいかんのだ。分かってくれよ〜〜〜。」
今にも泣き出しそうな船長の様子に、クルーたちは一気に肩の力が抜けてしまった。
「家庭大事・・・ってコトですか・・・・ふ〜、もう、いいっすよ〜。なんかばかばかしくなってきた・・・。まあ・・・、いずれにしても、あと数時間で目的の『場所』が見えるはずだし、それで何もかも解決するでしょう。」
「そうそう、こうなったらもう『爆発の痕』ってのをチャチャッと観測して、とっとと帰路につきましょうよ。」
「んだな〜・・・」
一行は、だらけた様子でそれぞれの席へとつくと、星々が輝く窓の外に目を凝らした。
予定通り数時間の後、
「座標補足!」
女性クルーが、手元のレバーを動かし船外の高性能カメラを操作すると、座標指定された小惑星が、画像スクリーンにもなっている中央ウインドウへと大きく映し出された。
「これは、えーと、反射率0.19・・。ふん、ごく一般的なSタイプの小惑星らしいわね。直径は300〜400メートルってとこかしら・・あ〜あ、わざわざ半年もかけて、こんなもののために・・・・・ん?・・変ね、ただの小惑星にしては、表面が非常になめらかだわ? しかも、こんなに小さいのにきれいな球体をしてる・・・いえ、右下が一部引っ込んで、ちがう、えぐれてるんだわ・・・ひょっとして、あれが爆発の痕???・・・待って・・あの中に何か・・・ええっ? あ、あれは・・・・なにーー!!!????」
つづく